●
夏だ!
海だ!
「僕には応援することしかできないよ……がんばれ〜」
麦わら帽子にサングラス、アロハシャツにウクレレちゃちゃちゃん――コンテナ三人組の浮かれたエルフ、ユーグヴェル・ミラ(ma0623)だ!
「僕はスプーンより重い物を持てないか弱いエルフだからね、かき氷の新メニュー開発に勤しむよ。材料はそう……僕の命の水げふげふん、酒!」
大人のひんやり、はじめました。
「リキュール系はだいたい合うんだよね。レモンピューレのシロップと合わせても良さそうかなーなんて」
「てか、美味そうだけど客に出せるのか……? 泳ぐ奴が酒飲んだら危ないだろ」
そう懸念する彼は、コンテナ三人組の常識人(犬?)――Tシャツにサーフパンツ姿のテオ・デュークロー(ma0639)だ。
「(……え~……と。どうしてこうなった……?)」
二人の友人と遊びに来たつもりが何でかき氷削ってるんだろうとかそんなこと考えたってもう遅い。
Tシャツの裾から覗く彼の尻尾は、一目見てわかる程しんなりしている。仕方がない、夏だもの。暑いもの。犬だもの。
「ん? 海に入る客には危ないって? ……仕方ない、責任を持って僕が処分しよう」
「いや……そもそもお前は自分が食いたいもの食ってるだけ――ギャン!? ……冷ッた! 何すんだこいつ!! 逃げんな!!」
テオの背中に氷、入れはじめました。
文句を零しながらも、氷を削る手は休ませないテオ。これはこれで貴重な体験なのだ。テオの隣で接客を行うもう一人の大切な友人も、楽しそうにしているし――。
夏の光を帯び、花簪で結い上げた金混じりの桃色の髪が彩りを深くする。
「何とも愉快な状況じゃのう」
鈴東風姫(ma0771)は含み笑いを浮かべながら、氷の合間にパウダーソルトをぱらりと降らせていた。
「水分は勿論じゃが塩分もの……魔女のまじない粉じゃ」
中鉢程度のクリアボウルには、花蜜をかけた綿菓子のようなかき氷。砂浜のゴミを減らす為、器の返却で冷えたフルーツを一切れサービスする鈴東風姫の提案は好評のようだ。一部、緋色の中華風のホルターネックに紐パンツ、唐紅のパレオ姿の彼女をもう一目見ようという不純な動機を持つ者もいるが。しかし、そんな下品な視線も溜息と共に落胆へ沈む。
「櫻――」
微笑みを湛えた彼女の眼差しと声音の先――そう、“彼”だ。暑さで思考が鈍っている所為か「は?」と、反射的に振り返った櫻(mz0036)のその半開きの口の中へ、ふわりと羽が舞った。
「わらわ謹製の氷菓子はどうじゃ? 美味であろ?」
呆気にとられる櫻の瞳をにっこりと覗き込みながら、彼の口から匙を引く。鈴東風姫の手には硝子のティーカップが収められており、削った氷の合間に先程の塩とチリパウダーを降らせ、ハバネロシロップをたっぷりとかけたかき氷が盛られていた。
「逃げずに終えれば再度作ってやろうて」
珍しく呆けたままの櫻の頭を、鈴東風姫の端正な指が優しく撫でてやる。櫻は口の中で溶けた氷を飲み込むと「……全く、謹製を使う相手を間違えているだろう」と、此方を仰ぐ彼女から視線を逸らすも――
「もう一口」
まさかの催促。
「ふふ、ほんにおんしは愉快じゃのう。――さあ、櫻以外には塩と花蜜のかき氷を用意しておるゆえの。休憩も大事じゃぞ?」
そして又、ひと匙――辛い山が涼しげな音を鳴らしたのであった。
じゅわ。
「まぁ、この暑さだもの、ね。鉄板料理は確かに熱い、けれど」
じゅわじゅわ。
「……暑い、わね」
じゅわわわわ~~~。
両手にしたヘラで器用に焼きそばを炒めるのは、草薙胡桃(ma0042)だ。
定番のウスターソースの香ばしい香りが、食欲をそそる。だが、胡桃は別の味の販売もどうかと考えていた。
「塩、変わり種で味噌風味、誰かさん好みの辛焼きそばもある、わね」
「おっ、いいじゃねぇか。調味料なら色々あっから作ってみようぜ」
「わかった、わ。先ずは、こちらを仕上げてしまう、わね」
「おう」
「……。……そうだ。オムそば、よ」
「あ?」
「オムそばも、出してみたら? 前にみぃがオムそばを食べたいって言っていた気がする、のよね」
ならばということで、先ずはかき氷を担当している人達に試食をしてもらい、好評ならメニューに加えようとしたが絶対美味しいので即メニュー入りが決定しました。
「それにしても……ジルバは夏が似合う、わね」
「ははっ、だろ? 服屋を引退したらココで稼ごうかしら」
「引退……あるのかしら、ね? そして櫻、貴方はなんというか……通常運転、ね」
汗ばんだ首をタオルで拭いながら、胡桃が肩越しに振り返る。奥の日陰では櫻が一人、鉄板の熱気から離れるようにして壁に凭れかかっていた。
「何時も通りの俺をご所望なら、喜んでこの場から消えるよ?」
「あら、それはオススメしない、わね。この暑さの中、日陰もない場所で、大量の焼きそばパックを持って、出張販売は嫌、でしょう?」
アップルグリーンの円らな瞳がにこりと笑む。遣り込められる櫻が目新しかったのだろう、彼女の隣ではジルバ(mz0027)がくつくつと喉を鳴らしていた。櫻は決まり悪げに眉を顰め、二人から視線を外す。
「……小さいくせに俺より鬼だ」
そんな櫻の不平も、寄せては返す波の鼓が攫っていくのであった。
帽子のブリムをちょいと摘まみ上げてみれば、眩い夏の日差しがフローライト(ma0292)の青い黄玉へ飛び込んでくる。
「この暑さなら、倒れる方が出てもおかしくはありませんね……」
フローライト自身も既に暑さと日差しでぐったり気味だが、偶然の出会いから生まれる楽しみはそれを越えていくものだ。フローライトは双眸を細めながら麦わら帽子を被り直すと、作りたてのかき氷を三つ手に取り、隣のブースへ声をかけた。
「暑い中、焼きそば作りお疲れ様です。休憩は取れていますか? かき氷、こちらに置いておきますので、水分補給にどうぞ」
「ええ、ありがとう、フロー」
胡桃に微笑みを返した後、試作のシロップをかけた小さめのかき氷を幾つか手にし、フローライトが次に向かった先は――
「おや? ああ、嗚呼――なるほど。これはこれはと言うべきか」
フローライトの装いに視線を据えながら、奥のデッキチェアで高雅に寝そべっていたファルセット(mz0034)が、椅子から長い脚を下ろす。
「ふふっ、店員さんには私が女性に見えたようです。こういった露出の多い格好は初めてなのですが……似合っているでしょうか……?」
目許をじわりと染める朱を、フローライトが伏し目がちに隠した。
黄金界にある水着屋の店員から薦められた水着は、紺色のハイネックビキニと、その色に合わせたボタニカル柄のパレオスカート。そして、夏の定番だからこそ映えるつばの広い麦わら帽子。
「美しさに性は関係ない。エレガントな君を誇るといいさ」
「ふふ、ありがとうございます」
「それで? 私に何か用かい?」
「そうでした。ファルセットにいくつか味見をお願いしてもいいですか?」
そう差し出したのは、瑞々しい果肉を惜しげもなく入れたフルーツたっぷりかき氷。
「こちらには苺と桃を分けてかけてあります。こちらは芒果と檸檬。そちらは――」
「葡萄か。瑠璃色に光る紫陽花のようだ……ん、C'est bon。早速メニューに加えるといい」
フローライトが礼を伝えブースに戻ると、コンテナ三人組の紅一点――魅朱(ma0599)が慣れない手つきで氷を削っていた。
「削りながら器を回していくと綺麗に作れますよ」
「おー……やってみる……。そう言えば、フローの“音”はさらさら雪みたいだったね……」
「音……?」
洋服のような感覚で身に纏えるオフショルダーのフリルビキニ、その上から羽織った薄手のカーディガンの袖がひらひらと円を描く。
初めての経験。
伝わってくる感触。
削ると響く夏の音は、涼やかで心地が良い。
けれど――
「はわ……溶けた……」
ぼんやり注意。器の中の氷は何時の間にか水になっていた。しかし、魅朱にはお助けエルフがいる。
「お、水割りかい? いいのかい? いやぁ〜飲むつもりは無かったんだけどなぁ〜?」
証拠隠滅。
「よぉし……もう一回……」
「楽しそうだなぁ、魅朱嬢は。そうだ、僕はきみの音に合わせてウクレレを鳴らしてみよう」
「ユーグ……ウクレレ弾けたんだ……」
がりがりがり。
ちゃんちゃらら。
「うーん……もっとこう、こうさ?」
ごりごりごり。
ちゃららららん。
「ふわっと削れないかな? ふわっと」
がりご(ry
ちゃ(ry
「あ、そうだ。僕がさっき作ったこの味限りなく正解に近くない? ちょっと食べてみ?」
「ユーグ……復活の呪文、唱えて欲しい……?」
翻訳:お口チャックか気絶するか好きな方を選ぶがよい。
晴れ渡った砂浜に響く二重奏。
その二つの音は妙に凸凹で、実に愉快であったそうな。
●
「ジルバ、櫻、お疲れ様。ファルセットは満喫できた、かしら?」
皆に焼きそばと飲み物を配膳した後、練乳とフルーツをたっぷりかけた魅朱特製のかき氷を味わう胡桃。
「うん? 櫻は休むのかえ? ならば、わらわが扇いでやろう。枕が必要なれば肩でも膝でも貸してやるぞ?」
「君という子は……俺なんかに気安く提供するんじゃない」
手伝いを終え、各々が思い思いに労う。
そんな中――
「おい魅朱、寝てる奴埋めんのは危ねえぞ。……顔はマジで死ぬって!」
「だって……夏だし、海だし……砂あるし……? モモのオムそばもっと食べたいし……」
「腹ごなしかよ! まあ……あとで掘り出してやればいいか」
酔い潰れたエルフ、初めての海の思い出に埋められる。しかし、そんな戯れも三人からしてみれば何時ものこと。
ま、いいさ。
きみ達といれば何だって楽しいよ。
オレンジ色に光る海が、誰かさんの心を鮮やかに映しているようであった。
夏だ!
海だ!
「僕には応援することしかできないよ……がんばれ〜」
麦わら帽子にサングラス、アロハシャツにウクレレちゃちゃちゃん――コンテナ三人組の浮かれたエルフ、ユーグヴェル・ミラ(ma0623)だ!
「僕はスプーンより重い物を持てないか弱いエルフだからね、かき氷の新メニュー開発に勤しむよ。材料はそう……僕の命の水げふげふん、酒!」
大人のひんやり、はじめました。
「リキュール系はだいたい合うんだよね。レモンピューレのシロップと合わせても良さそうかなーなんて」
「てか、美味そうだけど客に出せるのか……? 泳ぐ奴が酒飲んだら危ないだろ」
そう懸念する彼は、コンテナ三人組の常識人(犬?)――Tシャツにサーフパンツ姿のテオ・デュークロー(ma0639)だ。
「(……え~……と。どうしてこうなった……?)」
二人の友人と遊びに来たつもりが何でかき氷削ってるんだろうとかそんなこと考えたってもう遅い。
Tシャツの裾から覗く彼の尻尾は、一目見てわかる程しんなりしている。仕方がない、夏だもの。暑いもの。犬だもの。
「ん? 海に入る客には危ないって? ……仕方ない、責任を持って僕が処分しよう」
「いや……そもそもお前は自分が食いたいもの食ってるだけ――ギャン!? ……冷ッた! 何すんだこいつ!! 逃げんな!!」
テオの背中に氷、入れはじめました。
文句を零しながらも、氷を削る手は休ませないテオ。これはこれで貴重な体験なのだ。テオの隣で接客を行うもう一人の大切な友人も、楽しそうにしているし――。
夏の光を帯び、花簪で結い上げた金混じりの桃色の髪が彩りを深くする。
「何とも愉快な状況じゃのう」
鈴東風姫(ma0771)は含み笑いを浮かべながら、氷の合間にパウダーソルトをぱらりと降らせていた。
「水分は勿論じゃが塩分もの……魔女のまじない粉じゃ」
中鉢程度のクリアボウルには、花蜜をかけた綿菓子のようなかき氷。砂浜のゴミを減らす為、器の返却で冷えたフルーツを一切れサービスする鈴東風姫の提案は好評のようだ。一部、緋色の中華風のホルターネックに紐パンツ、唐紅のパレオ姿の彼女をもう一目見ようという不純な動機を持つ者もいるが。しかし、そんな下品な視線も溜息と共に落胆へ沈む。
「櫻――」
微笑みを湛えた彼女の眼差しと声音の先――そう、“彼”だ。暑さで思考が鈍っている所為か「は?」と、反射的に振り返った櫻(mz0036)のその半開きの口の中へ、ふわりと羽が舞った。
「わらわ謹製の氷菓子はどうじゃ? 美味であろ?」
呆気にとられる櫻の瞳をにっこりと覗き込みながら、彼の口から匙を引く。鈴東風姫の手には硝子のティーカップが収められており、削った氷の合間に先程の塩とチリパウダーを降らせ、ハバネロシロップをたっぷりとかけたかき氷が盛られていた。
「逃げずに終えれば再度作ってやろうて」
珍しく呆けたままの櫻の頭を、鈴東風姫の端正な指が優しく撫でてやる。櫻は口の中で溶けた氷を飲み込むと「……全く、謹製を使う相手を間違えているだろう」と、此方を仰ぐ彼女から視線を逸らすも――
「もう一口」
まさかの催促。
「ふふ、ほんにおんしは愉快じゃのう。――さあ、櫻以外には塩と花蜜のかき氷を用意しておるゆえの。休憩も大事じゃぞ?」
そして又、ひと匙――辛い山が涼しげな音を鳴らしたのであった。
じゅわ。
「まぁ、この暑さだもの、ね。鉄板料理は確かに熱い、けれど」
じゅわじゅわ。
「……暑い、わね」
じゅわわわわ~~~。
両手にしたヘラで器用に焼きそばを炒めるのは、草薙胡桃(ma0042)だ。
定番のウスターソースの香ばしい香りが、食欲をそそる。だが、胡桃は別の味の販売もどうかと考えていた。
「塩、変わり種で味噌風味、誰かさん好みの辛焼きそばもある、わね」
「おっ、いいじゃねぇか。調味料なら色々あっから作ってみようぜ」
「わかった、わ。先ずは、こちらを仕上げてしまう、わね」
「おう」
「……。……そうだ。オムそば、よ」
「あ?」
「オムそばも、出してみたら? 前にみぃがオムそばを食べたいって言っていた気がする、のよね」
ならばということで、先ずはかき氷を担当している人達に試食をしてもらい、好評ならメニューに加えようとしたが絶対美味しいので即メニュー入りが決定しました。
「それにしても……ジルバは夏が似合う、わね」
「ははっ、だろ? 服屋を引退したらココで稼ごうかしら」
「引退……あるのかしら、ね? そして櫻、貴方はなんというか……通常運転、ね」
汗ばんだ首をタオルで拭いながら、胡桃が肩越しに振り返る。奥の日陰では櫻が一人、鉄板の熱気から離れるようにして壁に凭れかかっていた。
「何時も通りの俺をご所望なら、喜んでこの場から消えるよ?」
「あら、それはオススメしない、わね。この暑さの中、日陰もない場所で、大量の焼きそばパックを持って、出張販売は嫌、でしょう?」
アップルグリーンの円らな瞳がにこりと笑む。遣り込められる櫻が目新しかったのだろう、彼女の隣ではジルバ(mz0027)がくつくつと喉を鳴らしていた。櫻は決まり悪げに眉を顰め、二人から視線を外す。
「……小さいくせに俺より鬼だ」
そんな櫻の不平も、寄せては返す波の鼓が攫っていくのであった。
帽子のブリムをちょいと摘まみ上げてみれば、眩い夏の日差しがフローライト(ma0292)の青い黄玉へ飛び込んでくる。
「この暑さなら、倒れる方が出てもおかしくはありませんね……」
フローライト自身も既に暑さと日差しでぐったり気味だが、偶然の出会いから生まれる楽しみはそれを越えていくものだ。フローライトは双眸を細めながら麦わら帽子を被り直すと、作りたてのかき氷を三つ手に取り、隣のブースへ声をかけた。
「暑い中、焼きそば作りお疲れ様です。休憩は取れていますか? かき氷、こちらに置いておきますので、水分補給にどうぞ」
「ええ、ありがとう、フロー」
胡桃に微笑みを返した後、試作のシロップをかけた小さめのかき氷を幾つか手にし、フローライトが次に向かった先は――
「おや? ああ、嗚呼――なるほど。これはこれはと言うべきか」
フローライトの装いに視線を据えながら、奥のデッキチェアで高雅に寝そべっていたファルセット(mz0034)が、椅子から長い脚を下ろす。
「ふふっ、店員さんには私が女性に見えたようです。こういった露出の多い格好は初めてなのですが……似合っているでしょうか……?」
目許をじわりと染める朱を、フローライトが伏し目がちに隠した。
黄金界にある水着屋の店員から薦められた水着は、紺色のハイネックビキニと、その色に合わせたボタニカル柄のパレオスカート。そして、夏の定番だからこそ映えるつばの広い麦わら帽子。
「美しさに性は関係ない。エレガントな君を誇るといいさ」
「ふふ、ありがとうございます」
「それで? 私に何か用かい?」
「そうでした。ファルセットにいくつか味見をお願いしてもいいですか?」
そう差し出したのは、瑞々しい果肉を惜しげもなく入れたフルーツたっぷりかき氷。
「こちらには苺と桃を分けてかけてあります。こちらは芒果と檸檬。そちらは――」
「葡萄か。瑠璃色に光る紫陽花のようだ……ん、C'est bon。早速メニューに加えるといい」
フローライトが礼を伝えブースに戻ると、コンテナ三人組の紅一点――魅朱(ma0599)が慣れない手つきで氷を削っていた。
「削りながら器を回していくと綺麗に作れますよ」
「おー……やってみる……。そう言えば、フローの“音”はさらさら雪みたいだったね……」
「音……?」
洋服のような感覚で身に纏えるオフショルダーのフリルビキニ、その上から羽織った薄手のカーディガンの袖がひらひらと円を描く。
初めての経験。
伝わってくる感触。
削ると響く夏の音は、涼やかで心地が良い。
けれど――
「はわ……溶けた……」
ぼんやり注意。器の中の氷は何時の間にか水になっていた。しかし、魅朱にはお助けエルフがいる。
「お、水割りかい? いいのかい? いやぁ〜飲むつもりは無かったんだけどなぁ〜?」
証拠隠滅。
「よぉし……もう一回……」
「楽しそうだなぁ、魅朱嬢は。そうだ、僕はきみの音に合わせてウクレレを鳴らしてみよう」
「ユーグ……ウクレレ弾けたんだ……」
がりがりがり。
ちゃんちゃらら。
「うーん……もっとこう、こうさ?」
ごりごりごり。
ちゃららららん。
「ふわっと削れないかな? ふわっと」
がりご(ry
ちゃ(ry
「あ、そうだ。僕がさっき作ったこの味限りなく正解に近くない? ちょっと食べてみ?」
「ユーグ……復活の呪文、唱えて欲しい……?」
翻訳:お口チャックか気絶するか好きな方を選ぶがよい。
晴れ渡った砂浜に響く二重奏。
その二つの音は妙に凸凹で、実に愉快であったそうな。
●
「ジルバ、櫻、お疲れ様。ファルセットは満喫できた、かしら?」
皆に焼きそばと飲み物を配膳した後、練乳とフルーツをたっぷりかけた魅朱特製のかき氷を味わう胡桃。
「うん? 櫻は休むのかえ? ならば、わらわが扇いでやろう。枕が必要なれば肩でも膝でも貸してやるぞ?」
「君という子は……俺なんかに気安く提供するんじゃない」
手伝いを終え、各々が思い思いに労う。
そんな中――
「おい魅朱、寝てる奴埋めんのは危ねえぞ。……顔はマジで死ぬって!」
「だって……夏だし、海だし……砂あるし……? モモのオムそばもっと食べたいし……」
「腹ごなしかよ! まあ……あとで掘り出してやればいいか」
酔い潰れたエルフ、初めての海の思い出に埋められる。しかし、そんな戯れも三人からしてみれば何時ものこと。
ま、いいさ。
きみ達といれば何だって楽しいよ。
オレンジ色に光る海が、誰かさんの心を鮮やかに映しているようであった。







