死の淵を駆ける:リベンジ
三田村 薫
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シナリオ形態
イベント
難易度
Hard
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
50SC
参加人数
10人~24人
優先抽選
50SC
報酬
100 EXP
2500 GOLD
5 FAVOR
相談期間
5日
抽選締切
2021/09/22 10:30
プレイング締切
2021/09/27 10:30
リプレイ完成予定
2021/10/13
関連シナリオ
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ

「……初戦と、訓練と。……報告書は、熟読しましたが……成程、あれは……強敵、ですね……」
 氷鏡 六花(ma0360)はオリーヴィアを見て呟いた。
「回避を、封じられるのは……洗霊巫女には、致命的……なのですが。……封じられると、分かっていれば……やりようは、あり……ます」
 影牙の装いを纏う。
「……追撃を恐れる理由。察するに……打たれ弱い、のでしょうか。移動と攻撃と回避に、特化した強さ……のように、見受けます」
「あの簒奪者か……前回は皆のおかげで防ぎきれたが今回はどうか」
 前回遭遇時に九連撃を受けて危うく死にかけた高柳 京四郎(ma0078)が呟いた。ケイウス(ma0700)も肯き、
「前は誰も倒されなければ良いって思ってた。でも、今日はもう一歩勝ちたいってはっきり思う、負けっぱなしじゃいられないよね! エリオとメダルドも、他のみんなも、やる気十分みたいだし!」
「押し切られる前に攻め切りましょう」
 火存 歌女(ma0388)が腕に青い炎を浮かび上がらせながら、顎を引いて敵を見据えた。
「特訓の成果、見せるよ! 瑠璃ちゃん!」
「美夕お姉ちゃん、ダミーで練習した成果本番がんばろうですよ」
 鳳・美夕(ma0726)と瑠璃香(ma0653)も、先日参加した訓練の成果を見せようと誓い合う。
「オリーヴお姉ちゃん初見ですが復習戦させて貰うですよ」
「うぉぉ……やっぱ、オリーヴィアの姉ちゃんスゲェな……」
 鐵夜行(ma0206)が歌女の後ろに隠れながらまじまじと敵を見た。歩夢(ma0694)も、
「おおう、なんだかおっかねえ姉ちゃんだな」
 相手の気迫には何か感じる物があったらしい。
「女の子を殴るのは気がひけるけど、簒奪者なら遠慮できねえな」
「オリーヴィアさん……」
 リナリア・レンギン(ma0974)が真っ直ぐに相手の顔を見た。
「騎士さん達を殺され、仲間を殺され……悔しい、です……貴女の犠牲になった人達の無念は、晴らしたい……」
 オリーヴィアは反論せずに聞いている。
「でも、CJさんが大切にする貴女を傷つける事に抵抗感もあります」
「そう……あなた優しいのね。でも、わたくしはあなたに優しくできません」
「はい……けど、これからも殺戮を続けるのなら、見過ごせない……です……私は、この世界の人達を、助けたい、から……何度でも、挑みます……」
「先日ぶりだな。もう十分殺しただろう、お前?」
 ザウラク=L・M・A(ma0640)が一歩前に出た。彼もまた、ちらりと向こうに飛ぶグリフォンを見ている。要らない横槍を。
「わたくしは簒奪者。滅びの尖兵。殺戮に終わりはありません。終われません。邪神が望む限り、わたくしが臨む限り」
「いや何。次はお前が死に戻る番だ、というだけの話だ……。お前、何人『欠け』させた?同じことを、お前にしよう」
「よろしい。その言葉を悔いませぬように」
「あんまり無理すんなよ! メンカル!」
 エレメンタルソードを抜きながら歩夢が声を掛ける。
 戦いの火蓋が切って落とされた。


「先日の訓練の成果、お見せいたしましょう。昇華を使います! 発動したら一気に包囲をっ」
 川澄 静(ma0164)はマジックドレインをオリーヴィアに撃ち込みながら周りに伝えた。咎人とにとって脅威だった蒐集衆を倒せる事を証明してみせる。その一撃がシールドを割ったのを見届けると、五色のコンペイトウから目当ての一粒を摘まんで口に放り込んだ。加護を得る。斬撃に対する耐性を。すかさず昇華することによって、結界を展開する。この中にいれば斬撃に対する耐性を得られる結界を。
「この前は結局俺を殺しきれなかったな……追い掛けきれず逃したって事になるんじゃないのか、それは。今ならまた目の前にいるぞ? 今度は俺の首を取れるか……やってみるか? オリーヴィアよ」
 京四郎は黎明に綻ぶ蕾を発動させていた。これによって、結界外にいるオリーヴィアを包囲するために昇華領域から出た咎人たちもダメージ軽減が可能になる。オリーヴィアはその挑発に目を細めた。
「そうですね。一度お前の首は取らなくてはなりませんね」
 ケイウスのフリーズが飛ぶ。呪詛が効果を発揮したようだった。メダルドがすかさず慈悲なき審判で追い討ちを掛けた。オリーヴィアがこちらを睨む。その時、自分に向かう軽やかな足音を聞いて、彼女はそちらを向いた。速攻を発動した歌女が殴り掛かってきたのだ。ヒッティングによる回避妨害攻撃! 鋭い拳が飛んでくる!
「!」
 オリーヴィアは咄嗟に鎌を前に出してそれを受け流す。柄が高い威力にたわんだ。歌女はすぐに腕を引き、
「もう一発、おまけです」
「心で感じなさい! 歌女と瑠璃香の連携の凄さを!」
 瑠璃香も歌女の打撃に合わせて、トライアンフの槍を繰り出し、コンビネーションを見せる。
「あっ、うため……」
 歌女の後ろに隠れていた夜行は、彼女が前に出てしまって六花の後ろに隠れた。六花は少し笑い、
「川澄さんの昇華領域内であれば……恐れることは何もないと……そう思います……」
 その彼女の後ろから、夜行は逢魔灯を振りかざして魔法攻撃を仕掛ける。六花も、装いで威力を維持した魔法攻撃を立て続けに放った。
「そこまでよ、オリーヴィア。私達が貴女のデットエンド」
 美夕の星華凍幻、光纏う氷の刃が簒奪者を突き刺した。歩夢が美夕の攻撃に合わせてエレメンタルソードを投擲。土のイデアを纏ったそれを、オリーヴィアが大鎌で捌く。ザウラクも蛇腹刀を伸ばし、叩くように斬りつけた。
 リナリアは決意を固めた表情で杖を握りしめていた。その装飾が光を纏う。マスタリーアーツ、そしてクロスオーバー。強烈な精度と威力を誇るイデアが、オリーヴィアに向かって光速と見紛う勢いで飛んで行った。
「きゃっ!」
 流石にこの勢いにはオリーヴィアも怯んだらしい。リナリアを見て眉間に皺を寄せている。少女たちの間で切り結ばれる一触即発の視線。
「おーほっほっほっ、御免あそばせ」
 それに横から割り込む声があった。アナルデール・ウンディーニ(ma0116)その人だ。
「親愛を込めてアナと呼んでくださいまし」
「? ご丁寧に……?」
「あなた、回避を許さない攻撃を使うようですけど、わたくし回避タンクでしてよ」
「そう……」
 オリーヴィアは馬でアナルデールに近寄ると、大鎌を振るった。横一線に凪ぐ、回避を許さない攻撃……!
「そうはさせるか!」
 京四郎が相手の威力を相殺する魔力を放つ。大鎌とイデアがぶつかった。オリーヴィアの眉間に皺が寄る。咎人が大鎌を押さえ込もうとしたのは、力尽くで抵抗した。アナルデールだけかと思って、近くにいたメダルドに一発斬撃を浴びせる。京四郎が再び相殺した。
「ギャッ!?」
 驚いたメダルドが悲鳴を上げる。しかし、やはり威力が出ない。オリーヴィアは表情を強ばらせると……馬を方向転換させて離脱した。包囲は勢いで突破する。
「あー、やっぱり通せんぼは効かないようだね」
 エリオが唸った。ケイウスが頭を抱え、
「また……! いや落ち着いて、前は確か……!」
 恐らく、神威を使えるキャパシティが三回分くらいある。アナルデールに一回、メダルドに一回、逃走に一回……。チャージするのが大体行動一巡分だとすると、戻って来るのは……。
「まだ時間ある! 応戦の準備しよう! 京四郎、スキルチャージある?」
「ああ、今のうちにチャージを始めておくか」
「あと、一旦昇華の中に戻って……!」
 ケイウスの助言に従って全員が昇華領域に戻る。彼が予想した通りの頃合いで、オリーヴィアは戻って来た。今度はザウラクが黎明に綻ぶ蕾を用意している。彼の分は、歩夢がリクエストするそうだ。
「思ったより行けるか?」
 京四郎が目を瞬かせる。歌女もこっくりと肯いて、こちらに真っ直ぐ突っ込んで来る騎手を見る。
「あとは向こうの出方ですね」
 オリーヴィアが到着した。大鎌を振るい、咎人を根こそぎ狩り取ろうとする凶悪な攻撃を放つ。とは言え、昇華領域内で放たれたそれは、咎人たちに傷一つ付けること能わず。
「……!?」
「……追って来んのか? 今度こそ俺を殺してみろ!」
 ザウラクが挑発するが、攻撃が通じにくいこと三度と言う現実を前に突撃するほど、オリーヴィアも愚かではない。渋い顔をして距離を取っている。


 咎人たちが再びオリーヴィアを包囲し攻防は続いた。黎明に綻ぶ蕾の効果で、咎人たちはほぼ無傷のまま、オリーヴィアにだけダメージが溜まっている。離脱防止にケイウスが上空から飛びついてエンゲージを仕掛けるが、オリーヴィアは少年の身体を、振り回すようにして放り出した。
「うわっ!」
 すぐに背を向けて離脱する。昇華が切れるのもそろそろだ。戻って来てまた大鎌を振るうも、相変わらず効果のない斬撃に簒奪者が困っていると、静が元の姿になる。マジックドレインを撃ち込み、オリーヴィアのシールドを割った。美夕がすかさずキルドライブ。リナリアも同じ攻撃でダメージを重ねた。
「歌女、上、上よ! 下よ、下よ! 左右、左右、パンチ、キックですよ」
 瑠璃香がチアリーディングで歌女の行動回数を増やす。歌女は増えた手番で腰の入ったパンチを繰り出した。
「ダミーとは違うのは判断する力……ならば思考力を奪います!」
 マジックポッドで魔力を補助しながら、支配者の楔を呼び出した。まだ発動まで時間が掛かる。その間に、咎人たちはオリーヴィアを離脱させぬようにと猛攻を仕掛けた。だが、オリーヴィアも、離脱してチャージしても効かなければ意味がないと思っている。
 アナルデールが封印の小太刀を突き刺す。その一撃で馬が消えた。封印効果も通じているらしい。もっと小刻みに移動していたのが、目に見えて遅くなった。馬を失っただけではなさそうだ。
 ザウラクが蛇腹刀で斬り掛かる。オリーヴィアが反撃するが、やはり効果が低い。その時、静が支配者の楔を撃ち込もうとして……そのイデアが崩れた。不発だ。
「必死だね。怯えてるみたいよ? オリーヴィア」
 歩夢のエレメンタルソードと同時に手刀を叩き込む美夕が言葉を投げかけた。その言葉に簒奪者は目に見えて狼狽える。
(殺意をむけてくるのだから怒りはあるでしょう)
 美夕はずっと疑問だった。追いつかれる事、追い縋る事への執念や執着について。これだけ強く速いのにまるで何かに怯えている様で……。どうやら、反応を見るに図星だったようだ。簒奪者は反論しない。
「正直だね」
 オリーヴィアの本質にあるのは、「怯え」なのだろう。この攻撃力は「自分にとって危険なものを排除する」、つまり「身を守る」ためのものが極端になったもの。ゆえに、「自分の力で排除できない」「弱った自分に追い討ちを掛ける存在」が怖いのだ。
 夜行が呪縛の一針を突き刺す。剛力種の巫女はその場から離れると踊り狂う影を呼び出して隠せる位置に移動した。先日は本人に見せ掛けた偽物を追わせた。今度は逆に、トークンに見せ掛けて本物で攻撃し、逆に本物に見えるトークンを攻撃させる。影の飛散で回避能力を奪ってしまえ。


 静は再び支配者の楔を詠唱していた。マジックポッドの魔力はまだ残っている。これで知性を下げれば、戦略的な判断ができなくなると静は踏んでいた。
「今度こそ……!」
 再び、発動。今度はしっかりと形を保った楔が、簒奪者に突き刺さった。知性封印が入り、六花が慈悲なき審判で追撃。
「汝の運命、我が掌中にあり、知性無き夢を永久に! 再演された不運」
 瑠璃香がオリーヴィアに施された封印を一度解き、更に強度を増してかけ直す。
「……待って、何か、変だよ」
 ケイウスが声を掛けた。確かに、オリーヴィアの様子がおかしい。彼女は鎌を取り落とすと、そのまま踵を返して走り出した。包囲は知性が落ちても変わらない足で突破する。それを見て、魔族集団を率いていたCJがその場から離脱し、グリフォンで後を追った。それでもオリーヴィアの方が速いようだ。
「逃げ……ましたね……」
 六花が呟いた。

 虫並みと言われる「知性1」というのは本能に従う、と天獄界では定義されているが、本能と言うことは「生存」、つまり「身の安全を図る」方向に判断のウェイトが置かれることになると考えられる。
 そして、美夕が指摘するように、オリーヴィアの攻撃力が「怯え」に起因するものであれば、恐らく簒奪者になる前の、素の彼女には戦う能力がない。知性があるから自分が戦えると自覚できていたのかもしれない。思い起こせば、初回に遭遇した際、なかなか倒れない咎人たちを前に不利を悟って自分から逃げてもいた。
 簒奪者が全員そうだ、と言うわけではないだろうが、オリーヴィアに限って言えば逃げ出すタイプの野性であると見られる。

「まあ、それがわかっただけでも収穫ではないかね。多くはわかっていない相手なわけだし。それに、あの傷では、彼女が本拠地に戻るのが先か、体力が尽きて死ぬのが先か、と言ったところだろう。一発目の楔が不発じゃなかったらと思うとちょっと怖いね」
 淡々と紡がれるエリオの言葉を裏付けるように、程なくしてオリーヴィアが置いて行った大鎌が光の粒になって消えた。予想より早かった事から、死亡したものと見られる。
「今ひとつ実感は湧きませんが、倒せたようですね」
 歌女が息を吐く。
「想定通りではなかったがね。さ、帰ろう。守護神に報告せねば」
 向こうの魔族も粗方片付いた様だ。撤収を始める頃合いだろう。


「もしもし、アラタ? 僕だよ。あのね、オリーヴが死んだよ」

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