プロメテウス
三田村 薫
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シナリオ形態
イベント
難易度
Normal
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
  • フキダシ
参加料金
100 SC
参加人数
1人~10人
優先抽選
50 SC
報酬
300 EXP
5,000 GOLD
5 FAVOR
相談期間
4日
抽選締切
2024/04/20 10:30
プレイング締切
2024/04/24 10:30
リプレイ完成予定
2024/05/15
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
霧像界アンマンド:飛行機の中
霧像界アンマンド:飛行機の中

麻生 遊夜

やれやれ、こればっかりはどうにもならんのだよな……。

 麻生 遊夜(ma0279)は自分で運転しない場合は重度の乗り物酔いを起こすタイプらしい。座席に就くや、アイマスクをしてシートに深く沈み込み、一体化したかのように動かなくなってしまった。

グリーンアイス

いえーい、時差ボケでーす。

 グリーンアイス(ma1255)も同じく乗った瞬間に寝てしまった。天獄界とアメリカにも時差があるならとっくに時差症候群になっていてもおかしくはない。

 紫明(ma1226)は飛行機の窓から外を眺めていた。

紫明

メカパジャモだのには跨って飛んだけど、飛行機には驚きだわ。

 霧像界アンマンドでは、ウェストタワーの印象が強く、扉を開ければ恐竜の森や鮫の海と自由自在な印象だった。
 けれど、物理的な長距離を飛行機で移動するという。

紫明

ウェストタワーは霧像界の一部ってメダルドの台詞を思い出すわ。

 イデアゲートの前でジョージと落ち合った際、彼は紫明の同行を意外には思わなかった。

ジョージ

やあ。霧像界ではよく一緒になるな。
よろしく。

紫明

根幹に直で関わっちゃいないんだけど、ちっとは関わったからね。
野次馬根性じゃないけど、関わったからには見届けたいと思って。

ジョージ

そうだな。俺も同じだ。

紫明

色々と激動が多過ぎて、死んでみるもんだわなんて思っちったわ。

 普段の異世界介入もそうだが、最近は特に情勢の変動が激しい。
 アルビオンの魔女による天獄界への侵攻、異世界からの応援、浦の氏族との再度の共闘、そして世界武装の話題。
 空港で飛行機の出発を待つ間も、紫明は霧像界と天獄界の関係について思いを馳せていた。

紫明

この世界も今の天獄騒乱に巻き込まれてる一部なのよね。
ウェストタワーは結構楽しませて貰ってたクチだけど。
事情も知らずに楽しんでた事を思うと、まさに知らぬが仏だわね。

 言ってから、肩を竦め、

紫明

鬼の私が言っちゃ、洒落にもなんないけど。

アナウンス

間もなくギリシャ行き航空便の搭乗を開始します。

紫明

じゃ、行きましょうか。

 世界の根幹を握る意志の元へ。

 
 

白花 琥珀

世界も人間も今の状態を受け入れてるんですね……ある意味健全なのかもしれません。

 白花 琥珀(ma0119)は座席で呟いた。

白花 琥珀

スイートハートは絶対許せないですが。

 霧像界介入中に親しくなった簒奪者・ピコ(mz0142)がボロボロになった様に喜んだり、あまつさえ頭をぶっ潰したりした悪魔のことを琥珀は許せない。自分勝手に他人を傷付ける奴は、琥珀にとっては問答無用で敵である。

川澄 静

霧像界でアメリカの外に出るのは初めてですね。楽しみですっ。

 琥珀と川澄 静(ma0164)は依頼でもよく調査員で出撃する。リダやクルハ、ジョージも交えて調査員トークに花を咲かせていた。

川澄 静

コハもよく使っていますが、私も調査員は結構、使っていますね。
忍者みたいでよいと思います。クルハは調査員、使えるのですか?

クルハ

うん。ロール開発のテストには参加したから私も使えるよ。
戦闘が多いからあんまり出る機会はないけど。空間歩法のテストは面白かったな。

白花 琥珀

調査員便利ですよねー。

 戦艦の底をぶち抜き、死の結界をスルーしてゲルダを救出した実績がある。

ジョージ

皆、調査員で大活躍だよな!
俺もあやかりたいよ。

白花 琥珀

戦艦に穴は静姉様のアイデアなので……。

 アイデアを融通し合えるのは仲の良さだろう。静は調査員の運用もそうだが、戦闘能力が制限されてなお高い水準を誇る各種ステータスも強みだ。

白花 琥珀

非戦闘依頼とか調査系の依頼で大活躍ですよね。でも、聖水生成の使い道がなかなか無くて……。

 5リットルくらいの水を掌からジャバジャバ出せるスキルだ。

白花 琥珀

作ってる武器を敵に渡さない依頼で、打ってる途中の刀に水をぶっかけたら駄目に出来るのでは? と思ったのですが、静姉様に物体破壊で済みますよと言われてしまいました……。

ジョージ

聖水生成か……放火された時の初期消火とか……?

 物騒な発想をするジョージである。

川澄 静

確かに聖水生成は使い道が限られますね。私は看護で使いましたよ。

ジョージ

ああ~それは確かにきれいな水がいる局面だな。

 目の付け所が違う。

ジョージ

リダも調査員と言えば挙がる名前だよな。
この前も一緒に研修行って頼らせてもらったし。

 調査員用の鞄を武装教会で新調したり、それこそ異世界アンテナをへし折ったりと、リダ・クルツ(ma1076)も調査員に対するモチベーションが高い咎人の一人だ。アタッシェケースは座席上の荷物入れにしまってある。

リダ・クルツ

研修はトークンにびっくりしたりCT装置動かしたりで盛りだくさんだったな。

 調査員トークでひとしきり盛り上がり、一旦それぞれの時間に戻ると、今度は安定した飛行に落ち着いた遊夜がジョージに声を掛ける。

麻生 遊夜

そういや最近はどんな感じだ? ハマるロールや武装はあったかね?

ジョージ

天空旗士かなぁ。騎乗はやったことはないんだけど、咎人はイデアの力で最低限乗りこなせるから良いよな。
前はバイクで移動してたから。
ほら、馬に乗るとマザーに怒られるから……。

 そういえば、初対面の時に人類が動物を飼育するのは禁じられていたと言っていたか。

麻生 遊夜

ああ、そういえば言ってたな。じゃあ今はパジャモと空中散歩かね?

ジョージ

うん! パジャモは賢くて勇敢で良い動物だな。

麻生 遊夜

世界武装も気になるよなー、俺にゃ手が届かんのだが。

ジョージ

俺も無理かな。
できることを頑張ろう。

麻生 遊夜

しかし霧像界の世界武装ってのはどんな感じになるかね。
特異点は嵐の像だったが、この世界の大精霊的なものは隠居状態なんだろう?

ジョージ

あれも世界法則の一部とするならば、この世界の武装も何か自然的なものなのかな。ハリケーンスピンブレイド……?

 他の世界の、世界法則と人類の関係が悪いと言うわけではなく、遊夜は霧像界の関係がほどよいのではないかと感じていた。

麻生 遊夜

一長一短な話だが、頼れる先があるのは良い事だが頼りすぎる傾向になるし……この位の距離感が良い気がする。
甘えたり甘やかしたりしたい時はあるだろうけどなー。

 その脳裏にあるのは、相方の少女のことであるのだろうか。

 
 
 ウェンディ・フローレンス(ma0536)は、クルハとのおしゃべりに興じていた。座席は隣を確保している。

ウェンディ・フローレンス

アメリカ・ギリシャ間のフライトは大体9から10時間だとか。
たっぷりお話しできますわ!! それともお眠りに??

 クルハが起きているならおしゃべりできるし、寝るなら寝顔を見る気満々のウェンディである。

クルハ

ウェンディは霧像界来たことあるんだっけ?

ウェンディ・フローレンス

確かウィージャボードを壊した時とか、ええと、雪山とか……。

クルハ

雪山!?
ああ、ウェストタワーの異変部屋でってこと……?

ウェンディ・フローレンス

……ん? 雪山?? いつのことでしたっけ??

 夢の中で、行ったような。
 なお、ウェンディの故郷にもギリシャは存在していたらしい。話を聞いた際に、

ウェンディ・フローレンス

まあ、ギリシャ。この世界にもあるのね。

 と懐かしさを見せていた。

ウェンディ・フローレンス

クルハちゃんてば、色々な世界で世界武装を集めているのね。

クルハ

うん。今度は霧像界のギリシャに行くんだけどウェンディもどうかな?

ウェンディ・フローレンス

もちろん、お手伝いしますわ!

 と勢い込んでついてきたら修学旅行だったと言うわけである。

ウェンディ・フローレンス

毎回こんな感じだといいのですけど。

 

天魔

何時もは自分で飛んでるから新鮮でいいっす! 機内食うめーっす!

 天魔(ma0247)は空の旅を満喫していた。機内食を平らげると、窓から外を見る。どこまでも青い空。

天魔

いい景色っす。いつかピコちゃんに再会できたときにいい土産話ができたっす。
その為にも星神器、じゃない世界武装の元を貰って、世界武装を作って世界を続けていかないといけないっす!

 いつか、鳥の翼を持つような自由を手にしたら、と彼女は天魔の特徴になぞらえて再会を約束した。それが事実上実現不可であると厳密な彼女には解っていただろうが、それでも天魔にまた会いましょうと琥珀に伝言を頼んだのだ。

天魔

それが君の正義を否定し、君を殺した私達の責務だからな、ピコ嬢。

 それなら、いつか会うときのために滅びは回避しないといけない。
 それはそうとして、天魔には気になっていることがあった。ジョージに尋ねる。

天魔

……ところで飛行機代っていくらかね?

ジョージ

$(ジャカチーン)

天魔

……結構あるな。返すのが大変だ。

ジョージ

咎人は悪魔を倒せるのが売りだから、落ち着いたら悪魔狩り祭りだ……!

 
霧像界アンマンド:ギリシャ
霧像界アンマンド:ギリシャ
 ギリシャに到着してから、リダははたと気付いた。

リダ・クルツ

そういえば、神様へのお土産がないな。

 いわゆるお供えと言う奴である。

ウェンディ・フローレンス

捧げ物とかいるのかしら。可愛い女の子とか……いけませんわ!!

 ウェンディはクルハを庇うように立つ。

リダ・クルツ

違うからね!?

 と言うやりとりの後、リダはジョージを誘った。

リダ・クルツ

手ぶらって訳にはいかないよな。ちょっと買っていこう!

 一旦自由行動となる。

ルル・ロシェ

いやー、のんびり旅行できるって最高だよね。

 ルル・ロシェ(ma0422)はガイドブックを開きながらニコニコしていた。初めての飛行機の中でも、天魔と同じく機内食、景色、それと酒を堪能していた参加者である。
 霧像界という世界の中のつながりを知る、と言うのも理解には重要だろう。その道程を楽しむというのも、一つ仕事でもあるのだ。
 遺跡に世界のイデアをもらいに行く。そんな仕事に、ルルが興味を持たないはずがないのだ。調査員ロールで、先日武装教会で作ったループタイを付けているあたり、霧像界その物への思い入れも感じられる。

リダ・クルツ

ルルさん、ちょっとガイドブック見ても良い?

ルル・ロシェ

良いよ。お土産買うならこのページかなー?
俺はこの辺の名所とか見に行こうかな。

雑貨屋
雑貨屋

リダ・クルツ

シャボン玉ガンとハンディファン、どっちが映えるかな。

 リダはシャボン玉の出るトイガンと、レインボーに光るハンディファンを見比べて唸っていた。雑貨屋に置かれたテレビでは戦争のニュースが流れていて、特異点に関係なく起こっている人類の争いが続いていることを示している。
 霧像界では、人類をまとめて結束させるような大規模な危機は起こらなかった。
 世界法則が放任主義であるが故に、簒奪者が利用する筈の特異点や危機も小規模なところで収まっていたのだろうと推測できる。
 それはつまり、人類の判断で世界が運営されていくと言うことであり、当然争いも頻発する。

ジョージ

両方持ってく……?

 ジョージはリダの意図にピンと来ていない。それに気付いたリダが説明してくれた。

リダ・クルツ

人間は人間で、色々楽しいもの作って、それなりにやってるよってつもりで。

ジョージ

良いね! 無駄を楽しめるのも人類の特権だもんな。

 画面の中で戦車が爆発した。人間が乗っているはずのそれは激しく燃え盛る。ジョージはテレビに背を向けていたのでその映像は見えていなかった。

 店を出ると、リダはドーナツの屋台を見つけて目を瞠った。

リダ・クルツ

む……あれはドーナツ……。テイクアウトあるか!?

 甘い匂いが漂う。イデア翻訳で、何が売られているかはすぐにわかった。

リダ・クルツ

ルクマデス……蜂蜜ドーナツだな。食べる!

 大喜びで購入するリダ。

 集合して、一行はオリンポス遺跡に向かう。女性陣は、クルハの提案で花を見に行っていたようだった。

ウェンディ・フローレンス

お花とクルハちゃん……。

 ウェンディは花とクルハの組み合わせを堪能したらしい。

白花 琥珀

お花綺麗でしたねー。ギリシャだと日本とは違ったお花が見れて楽しいですね。

川澄 静

たくさんありましたねっ。どのお花も素敵でしたよ。

紫明

秋桜の見頃にはちと外れてたわね。

グリーンアイス

薔薇もありましたなー。

 飛行機の中で爆睡していた分、グリーンアイスは道中で元気良く与太を飛ばしていた。

グリーンアイス

D.J.くんの半分を見つけた者は世界を手に入れられるという。
それがまさかあんな戦いになるなんて……。
そう、この地であたしとヤギさんの長い長い戦いに終止符が打たれたのだ。
スイートポテトくん、元気かな。
ピコちゃまは昔の日本のバラエティみたいにバズーカ持ってきてたなぁ。

 わりと洒落にならなかった与太ネーミングバズーカ……。

グリーンアイス

この戦いの果てに、ジョージは基本ロール全ての上に立つロールに開眼し、瞬時にレベル上限まで高めたのじゃ。

ジョージ

噂に尾鰭がつくってこういう感じなんだなぁ。

霧像界アンマンド:オリンポス遺跡
霧像界アンマンド:オリンポス遺跡
 ジョージが無人の標を置くと、やがて観光客はいなくなった。

クルハ

それじゃ、始めるよ。

ジョージ

ああ、頼むよクルハ。

 クルハがロンギヌスを取り出して呼びかけると、明らかに質と量の違う情報が……イデアが集まってくるのを感じた。
 これが世界法則の一部たる、この世界の意志……。

世界意志

──何だろう。
何かご用かな? 我々のことは忘れてしまったと思っていたんだけれども。

麻生 遊夜

お初にお目にかかる、突然の訪問申し訳ないが話を聞いて頂きたい。

世界意志

はあ。

ルル・ロシェ

随分ゆるふわな世界意志だなぁ……。

 ルルは呆れにも不信感にも似た、ある種の驚きを、世界意志の態度に感じていた。
 遊夜とクルハが世界武装の素になるイデアの切り出しを依頼すると、相手はあっさりと了承した。

世界意志

まあそういうことなら構わないよ。
君のその槍を我々に繋いでくれれば分けてあげよう。

クルハ

ありがとう! それじゃ早速……。

 クルハはそっと、ロンギヌスをそのイデアの集合体に接続した。松明に火を貰うような動きだ。

紫明

知らぬが仏なんて思ったけど、目の前にその仏? 神? がいるのね。

 紫明もやや緊張の面持ちだ。恐れと言うよりも、未知の戦場(いくさば)に立つような緊張感に近いのだろうか。強大な存在が目の前にある事実を受け入れている。

透夜

要望を受け入れてくれてありがとう。とても助かるよ。

 透夜(ma0306)は礼を述べた。

透夜

まあ、マンション1棟が世界の危機なんて思いもしないよね。
それにしても、世界を人類に任せたから、人類の行動結果には関与しないってのはわかるけど、世界外からの干渉にも無関与なのはどうなんだろうね。

世界意志

この世界も国のようなものだ。宇宙という大きな世界があるならば、他の国からの働きかけもあるだろう。
それを全てカットするというのも乱暴ではないかな。

透夜

まあそういうものかな。

世界意志

というのは建前で、まあなんとかなるんじゃないかな。こっちの人々の方が数が多いからね、と言うのが本音だ。

透夜

ちょっと。

ルル・ロシェ

「我々」……?

 複数形の一人称を使うことに、ルルは首を傾げた。大体の世界では単数として現れていたような……否、ミラリスは表と裏で二体か。

世界意志

我々は我々だ。人々が我々を神々と呼ぶので、人々と関わるときの我々は我々だ。

 時に慈悲を見せ、時に厳しさを見せる、自然や世界の多面性、それを人類は複数の存在と認識することもある。それぞれの現象一つ一つを別のものと扱われているので、世界の方も自らを群体のように称しているのかもしれない。多重人格……と言うのも少し違うか。

ルル・ロシェ

あんたは何て呼べばいい? 名前……は訊いても良いもんなの?

世界意志

君が知る神話の神の好きな名前で呼ぶが良いよ、「人を知る悪魔」。

ルル・ロシェ

……!

世界意志

失礼。君はその姿であっても、根っこはとても人間らしいように見える。
それは人をよく知っているから、なのかなと思っただけだ。
我々の……いや、自分のことはそうだな。この状況になぞらえて「プロメテウス」とでも呼んで貰おう。
うむ、こちらで選んでしまう方が早いね。

ルル・ロシェ

こいつ、もしかして元はすごい仕切り屋なんじゃ……。

 管理すると過干渉になってしまうから逆に手を離しているとかそういう感じなんだろうか。両極端だ。案外癖が強いかもしれない……。

ルル・ロシェ

大きなお世話だろうけど。もっと疑ったら?

プロメテウス

嘘を吐くと細かいところで矛盾が出るからすぐに解るよ。
もし嘘なら排除する。

ルル・ロシェ

どうやって?

プロメテウス

人払いしている石を破壊して人々を呼び、警察に通報して貰おう。

 冗談とも本気ともつかないものの言い方だったが、人類に世界運営を任せている世界意志のやりそうなことと言えばそうだ。

ルル・ロシェ

それにしても、この世界の「悪魔」って言うのも、あんたの一部なんだろ?
別に人類のこと嫌ってる訳でもなさそうなのにどうして。

プロメテウス

人類も別に地球を嫌ってはいないと思うが、それでも結果として汚染していることはあると思うね。
愛していることと、振る舞いが結果的に害になることは別だ。

 わかったような、わからないような話だ。

川澄 静

プロメテウスさま。

 静が一歩前に進み出た。

川澄 静

私はエンブリオの魔女、川澄静と申します。
お尋ねしたいのですが、超常のものがプロメテウスさまの一部として、悪魔……悪意のある者以外の者はいないのでしょうか? 天使とか。

 それが調査員の超常スキルかもしれないが。

プロメテウス

君の言うとおり、天使とか妖精とか精霊と呼ばれているものはそうだろうね。
人々にとって良い物かどうかは別だが。

 悪魔は人的被害が出る分目立つと言うことだろう。人類が多かれ少なかれ経験する不思議体験も世界法則の一部なのかもしれない。

川澄 静

悪魔の出現地域は偏りがあったりしますか?

 静がこの質問をするのは、協会のグスターヴァスたちにとって有用な情報を持ち帰る為だ。悪魔の出現地域に偏りがあれば、そこを重点的に警戒すれば良い。
 彼女は色んな世界のグスターヴァスと関わりを持った。霧像界のグスターヴァスを少しでも助けたい。そういう気持ちがこの質問をさせている。

プロメテウス

我々の一部を悪と見なすか善と見なすかは人々次第だ。ある地域の人々には精霊であっても、他の地域の人々にとっては悪魔、と言うことはあり得る。

 一部地域で「めちゃくちゃ悪魔が出る!」と思っても、文化の違う人から見たら「あの土地は精霊に愛されている土地なんだ!」と言う認識になる可能性はある。
 なので、結論としては「人類の文化の偏りに依る」ということなのだろう。

川澄 静

なるほど、わかりましたよ。ありがとうございます。

 次に進み出たのは天魔だった。

天魔

好意に感謝します。
それと個人的なお願いがあります。人が滅びに至る判断をした時に放っておくではなく忠告をして欲しいのです。

 人類の滅びを回避するために、支配を敷いて結果的に反乱されてしまったピコ。
 彼女は常に人類の身を案じていた。現地の協力者である悪魔スイートハートにも、「人類に害あるあなたは許容しない」と言い切った。それが「嫌い」からくるものであったとしても。
 天魔はピコの正義を否定した。けれどその思いは否定できない。

天魔

人は時に愚かな間違いを犯します。その時に間違いに気づく機会を与えて欲しいのです。

プロメテウス

それについて心配は要らない。人々はいつもちゃんと間違いに気付いている。
間違いに気付いてそれを人々の間から是正しようとする動きをこれまでの歴史でも繰り返している。
確かに人々は時としてびっくりするほど理に適っていないことをする。でも最後には帳尻を合わせているので我々は心配していない。
あなたも心配はいらない。

 まるで介入する気がないような言い方ではあるが、どちらかというと放任主義の親のようにも見える。ある種の信頼なのだろうか。
 もしかしたら人類の中で起こる「気づき」が自覚のない介入かもしれない。

天魔

わかりました。

透夜

寂しくないのかね? 忘れ去られていく事に。そう思う世界もあった。

 透夜が再び問いかけた。

透夜

聖地やパワースポットと言う形で信仰が残っているから、完全に忘れ去られることはないのかな。
懐地界のように忘れ去られることを悩む存在もいたけど、そこは過ぎ去ったことなのかな。

プロメテウス

……我々のことを忘れたと思った、と言ったのは、人々の神話に加工される前の、この姿の我々のことだ。
だが、人々は我々のことを神話で語り継いでいる。人々が人々である限り、我々の存在そのものを忘れてしまうことはない。

 その人のことは忘れてしまっても、「こういう人がいたんだよ」と語り継がれる人はいる。そういうことなのだろう。

プロメテウス

原初、この世界ができた時に我々と接触した人々はもういない。
末裔は我々のことをわからないだろう。語り継がれる神話に思いを馳せてくれれば十分さ。

透夜

協会の人達にお願いして、各地の聖地や霊場の信仰を高めて貰うのもアリかもね。

麻生 遊夜

やはり独り立ちはすべきだとは思うからなぁ、難しい所ではあるが。

 遊夜は顎に手を当てた。

麻生 遊夜

そうやって人類と距離を取ったきっかけとかあるのか?

プロメテウス

原初の人々から連綿と続くにつれて、人々は変わった。我々はあまり変わらなかったから、我々の介入が余り為にならなくなった……と言うところか。
きっかけというか、理由はそうだ。

グリーンアイス

世界意思って普段何してんの? お昼寝?

プロメテウス

昼寝したり、聞き耳を立てたり。

 遊夜の他の疑問は解けた。普段はゆったりと人類の動向を眺めているらしい。

ルル・ロシェ

そういえば、スイートハート……嵐の像の力を使ってた悪魔の行方とか知らない?

 世界武装の作成に役立つのではないか……とルルは踏んでいる。

プロメテウス

人々で例えると抜けた髪の毛のようなものだからな……。

 わからない様だった。

プロメテウス

君はやはり人々に近いようだね。
手の届く範囲のことに気をつけている?

ルル・ロシェ

ぶっちゃけ、宇宙の危機とか壮大すぎて実感ないんだよね。
霧像界も救ったってか、スイハを構ってたら結果そうなった的な。

 悪魔が潜んでいるらしいと知って、興味が沸いて介入していたら結果的に特異点確保に繋がった。

ルル・ロシェ

でも折角なら、これからも続くはずの日常が続けばいいじゃん?
人生楽しまなきゃ損だからね。

クルハ

何か手応え感じるよ!

プロメテウス

もう少しかな。

 神々から授かる火。
 それは神話で語られるプロメテウスの火にも似ている。
 こうやって、霧像界の人類は世界から与えられた力の経緯を神話として残していたのだろう。
 人類は火を得ることによって可能性を広げた。光るハンディファンも作れるようになった。
 それは争いの可能性も広げている。ナイフは石から金属になった。今や武器の種類も膨大だ。
 人類は愚かだ。だからずっと悩みながら、完璧じゃない判断を繰り返してここまで続いてきている。
 でも滅んでしまえばわかり合うこともできない。
 全ての人類を一緒にしてしまうことはできない。
 全ての人類が同じでないからできる発展もある。
 それは霧像界だけの話でもない。

白花 琥珀

ピコさん……どの世界に行っても争いはあるし私だって戦いが絶えない日々ですが……いつか、それを乗り越えて優しい宇宙になれたら……。

 会えるのが、未来か、天獄か、地獄かはわからないけど。
 話したいことがたくさんあるんです。

 それまで、彼女とまた会えるまで、宇宙が終わらないよう頑張るだけ。

川澄 静

コハ、ピコさまともまた会える様に……諦めずにがんばりましょうね。

 静がその肩にそっと手を添えた。

 ロンギヌスの先に火が灯る。
 宇宙を次に繋ぐために、存続のリレーがスタートした。


 帰り道、リダはルクマデスをつまみながらジョージに話す。お供え物は置いて行った。

リダ・クルツ

この世界は、神にすら管理されないで、人間が自分の自由を管理してるんだな。借りた力の責任、自分で持たなきゃな……。

 力の使い道を考えること、想像すること。それはきっと、明るい未来に繋がっている筈だから。

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