切れた通信に、ピーツは舌打ちをかます。
「しゃーないわ、待つしかないわな」
扉の片隅に膝を立てて座り込み。咎人達九人を待つことにした。
●リラの場合
「私も冒険者です。どんなトラップがあっても私は驚かない」
不安になりつつも、いつもながらの全力投球、全速力でリラ(ma0970)は通路を駆け抜けた。
するといつの間にか通路はガラス張りに、その先には番犬が一匹。グルルと唸る。彼女なんかきっと、一口でパクン、だ。
「ふぇぇ……」
だがその先には扉。恐らく出口だろう。リラはピン、と来る。神話でも、物語でも良くありがちな怪物を歌で眠らせる、と言うやつだ。
歌い手であるリラの本領発揮と言った所。
「ラララーラー」
通路を響く透き通ったリラの歌声に、番犬は直ぐにとろんと瞼を重くする。
(よし、上手くいってる)
カランコロン
「ラーラー………ルギャァァア゛」
翼竜の断末魔とすら思える甲高い音に、番犬は飛び起き更に恐れキャインと嘶いて逃げる。
結果的には成功――
ピシッ
「え?」
なんて甘くはない。高音域はガラスの通路にヒビを走らせ……そして。
バッリィン
「え、え? なんでぇぇーー!」
床のガラスが割れ、そのまま虚空へとリラは落下していったのであった。
●京四郎の場合
高柳 京四郎(ma0078)の目の前には、テーブル。置かれるはティーポットや紅茶缶。そして、壁に文字が刻まれている。
1:紅茶が美味しく淹れられるまで出られない
2:作った紅茶は美味しく淹れても淹れられなくても全部飲む事
3:美味しく淹れられず次を作る場合は全部飲んでからでないと必ず失敗
「紅茶を……か。道具はあるし喫茶店でいつもやってる通りにすれば」
だが、回数を繰り返せるよう出来るだけ少量で作ることに彼は決めた。
一回目、何故か濃い。
「……何で紅茶が珈琲に……?」
二回目、見た目は紅茶だが。
「色と香りが紅茶なのに味がジュース……これはなんかきついな!?」
三回目、夜空を閉じ込めて。
「……これ、飲んでも大丈夫なんだろうか……うごめいてるんだが……」
気分、宇宙猫になりながら、紅茶を飲みきる。そして、残りは一杯分の茶葉を残すのみ。京四郎も色々と限界を迎えつついた。主に腹が。
そして、四回目。ポットもカップもしっかり温め、時間も計り、いよいよ、カップに紅茶を注ぐ。
カランコロン
さて、皆様は紅茶の最後の一滴がゴールデンドロップと言われ、美味と扱われていることを知っているだろうか。
サラサラ
尚、今しがた京四郎のカップにこんもりと積もった砂金ではないので、悪しからず。
「……店に帰ったら一から紅茶の淹れ方学び直そう、うん……」
両手を組み、椅子に座りながら彼は項垂れるしかなかった……
●ケイウスの場合
「トラップに不安もあるけど、迷宮探検なんてワクワクしちゃうな!」
期待を胸にケイウス(ma0700)がワープしたのは、何とも狭い部屋。目の前には沢山の宝箱。そして、鍵穴はあれど鍵はない扉。
これはもう、宝箱を開けて鍵を手に入れろ、と言っているようなものだ。
「宝箱があれば開けたくなるのは、もう本能だと思うんだよ」
誰にでも言うでなく、鼻唄混じりで宝箱の一つに手を掛けて思案。
カランコロン
なんて、面倒臭いので片っ端から、宝箱を勢い良く開けるぞ、あっちもバーン! こっちもバババーン!
中身が空だろうが、気にしない。
カチッ
「……今、カチって変な音が……」
ケイウスが見上げる天井。轟音と共にやってくる水流。
ドドドドドッ
「……と、トラップも迷宮の醍醐味だよね!」
滝汗たらしながら騒いでる間にも、水は部屋に貯まっていく。焦っているのか、翼で飛ぶことすら頭の外。
「今すぐ逃げないと! 俺、泳げない! って言っても逃げ場なんてないんだけどうわーっ!」
水中に沈みながら意識が暗転。
●シェパーズの場合
「状況は解りました!」
ワープ後の部屋を見回しシェパーズ(ma0308)はポン、と手のひらを拳で叩く。
開かないドア。これ見よがしに置かれた調理器具とオーブン。
「……パイを焼けという事ですね!」
据え膳喰わぬはなんとやら、先ずは如何なるパイを作ろうか……
カランコロン×4
「ここはシンプルに……わが魂の発露シェパーズパイの応用で!」
次に山のようにある食材から目利きを!
食材はあるのに、パイに必要な材料がない。仕方ないので、マッシュポテトは、マシュマロ。オニオンはノビル。
「パプリカじゃなくて肥大化したハバネロですって!?」
目を押さえて悶えるシェパーズだが、行程は続く。そのまま調理へ
おーっと、躓いて手元にある包丁が空を舞い、ブツリと嫌な音を立てて紐を切ってルーブ・ゴールドバーグ・マシンと化して、魚の雪崩が……
「ちょ! おま! なんですと!?」
そして、クライマックスの焼き上げ。
完成のチーンと言う音が聴こえるも、既にプスプス黒煙を上げ、恐る恐るミトンを手に、シェパーズはオーブンを開ける。
ブワァァォ!!!
「いわ~~~~く~~~~~!!!!」
見事! 二時間ドラマが始まってもおかしくはないバックドラフトが彼女をぶっ飛ばしたのであった。
因みにパイは炭化しました。
●アティーヤの場合
左に首をバッ、右に首をバッ、何時の間にやら自分は見覚えない部屋にワープしたアティーヤ(ma0735)は一言。
「ちょっと待てい!!ただのちっこいダンジョンじゃないんかい!!」
何時の間にやら、爆弾と言うアクセサリーが体を彩る。人知れず暴れる。
「あたしは今めっちゃ後悔してるぞこの野郎」
いつまでも、状況を呪っている場ではないのでいい加減、爆弾の解除に入ろうと頭を切り替える。幸い、これどうぞとばかりあるハサミ。
コードは青と赤わかりやすく二本。アティーヤが選んだのは……赤。
「えーいっ!」
カランコロン
バチン
ドッカァァアン!!
「ぎゃーっ!! やっぱダメじゃん!! 誰だこれ作った奴!! 最低!! ネクラ!! エゲリア!! バーカ!!」
若干ディスってはいけないものをディスった気もするが……
兎に角アティーヤはヒュールルルと爆風に飛ばされ、そのままピーツ達の待つ扉前へ不時着を果たしたのだった。
●
うつ伏せになって足をバタバタさせ愚痴るアティーヤ。
「つーかあたし、元は精霊兼魔人だぞこの野郎……」
「ウチかてエルフや」
顔を上げると、二人の同行者ウェンディ・フローレンス(ma0536)とロザーリア・アレッサンドリ(ma0458)を発見。
「ねー、アティーヤ、どうだった?」
「ろざりんや……ここわけわかんないんだけど……」
超疲れた早く帰りたいアティーヤだが、それ以上に気になるのは、色々な意味で真っ白なウェンディ。
「……かちなし……じしょう……」
「ウェンディはなーにがあったんだか」
その真相は、アティーヤがワープから戻る少し前の出来事。
●ウェンディの場合
彼女がワープから訪れたのは真っ暗な部屋。高級なテーブルとイスが一脚ずつ。
「ロザリーとアティーヤちゃんは大丈夫かしら」
イスに近付くと、次の瞬間スポットライトがパッと点いた。
スーツ姿のマネキンが動いて、課題を説明する。また別のマネキンが、ウェンディの為にイスを引く。
彼女はイスに腰掛けながら、司会らしきマネキンの説明を聴く。どうやら、利き肉をするらしい。目隠しをしながら。
「一つは超高級神戸牛!」
「……はい?お肉??」
「もう一つは、ラクダの肉」
「牛ですらありませんですの!?」
説明もソコソコに、ウェンディの口にステーキ肉が運ばれる。目隠しもされているのでされるがまま。味わうように、何度も噛み締める。
一つ目、二つ目。広がる肉の味を咥内に行き渡らせ、小さな欠片を嚥下する。
ウェンディの出した答えは……
「柔らかい舌ざわり、鼻に抜ける香り、溢れる肉汁」
最初に食べた肉に手を広げる。
カランコロン
「間違いありません。こちらが神戸牛ですわ!!」
「残念!」
不正解を示すブザーがマネキンにより無慈悲に鳴らされる。
「んなっ、ハズレ!?」
マネキンは罵詈雑言を片っ端から暴言をぶつける。
「は、八流お嬢さま!? 写す価値なし!? なんですの、それはっ!!」
思わず立ち上がったウェンディに向けられるバズーカ。
「これのどこがお嬢さまなんですかね。バカ舌の自称お嬢さまはお帰り下さい」
バシュューーッ!!
スモークが噴出。ウェンディの顔に真っ白な化粧をする。白煙は止まることなく彼女は煙に巻かれていくのであった……
「……なんなんですの、ここは」
●ロザーリアの場合
「ダンジョンアタックか。大元の故郷じゃ冒険者だったんだよ」
過去を懐かしむロザーリアだったが、ワープに至れば流石に驚愕する。
「うっそ、テレポーター!? 無茶苦茶レベル高い罠じゃん」
なお、いしのなかにはいない。
長い通路、その先には◯と×の書いてあるパネル。恐らく、クイズでも出されて正解と思う方に走って飛び込め、と言った具合だろう。長年の経験からそれをロザーリアは察した。
エンブリオへ行きたいかー!!
どこから兎も角、オオーと歓声が聴こえる。
(これ作ったの、絶対おっさんでしょ……)
内心呆れ果てるロザーリアだが、時間は待っちゃくれない。問題文が音声で流れる。
『エンブリオの浮き島にいるクッキーネコの名前はエルデ、である。◯か、×か?』
(知らないよ! こうなったら、運だ、運)
銀の瞳が狙いを定める。芝居じみたスターティングポーズを取ってから、一気に加速し走り出す。目指すは……
「◯だ!」
カランコロン
ロザーリアに迷いはなかった、ただまっすぐ突き進む。そう例え、目の前に『バナナの皮』があったとしても。
「え?」
皮をズルリン、と踏んづけてしまえば、180度方向転換。そのままブレーキはかからず、彼女と言う鉄砲玉は×のパネルを突き破った。
ボッッ チャン
「~~~~!!」
頭から泥へ落っこちて、ロザーリアは逆立ち体勢のまま足を空にバタバタ。
(全体的に昭和じゃん!!)
そのままズブズブと彼女は泥に飲まれて行くのであった……
●雫の場合
「この距離で聞こえなくなるのは妙ですね……」
ピーツの声の距離に不信感を抱く、不破 雫(ma0276)。目の前にはシェパーズの時と似たような機材。
「ふむ……決められた食材を使用して一品作れば良いと」
少し安心した。お菓子造りではない。何故か菓子は壊滅的なのだ、何故か。
作るのは鮭のテリーヌ。材料、作り方全てが万全だった……万全だったのに……
カランコロン
オーブンに入れた所で異変は起きた。オレンジの肌が膨れ上がり、オーブンの扉から漏れでる。
「ちょっと待って! 今回は普通の料理だった筈ですよ!?」
制止の声を雫は上げるも、テリーヌは彼女の二倍にもなり大口を開ける。
「兎に角、あれを如何にかして処理――」
そんな余裕は雫には与えられない。一瞬の隙見て、丸呑みにされてしまう。
そして、無情に、オーブンは完成のベルを鳴らしたのであった。
チーン
●エイリアスの場合
エイリアス(ma0037)はピーツを心配しつつも床に書かれた文字を読む。
『鈴鹿は野菜、其は人参。明美はバナナ。いち花はスイカ。ミミ子は果物。ちなみに林檎』
「何人に果物は行き渡ったか? ……謎々ですか???」
そのままの答えなら、スイカ、バナナ、林檎を渡された三人だろう。しかし、それは引っかけとエイリアスは笑う。
何故ならスイカは野菜だから、果物には入らない。
「答えは二人ですね」
カランコロン
……悪い子ですね
肩をビクッとはねあげるも頭上に光る金色がエイリアスにクリーンヒット。
よい音色が部屋に響き渡る。
「……また、間違えてしてしまいました……か。……わたしは……ッ」
更に降る降る金だらいの雨にエイリアスは埋もれていくのであった。
答えは三人。果物を渡されたのは、明美、ミミ子……そして、『ちなみ』の三人だからだ。
「……言葉は難しいですね」
●
こうして全員は無事に出口前に辿り着く。燭台に炎が灯れば、いとも簡単に扉は開いた。
「フロアクリア! さて、この先にはどんな迷宮があるのかな!」
「しゃーないわ、待つしかないわな」
扉の片隅に膝を立てて座り込み。咎人達九人を待つことにした。
●リラの場合
「私も冒険者です。どんなトラップがあっても私は驚かない」
不安になりつつも、いつもながらの全力投球、全速力でリラ(ma0970)は通路を駆け抜けた。
するといつの間にか通路はガラス張りに、その先には番犬が一匹。グルルと唸る。彼女なんかきっと、一口でパクン、だ。
「ふぇぇ……」
だがその先には扉。恐らく出口だろう。リラはピン、と来る。神話でも、物語でも良くありがちな怪物を歌で眠らせる、と言うやつだ。
歌い手であるリラの本領発揮と言った所。
「ラララーラー」
通路を響く透き通ったリラの歌声に、番犬は直ぐにとろんと瞼を重くする。
(よし、上手くいってる)
カランコロン
「ラーラー………ルギャァァア゛」
翼竜の断末魔とすら思える甲高い音に、番犬は飛び起き更に恐れキャインと嘶いて逃げる。
結果的には成功――
ピシッ
「え?」
なんて甘くはない。高音域はガラスの通路にヒビを走らせ……そして。
バッリィン
「え、え? なんでぇぇーー!」
床のガラスが割れ、そのまま虚空へとリラは落下していったのであった。
●京四郎の場合
高柳 京四郎(ma0078)の目の前には、テーブル。置かれるはティーポットや紅茶缶。そして、壁に文字が刻まれている。
1:紅茶が美味しく淹れられるまで出られない
2:作った紅茶は美味しく淹れても淹れられなくても全部飲む事
3:美味しく淹れられず次を作る場合は全部飲んでからでないと必ず失敗
「紅茶を……か。道具はあるし喫茶店でいつもやってる通りにすれば」
だが、回数を繰り返せるよう出来るだけ少量で作ることに彼は決めた。
一回目、何故か濃い。
「……何で紅茶が珈琲に……?」
二回目、見た目は紅茶だが。
「色と香りが紅茶なのに味がジュース……これはなんかきついな!?」
三回目、夜空を閉じ込めて。
「……これ、飲んでも大丈夫なんだろうか……うごめいてるんだが……」
気分、宇宙猫になりながら、紅茶を飲みきる。そして、残りは一杯分の茶葉を残すのみ。京四郎も色々と限界を迎えつついた。主に腹が。
そして、四回目。ポットもカップもしっかり温め、時間も計り、いよいよ、カップに紅茶を注ぐ。
カランコロン
さて、皆様は紅茶の最後の一滴がゴールデンドロップと言われ、美味と扱われていることを知っているだろうか。
サラサラ
尚、今しがた京四郎のカップにこんもりと積もった砂金ではないので、悪しからず。
「……店に帰ったら一から紅茶の淹れ方学び直そう、うん……」
両手を組み、椅子に座りながら彼は項垂れるしかなかった……
●ケイウスの場合
「トラップに不安もあるけど、迷宮探検なんてワクワクしちゃうな!」
期待を胸にケイウス(ma0700)がワープしたのは、何とも狭い部屋。目の前には沢山の宝箱。そして、鍵穴はあれど鍵はない扉。
これはもう、宝箱を開けて鍵を手に入れろ、と言っているようなものだ。
「宝箱があれば開けたくなるのは、もう本能だと思うんだよ」
誰にでも言うでなく、鼻唄混じりで宝箱の一つに手を掛けて思案。
カランコロン
なんて、面倒臭いので片っ端から、宝箱を勢い良く開けるぞ、あっちもバーン! こっちもバババーン!
中身が空だろうが、気にしない。
カチッ
「……今、カチって変な音が……」
ケイウスが見上げる天井。轟音と共にやってくる水流。
ドドドドドッ
「……と、トラップも迷宮の醍醐味だよね!」
滝汗たらしながら騒いでる間にも、水は部屋に貯まっていく。焦っているのか、翼で飛ぶことすら頭の外。
「今すぐ逃げないと! 俺、泳げない! って言っても逃げ場なんてないんだけどうわーっ!」
水中に沈みながら意識が暗転。
●シェパーズの場合
「状況は解りました!」
ワープ後の部屋を見回しシェパーズ(ma0308)はポン、と手のひらを拳で叩く。
開かないドア。これ見よがしに置かれた調理器具とオーブン。
「……パイを焼けという事ですね!」
据え膳喰わぬはなんとやら、先ずは如何なるパイを作ろうか……
カランコロン×4
「ここはシンプルに……わが魂の発露シェパーズパイの応用で!」
次に山のようにある食材から目利きを!
食材はあるのに、パイに必要な材料がない。仕方ないので、マッシュポテトは、マシュマロ。オニオンはノビル。
「パプリカじゃなくて肥大化したハバネロですって!?」
目を押さえて悶えるシェパーズだが、行程は続く。そのまま調理へ
おーっと、躓いて手元にある包丁が空を舞い、ブツリと嫌な音を立てて紐を切ってルーブ・ゴールドバーグ・マシンと化して、魚の雪崩が……
「ちょ! おま! なんですと!?」
そして、クライマックスの焼き上げ。
完成のチーンと言う音が聴こえるも、既にプスプス黒煙を上げ、恐る恐るミトンを手に、シェパーズはオーブンを開ける。
ブワァァォ!!!
「いわ~~~~く~~~~~!!!!」
見事! 二時間ドラマが始まってもおかしくはないバックドラフトが彼女をぶっ飛ばしたのであった。
因みにパイは炭化しました。
●アティーヤの場合
左に首をバッ、右に首をバッ、何時の間にやら自分は見覚えない部屋にワープしたアティーヤ(ma0735)は一言。
「ちょっと待てい!!ただのちっこいダンジョンじゃないんかい!!」
何時の間にやら、爆弾と言うアクセサリーが体を彩る。人知れず暴れる。
「あたしは今めっちゃ後悔してるぞこの野郎」
いつまでも、状況を呪っている場ではないのでいい加減、爆弾の解除に入ろうと頭を切り替える。幸い、これどうぞとばかりあるハサミ。
コードは青と赤わかりやすく二本。アティーヤが選んだのは……赤。
「えーいっ!」
カランコロン
バチン
ドッカァァアン!!
「ぎゃーっ!! やっぱダメじゃん!! 誰だこれ作った奴!! 最低!! ネクラ!! エゲリア!! バーカ!!」
若干ディスってはいけないものをディスった気もするが……
兎に角アティーヤはヒュールルルと爆風に飛ばされ、そのままピーツ達の待つ扉前へ不時着を果たしたのだった。
●
うつ伏せになって足をバタバタさせ愚痴るアティーヤ。
「つーかあたし、元は精霊兼魔人だぞこの野郎……」
「ウチかてエルフや」
顔を上げると、二人の同行者ウェンディ・フローレンス(ma0536)とロザーリア・アレッサンドリ(ma0458)を発見。
「ねー、アティーヤ、どうだった?」
「ろざりんや……ここわけわかんないんだけど……」
超疲れた早く帰りたいアティーヤだが、それ以上に気になるのは、色々な意味で真っ白なウェンディ。
「……かちなし……じしょう……」
「ウェンディはなーにがあったんだか」
その真相は、アティーヤがワープから戻る少し前の出来事。
●ウェンディの場合
彼女がワープから訪れたのは真っ暗な部屋。高級なテーブルとイスが一脚ずつ。
「ロザリーとアティーヤちゃんは大丈夫かしら」
イスに近付くと、次の瞬間スポットライトがパッと点いた。
スーツ姿のマネキンが動いて、課題を説明する。また別のマネキンが、ウェンディの為にイスを引く。
彼女はイスに腰掛けながら、司会らしきマネキンの説明を聴く。どうやら、利き肉をするらしい。目隠しをしながら。
「一つは超高級神戸牛!」
「……はい?お肉??」
「もう一つは、ラクダの肉」
「牛ですらありませんですの!?」
説明もソコソコに、ウェンディの口にステーキ肉が運ばれる。目隠しもされているのでされるがまま。味わうように、何度も噛み締める。
一つ目、二つ目。広がる肉の味を咥内に行き渡らせ、小さな欠片を嚥下する。
ウェンディの出した答えは……
「柔らかい舌ざわり、鼻に抜ける香り、溢れる肉汁」
最初に食べた肉に手を広げる。
カランコロン
「間違いありません。こちらが神戸牛ですわ!!」
「残念!」
不正解を示すブザーがマネキンにより無慈悲に鳴らされる。
「んなっ、ハズレ!?」
マネキンは罵詈雑言を片っ端から暴言をぶつける。
「は、八流お嬢さま!? 写す価値なし!? なんですの、それはっ!!」
思わず立ち上がったウェンディに向けられるバズーカ。
「これのどこがお嬢さまなんですかね。バカ舌の自称お嬢さまはお帰り下さい」
バシュューーッ!!
スモークが噴出。ウェンディの顔に真っ白な化粧をする。白煙は止まることなく彼女は煙に巻かれていくのであった……
「……なんなんですの、ここは」
●ロザーリアの場合
「ダンジョンアタックか。大元の故郷じゃ冒険者だったんだよ」
過去を懐かしむロザーリアだったが、ワープに至れば流石に驚愕する。
「うっそ、テレポーター!? 無茶苦茶レベル高い罠じゃん」
なお、いしのなかにはいない。
長い通路、その先には◯と×の書いてあるパネル。恐らく、クイズでも出されて正解と思う方に走って飛び込め、と言った具合だろう。長年の経験からそれをロザーリアは察した。
エンブリオへ行きたいかー!!
どこから兎も角、オオーと歓声が聴こえる。
(これ作ったの、絶対おっさんでしょ……)
内心呆れ果てるロザーリアだが、時間は待っちゃくれない。問題文が音声で流れる。
『エンブリオの浮き島にいるクッキーネコの名前はエルデ、である。◯か、×か?』
(知らないよ! こうなったら、運だ、運)
銀の瞳が狙いを定める。芝居じみたスターティングポーズを取ってから、一気に加速し走り出す。目指すは……
「◯だ!」
カランコロン
ロザーリアに迷いはなかった、ただまっすぐ突き進む。そう例え、目の前に『バナナの皮』があったとしても。
「え?」
皮をズルリン、と踏んづけてしまえば、180度方向転換。そのままブレーキはかからず、彼女と言う鉄砲玉は×のパネルを突き破った。
ボッッ チャン
「~~~~!!」
頭から泥へ落っこちて、ロザーリアは逆立ち体勢のまま足を空にバタバタ。
(全体的に昭和じゃん!!)
そのままズブズブと彼女は泥に飲まれて行くのであった……
●雫の場合
「この距離で聞こえなくなるのは妙ですね……」
ピーツの声の距離に不信感を抱く、不破 雫(ma0276)。目の前にはシェパーズの時と似たような機材。
「ふむ……決められた食材を使用して一品作れば良いと」
少し安心した。お菓子造りではない。何故か菓子は壊滅的なのだ、何故か。
作るのは鮭のテリーヌ。材料、作り方全てが万全だった……万全だったのに……
カランコロン
オーブンに入れた所で異変は起きた。オレンジの肌が膨れ上がり、オーブンの扉から漏れでる。
「ちょっと待って! 今回は普通の料理だった筈ですよ!?」
制止の声を雫は上げるも、テリーヌは彼女の二倍にもなり大口を開ける。
「兎に角、あれを如何にかして処理――」
そんな余裕は雫には与えられない。一瞬の隙見て、丸呑みにされてしまう。
そして、無情に、オーブンは完成のベルを鳴らしたのであった。
チーン
●エイリアスの場合
エイリアス(ma0037)はピーツを心配しつつも床に書かれた文字を読む。
『鈴鹿は野菜、其は人参。明美はバナナ。いち花はスイカ。ミミ子は果物。ちなみに林檎』
「何人に果物は行き渡ったか? ……謎々ですか???」
そのままの答えなら、スイカ、バナナ、林檎を渡された三人だろう。しかし、それは引っかけとエイリアスは笑う。
何故ならスイカは野菜だから、果物には入らない。
「答えは二人ですね」
カランコロン
……悪い子ですね
肩をビクッとはねあげるも頭上に光る金色がエイリアスにクリーンヒット。
よい音色が部屋に響き渡る。
「……また、間違えてしてしまいました……か。……わたしは……ッ」
更に降る降る金だらいの雨にエイリアスは埋もれていくのであった。
答えは三人。果物を渡されたのは、明美、ミミ子……そして、『ちなみ』の三人だからだ。
「……言葉は難しいですね」
●
こうして全員は無事に出口前に辿り着く。燭台に炎が灯れば、いとも簡単に扉は開いた。
「フロアクリア! さて、この先にはどんな迷宮があるのかな!」





