エクスカリパー
西川 一純
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シナリオ形態
ショート
難易度
Normal
判定方法
カジュアル
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100SC
参加人数
4人~8人
優先抽選
50SC
報酬
200 EXP
5000 GOLD
10 FAVOR
相談期間
3日
抽選締切
2021/09/05 10:30
プレイング締切
2021/09/08 10:30
リプレイ完成予定
2021/09/17
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. -
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
●伝説って?
「なるほど、そんな事があったんですか。大丈夫ですよ。不幸な事があったんですから、きっと今回は幸運に恵まれますって」
「うむ……まぁ、運がなかったな、と。何、良さげな刀剣があればいの一番に知らせよう」
 浮島へのイデアゲートの前でことのあらましを聞いた不破 雫(ma0276)は、柔和な笑顔でカグヤに慰めの言葉を贈った。
 不破はカグヤの友人と言っていい咎人の一人だが、こんなアホなことにも付き合ってもらえるのはありがたい限りだ。
 続けて雪切・刀也(ma0506)が苦笑いしながらカグヤの肩を叩き、まだ引きずっているらしい彼女を少しでも勇気づける。
 かつて聖剣と呼ばれた剣を作り出したという雪切がいてくれるなら、武器探しにおいて心強いことこの上ない。
「うぅ……不破さぁん、雪切さぁん! ありがとうございますぅ……」
 情けない声を上げ、12歳ほどにしか見えない不破に泣き縋るカグヤの姿はちょっと絵面的にどうかと思われる。
 よく泣きよく笑いよく怒る。そんな表情の豊かさがカグヤの魅力でもあるが、もう少ししっかりしてもらいたいものだ。
「伝説の武器……とか聞くとワクワクしますねー♪」
「はい、そうですね。でも伝説の武器って何が伝説なのでしょう? 概念的なものでしょうか」
「うーん……物語の中で語り継がれていれば分類上伝説ですが……。例えば桃太郎の持っている刀もある意味伝説の武器と見做すことができるでしょうし」
 小山内・小鳥(ma0062)を始めとした三人グループもカグヤと縁が深く、友人と言っていい咎人たち。
 料理のこと以外でテンションが上っている小山内というのは比較的珍しいが……小首をかしげながら素朴な疑問を問いかけるフィリア・フラテルニテ(ma0193)と並んで、実に可愛らしい。
 鍛冶などの経験はなくとも慣れ親しんだ刀剣のこととあって、氷雨 累(ma0467)は真面目に『伝説の武器』について講釈してくれていた。
 伝説とは人が作り出した物語であり幻想。
 真実という核を羨望と願望で包み、尾ひれをつけて完成させる万華鏡。
 正確無比である必要などない。人が『そうあれかし』と望むのであれば、それは伝説として色褪せることなく国を、時を跨いで受け継がれていく。
「パチモンにも使い道はあるぞ? むしろパチモンだからこそいいこともある。逆にモノホンの宝だとして呪われてたりするしの」
「そもそも伝説の武器というのは『他人の武器』だ。自ら選び自らの命を預けて戦った武器が至高だと思うがな」
 レーヴェ・V・ヘルズキッチン(ma0162)もまた鍛冶や工作のスペシャリストだったとのことで、その言葉には含蓄がある。
 呪われた武器や防具というのも伝説上事欠かないし、人間に扱える代物かも分からない。
 フリッツ・レーバ(ma0316)も言っているように、他人の伝説に乗っかろうというのがそもそもの間違いなのかも知れない。
 元々の持ち主が手にした武器で偉業を成し遂げたからこそその武器も伝説足り得たわけで、己を鍛えず武器で箔をつけようなどというのは烏滸がましいことだ。
「わ、わかってるよぅ……わかってるけど……でも『伝説の剣』って聞くとかっこいいじゃん!? 例え攻撃力が300しか上がらなかったとしても!」
「いいねえ、伝説の剣! 浪漫だよな! 伝説の武器が良いものとは限らない、だったか。まあ一理あるさ。だが足りねえ。ああ、全然たりねえ。そう、浪漫がたりない!」
「そう、ロマンだよ! ロマンがあれば本当はショボくったっていいんだよ! でも偽物掴まされたら流刑街のローマ市民として黙ってられないよ!」
『ローマ!』
 パァン、とハイタッチしてわけのわからない合言葉をキメる歩夢(ma0694)とカグヤ。
 うだうだ塞ぎ込んでいるよりはいいかも知れないが、これはこれで鬱陶しい。
 とはいえ歩夢の様子からも分かるように、伝説の剣と聞いて喜ばない者は少ない。
 フリッツでさえも自分が使わないまでも相対してみたいと思うことはあるだろう。
 唯一、全く理解できていないフィリアはもう一度問いかけた。
「念の為にお伺いするのですが……伝説って?」
『ああ!』
 理解不能な返しをされ、首が30度くらいまで曲がっていくフィリアであった―――

●墓場にて
「これ……は……。何ていうか……すごい……。見渡す限りの武器の山というのは……中々壮観ですね」
 イデアゲートを通り浮島に降り立った氷雨たちは、島の様子に圧倒された。
 話には聞いていたが本当に島中に武器が突き立っており、イデアゲートの目の前からどこまでもどこまでも……墓標のように並んでいる。
 歩くのにも苦労しそうな密度の武器たちは遠目からでも分かるほど刃こぼれしている物や柄が砕けている物などもあり、状態の差が激しい。
「うん、壮観だな。やはり武具は良い。ずっと見ていたいよ」
「伝説の剣が眠る墓場。うーん、よいね! 最高じゃないか!」
「これほどの武器が死蔵とは嘆かわしい。使える物もあるだろうに」
 展覧会と言うにはあまりにも雑な掲示であるが、古今東西あらゆる世界の武器が集う様は圧巻の一言。
 感嘆の声を上げながら武具を見て回る雪切、歩夢と、眉を寄せて苦言を呈すような口調のフリッツとは多少温度差がある。
 どの世界のどんな時代に生まれ活躍した武器なのかは不明だが……おそらくこれ一本一本に何かしらの物語があるのだろう。
「……思ったよりも、数が多いんですね」
「これだけたくさんあると……ある程度は勘で探すしかなさそうですー」
 クールと言うか現実的な観点から、不破は島の様子を見て言葉少なげだ。
 すぐに伝説の武器が手に入るなどとは最初から思っていないが、この剣山の針一本一本を見ていったら時間がいくらあっても足りはしない。
 他の咎人が寄り付かずイデアウェポンに傾倒してしまうのも、この中から本物を見つけ出すよりよっぽど早くて強いからだと納得してしまう。
 小山内もそれは理解しつつ、友人のために……自らの興味のために笑顔で武器を見て回っていた。
「これ全部ぶん投げたらそれなりの攻撃力になりそうじゃの」
「なるほど、もしかしたら誰かを護って朽ちた剣達なのかも知れませんね。私達が此処を荒らす前にお祈りを捧げましょう。安らかに眠れますように」
 レーヴェが掴んだ槍などは柄の部分が腐っていたのか、あっさりと砕け折れてしまった。
 言うなれば遺体が雨ざらしになっているようなものであり、無機物故見えないところで腐食が進んでいる物もあるだろう。
 まさに武器の墓場。そこに眠る武器たちを偲ぶように、フィリアはせめてもの哀悼の意を表するのだった。
 と。
「え……不破さん、どうするのそれ……!?」
「はい?」
 フィリアが厳かに祈りを捧げていた横で、ブランカーロケットを取り出し構える不破。
 カグヤが恐る恐る問いかけるが、不破はさも当然とばかりに弾を発射した。
 爆音を立てて炸裂する砲弾。あまりにも様になるバズり方(物理)。
 砕け散り地面に転がる武器たちは、あたかもこの世の無常さを表現しているかのようだった。
「ちょっ……!? あんた何してくれてるんだよ!? 今吹き飛ばした武器の中に伝説の剣があったらどうするんだ!?」
「少なくとも伝説と謳われる物がこの程度で破壊出来る訳がありません。流石にこの数を一つ一つ見極めるのは無理ですから、ある程度まで間引きしましょう」
 情緒もへったくれもない行動ではあるが、焦ってツッコミを入れた歩夢を含め不破の意見に反論できる者はいない。
 数の多さもさることながら、爆風一つで壊れるような武器は簒奪者相手は勿論浮島調査にも適さない。
 きちんと使っていこうと言うなら尚の事耐久度チェックは必要と言えるだろう。
「う、うーん……相変わらず不破さんは合理的と言うか何と言うか……」
「あぁいうのは合理的と言うよりゴリ的と言うんじゃないのか?『俺がルールだ』過ぎるだろう」
「はっはっは、上手いことを言うのう。ゴリラのようなゴリ押しか、なかなか洒落が効いておるではないか」
「聞こえてますよ。それからゴリ押しのゴリはゴリラではなく、ごりという魚のことらしいので悪しからず」
 容赦なくロケット砲で武器を破壊しスペースを確保していく不破に、氷雨やフリッツ、レーヴェが素直な感想を述べる。
 不破はツッコミはしたものの怒る様子もなく、淡々と着実に仕事を進めていく。
 ちなみにブランカーロケットは普通2発で弾切れだが、この島にはエネミーがいないということで余裕を持ってスペア弾を補給できるのだった。
「方向性の違いだな……。不破さん、こっちには撃たないでくれよ。見たことのない素材や形状の物が多くてな……写真に撮っておきたい」
 世界は広い。異世界ともなると更に顕著で、鍛冶師の雪切からしてみれば見聞を広めるのにも絶好の機会だ。
 技法は? 材料は? コンセプトは? 考えれば考えるほど面白く、シャッターを押す指にもつい力が入る。
 勿論、不破のやり方を否定する気はない。
 雪切自身時間を取りすぎているのは分かっているが、たまには時間を忘れて没頭するのも悪くない。
「とりあえず持ち主を探してそうな武器を探しましょう。審美眼はありませんので、なんとなく武器に話しかけてみます。カグヤ様にお似合いの武器があると良いのですが」
「カグヤさんに似合いそうな武器……ツッコミ系とかですー?」
「そうそう、オリハルコン製のハリセンなんかがあると嬉し……ってなんでやねーん!」
 フィリアに武器と会話できる技能はないが、彼女は大真面目である。
 彼女の直感と幸運なら『会話のできる伝説の武器』と巡り会うのも夢ではないものの、そう上手くはいかない。
 小山内と協力してにこやかに調査を進めているところにカグヤがツッコミを入れてしまう。
「そういうとこじゃぞ。それよりこれなんかどうじゃ。ちょっと研げばまだまだ使えそうじゃろ?」
「えっと……? それただのナイフなのでは……」
「伝説の料理人が使って竜切り包丁とか曰くが付くもんじゃからな。逃げ回りながら戦っておればチキンナイフの伝説が作れるかもしれんぞ」
「計算式が違うなら考えるけどー!?」
 カグヤもチキンナイフの恐ろしさは耳にしたことがあるが、それはあくまで選ばれたチキンナイフの話だろう。
 まぁレーヴェは曰くが付くような活躍しろと言っているわけだが、何の変哲もないナイフを使ったら伝説になる間に死ぬのがオチである。
「ふむ……カグヤは主に浮島調査で武器を使うのだろう? ナイフも悪くはないと思うが、まぁ火力不足感はあるか」
 フリッツは何気なく歩いているように見えて、その観察眼……目利きの力で遠くまで武器の良し悪しを見定めている。
 フリッツ自身が好むのは斧などの重量武器だが、依頼主であるカグヤの主な行動パターンを考えるなら取り回しのいい武器が良いだろう。
 そういう意味でレーヴェの提案したナイフは白眉だったとフォローしたのだが、ナイフで伝説の武器というのはあまり聞かないのも確かである。
「ちなみにフリッツさん自身のお眼鏡に適いそうなのはあったの?」
「……まぁ、正直に言えば厳しいな。咎人となって私の身体能力も上がる一方だ……生半可な武器では武器のほうが耐えられん」
「へぇ……やっぱり最前線で簒奪者と戦う人って凄いんだねぇ。アタシはそんなにレベルアップした実感ないや」
「浮島調査が生業だろうと鍛えておいて損はない。毎日腕立て百回、腹筋百回、スクワット百回……小さなことからでもやっておけば筋トレは裏切らんぞ」
「へ、へぇ……覚えておきまぁす……」
 フリッツにとっては小さなことでも、カグヤにとって腕立て100回は地獄の沙汰である。
 引きつった笑顔で腰が引けているカグヤを見て、思わずため息を吐くフリッツだった。
「んー……こっちのほうが良いかな。んで、こいつはこっちよりも良い……くぅっ、滾るねこいつは!」
「歩夢さんは何してるの? もしかして凄い鑑定眼を持ってたり!?」
「うんにゃ、俺より凄い目利きなんてザラに居るよ。でもさ、より良い剣をどんどん選んでいったら最後には伝説の剣に辿り着くと思わない? 誰もが焦がれる剣は、夢見た通りの剣である筈だ。そうだろう?」
 夢。希望。憧れ。そんな人々の思いが形作った伝説の武器なら、見ただけで人を惹きつけるのではないか。
 多少時間はかかっても、二本の剣を見比べて良い方を取捨選択していけば伝説の武器に辿り着くのではないか……そう語る歩夢の瞳は子供のようにキラキラしている。
 それは偏に彼が語った『浪漫』の一言に尽きる。
 イデアウェポンの方が早くて強い? それがどうした、俺達は伝説の武器を愛している。無駄を愛している。浪漫を愛している。
「えへへ……なんか嬉しいな。ありがとね、そんなに一生懸命になってくれて」
「俺だって伝説の武器見たいからさ。この中から伝説を探し当てるような、運命の出会いしたいもんな!」
 まずはできると思うこと。絶対に見つかりっこない等と考えていたら見つかるものも見つかるまい。
 どこまでも真っ直ぐな情熱を持つ歩夢に親近感を持つカグヤであった。
「はわー……累くん、カグヤさん、見てくださいなのですよー。サンマみたいな形をした剣を見つけちゃったのですー」
「わ、ホントに魚みたいな形してる! え、こんな刀身どうやって鞘に入れるの……?」
「あぁ……それは秋刀魚丸だね」
「サカナマル?」
「サンママルですっ。確か僕のいた世界でもあったと思うんですが……観賞用のお遊びで作られた刀ですから、元々殺傷力は殆ど無いです」
「うーん……マグロだったら即お持ち帰りだったんですがー……サンマだったらとりあえずキープですねー……」
(あ、こだわるところやっぱりそこなんだ……)
(小鳥ちゃんはブレないなぁ……)
 この秋刀魚丸というのがどういう経緯で武器の墓場に流れ着いたのかはわからないが、こういう真っ当な武器と呼べないようなものも紛れ込んでいるらしい。
 小山内としては魚の形をしているというだけで興味をそそられるが、そこはそれ、彼女にとってはマグロこそが大本命だから仕方がない。
 珍しい刀剣を見比べて笑う小山内と小鳥を見て、氷雨は穏やかに微笑んでいた。
「累様、なにか良い事でもありましたか?」
「フィリアお姉さん。いえ、もしかしたら、この島にある偽物も所有者を騙そうとして造られたものではないかもしれないな……って。鍛治師が本物に敬意や憧れを持って模造したのかもしれません。或いはそれを越えようと。僕の刀も、そういうものですから」
 偽物。観賞用。贋作。言葉にしてしまえば陳腐でマイナスなイメージが付いてしまうが、本当にそれだけなのか?
 これらを作った刀匠は、ただただ自らが作る武器が伝説の域まで達するようにと精魂を込めただけかも知れない。
 勿論中には詐欺目的で作られた粗悪品もあるだろうが、純粋な人の願いによって作られた偽物だってあるはず。
 少なくとも、小山内やカグヤが笑顔で刀剣談義ができるくらい魅力的な剣がいくつもある。
 例え偽物でもそこには確かな魅力があるに違いないのだ。
「ふふ……累様は優しいですね」
「あはは……。ところでフィリアお姉さんが持ってるその刀は……?」
「これですか? これはですね……喋る刀です」
「……はい?」
「ここのボタンを押すとお喋りしてくれるんですよ。汚い高音で悲鳴を上げたり突然早口で怒りだしたり、面白いです」
(……そ、それはおもちゃか何かなのでは……?)
 上機嫌そうなフィリアに対し、なかなかツッコむことが出来ない氷雨であった。
「ふぅ……とりあえずこんなものですか。……ところで、カグヤさんって目利きって出来ます? 少々苦手なので、お願いできます?」
「うーん……ちょっと自信ないかなぁ。ここはやっぱり専門職の雪切さんに頼んでみようよ。ねぇー雪切さんちょっといーいー?」
 ブランカロケットに耐え不破自身の大剣の一撃にまで耐えてみせた武器だけを選定してきたようで、不破の背後は筆舌に尽くしがたい焦土と化していた。
 それをあえて見なかったことにしつつ、雪切が見分を開始する。
「ふむ……これは素材が硬いだけで剣としては二流だな。こっちはなかなかの代物だが、振る度に体力を持っていく呪いの武器の類だろう」
「げ。本当に呪いの武器もあるんだ?」
「まぁ、これだけ数があればな。馴染む一振りに出会えるかは一天地六。すべては縁次第。だが、その先は本人の資質次第だ」
「ほら、あれですよ。カグヤさんが伝説を作るのはどうです? そうすれば、今持っている武器が伝説の武器になるってのは……駄目かな?」
「偽物の聖剣使って伝説を作ったから偽物の聖剣が本物の伝説の剣になって、でもそれは偽物で……うーん……?」
(あ、知恵熱出しましたね)
(知恵熱だな。無理に納得しようとしなくてもいいと思うが)
 頭を抱えてうんうん唸るカグヤの様子を見て、悪いとは思いつつ面白いなと感じる不破と雪切。
 そこに歩夢が一本の剣を持ってやって来る。
「雪切さん、これなんかどうかな。ちょっと休憩がてら中間試験してみようと思ってさ」
 厳しい時間制限があるわけではないが人間には集中力の限界がある。
 気を張って良し悪しを見定めようとすると当然気疲れするわけで、歩夢は無理をせず地道にやっていくために小休止を挟むようだ。
「……これは……ヒヒイロカネか? いや、似ているが違うな。大した逸品だとは思うがどちらかというとレーヴェさんの方が詳しいかな」
「ん、私か? ……ははぁん、なるほど。こいつは良い包丁じゃな」
「は? 包丁!? こんなバカでっかいのが!?」
「そりゃ使う者が大きければ包丁とて大きくなるじゃろ。包丁と刀剣は似ているようで構成がまるで違う……善し悪しは別としてな。いい機会じゃから覚えておけい」
「なんだよー、伝説の包丁とか見つけてもサマにならないだろー!?」
 情けない声を上げる歩夢に咎人たちの苦笑いが起きる。
 結局日没まで粘っても目ぼしい武器は見つけられなかったので、今回は楽しかったという思い出を胸に解散となった。
 望む者は自ら発見した武器を持ち帰り記念品にしたという。
「えへへ……結果は残念だったけど今日はすごく楽しかったよ。探すのは止めないけど、伝説の武器に頼ろうとするのは是正するね!」
「それがいい。何なら今からでも私が鍛えてやるぞ? 一週間で勇者になれるスペシャルハードコースでいいか?」
「あ、遠慮しときまぁす」
 フリッツから逃げるようにダッシュするカグヤに苦笑いしながら、咎人たちも浮島を後にするのだった。
 ……と。
「フィリアお姉さん? どうかしました?」
「帰りにみんなで……ご飯食べて帰りましょうー」
「……あ、はい。そうですね。きっと見間違いです。えぇ、きっと」
『?』
 愛想笑いを浮かべて歩き出すフィリアに疑問符を浮かべる氷雨と小山内。
 フィリアはそれ以上振り向くことなく、他のメンバーたちと合流する。
(……あれは……あの刀は累様の……。……いえ、きっと似ていただけです。だって累様の手には、今もあの刀が握られているのですから……)
 浮島で見つけた見慣れた刀。
 ボロボロに朽ち果て崩れ去る時を待つばかりの死に体の刀。
 どうしてそんなものが武器の墓場にあったのか……本当に似ていただけだったのか。
 フィリアは唯一人、この浮島の本当の恐ろしさを感じていたのだった―――

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