柊木佳南と、SGP分隊の『捕虜』生活
柏木雄馬
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シナリオ形態
ショート
難易度
Normal
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
100SC
参加人数
4人~8人
優先抽選
50SC
報酬
200 EXP
5000 GOLD
10 FAVOR
相談期間
4日
抽選締切
2021/12/05 10:30
プレイング締切
2021/12/09 10:30
リプレイ完成予定
2021/12/20
関連シナリオ
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
 『常夜』内、某市街地大通り── 各地の避難所へ物資を運ぶ輸送隊の前方で、護衛の咎人たちが進路上にうろつく『ミニオンもどき』と戦闘状態に突入した。
「まずは安全確保のお仕事です。学舎や病院の周りは比較的念入りに安全な場所にしておかないと」
 SGP精鋭分隊の超能力者たちに笑顔で『業務内容』を説明しつつ、敵へと駆け出す氷雨 累(ma0467)。高柳 京四郎(ma0078)と小山内・小鳥(ma0062)の2人も彼と同時に前に出る。
 その接近に気付いた敵が転回し、一斉に射撃を浴びせ掛ける。累はその銃弾の雨を掻い潜りつつ更に敵との距離を詰め……そのまま敵正面に飛び込みながら強打を叩きつけ、『突撃銃付きのレジスター』を粉砕。小鳥もまた更に加速しながら自分の気配を『霧散』させ…… 不意に目標を見失って右往左往するミニオンもどきたちの只中にゆらりと現れ、背後から『デスクトップパソコンと分隊支援火器を乗せた荷車』へ一撃を加えて撃破。一方、京四郎は得物にオーラを纏わせながら、うろちょろと高速で動き回る『モバイルノートとPDWを乗せたスケボ』の中へと飛び込み、放たれる射撃に対して発光する氷刃を振るって一つ一つ潰していった。
「……ミニオンと比べると、まるでおもちゃだな」
 敵の全滅を確認し、灰燼剣を収めながら呟く京四郎。破壊された敵の電源光が、瞑目するように静かに消える……

 その後、一行は周囲の安全を確認すると、目的地である学校避難所へと辿り着いた。
 物資の搬入作業を手伝うべく迎えに出て来た子供たちが、ワァと歓声を上げた。校庭に運び入れられた物資の量が、いつもの倍はあったからだ。
 今回の補給には、佳南に加えて念動触手使いのチャックも荷運びに加わっていた。更には自己強化能力持ちの4人も荷を満載したトラックをここまで手押しで運んできている。
「やあ、フィリアおねーさん。今回は必需品以外にも色々運べましたよ」
「おかしもおもちゃもあるのですよー!」
 そう言って、出迎えのフィリア・フラテルニテ(ma0193)に目録を渡す累と小鳥。その言葉を聞いて、段ボール箱(小鳥含む)に群がる子供らに向かって、フィリアは「勿論、お勉強道具もたくさんですよ?」と冷や水を浴びせつつ。「さあ、まずは荷運びのお手伝いです」と子羊の群れの如く誘導する……
 搬入作業を終える頃には、ちょうどお昼になっていた。最後に食材の段ボールを給食室へと運んだ小鳥は、そのままお母さん方に交じって調理を手伝うことにした。
「私も料理は得意なのです。お手伝い、一生懸命がんばりますよー……!」
 割烹着姿で気合を入れる小鳥。しかし、フィリアがすかさず釘を刺す。
「ありがとうございます。でも、マグロは使っちゃだめです」
「ッ!?」
「ダメ。禁止。絶対」
 仕方なく小鳥はメニュー通りに給食作りを手伝った。出来上がった料理は至極おいしく出来上がった。
(マグロ料理でさえなければ、ホント上手なんだよなぁ……)
 給食係の子供たちと共に料理を教室に運びながら、累は心底不思議そうに首を捻った。

 配膳が終わると、教室に「いただきます!」の声が響き渡った。その声を聞きながら廊下を懐かしそうに歩いていた京四郎は、ふと音楽室のピアノに目を留め、(……給食と言えば『お昼の放送』だよな)とそちらへ足を向ける。
 ……京四郎が演奏する夜想曲が、静かに校舎内へ流れ始めた。『常夜』以前は聞き慣れたその旋律に、子供たちのおしゃべりも自然と止まる。
 やがて曲が終わると、各教室から拍手が沸き起こった。音楽に誘われてやって来たヘンリッキが「今のは君が?」と意外そうな表情で訊ねてきた。
「俺が昔いた孤児院にはピアノもあったからな……簡単なものなら弾けるんだ」
「そうか……」
 ヘンリッキは頷くと、放置されていたケースからバイオリンを取り出した。そして、簡単に調律を済ませて、訊ねる。
「ピアノ協奏曲は?」
「ああ」
 再び学校に、今度はピアノとバイオリンの合奏が響き渡り、人々は暫しその旋律に聞き入った。
 しかし、人々は夢にも思わないだろう。今、こうして音を合わせる二人が、つい先日、剣を交えた間柄だとは……
「本当、不思議なものですね」
 教室で給食を食べていたフィリアが感慨深げに呟いて。机を合わせた子供たちは彼女を見上げ、きょとんと顔を見合わせた。

 給食後の昼休み── 一人の超能力者が子供たちの人気を博していた。男の名はチャック。彼の持つ念動触手能力は、図らずとも回転ブランコや疑似ジェットコースター、フロッグホッパー等としても、非常に有用だった。
 次から次へと遊びをせがむ子供たちを全力で楽しませに掛かるチャック──その光景を見守りながら、フィリアと小鳥は呟いた。
「本当に不思議なものですね……」
「ええ、『どうせ拘束するなら女の方がずっと良い』とか言ってた人とは思えないですー……」
 二人の呟きに、チャックの方を見てひそひそと眉をひそめる高学年以上の女児たち。だが、まぁ、それはそれとして(←酷)、小鳥は累に話しかける。
「……まあ、分隊の皆さんも、なんだかんだで溶け込んでる感じはしますねー。子供たちも皆(一部を除いて)チャックさんを気に入ってるみたいですし」
「彼も割と子供たちに(一部を除いて)好かれるタイプなんじゃないですかね」
 頷く累の傍ら、居ても立っても居られないといった風に駆け出していった小鳥が、偶々その場に現れたイーヴォを巻き込みつつ、フィリアと共に遊具(ルビ:チャック)で遊ぶ子供たちの元へ走って行った。累はそんな二人(『子供たちにおもちゃ扱いされて、ジェットコースターもどき(超上級者向け)に挑戦させられる小鳥』と、『触手遊具にしり込みしていた低学年の子に「おねーちゃんと一緒なら」と言われて、共に回転ブランコに乗るフィリア』)を笑顔で見守っていたが、ふと、その遊具がチャックの触手であることに気付いてちょっぴり落ち着かない気持ちになった。
 そこへヘンリッキを伴った京四郎が来た。彼らを迎え、累はちょっぴり落ち着けた。
「聞いたか? ヘンリッキは元教師だそうだ」
「へぇ、そうなんですね! 皆さん、ここに残っても、上手くやっていけそうじゃないですか」
 チラチラ小鳥とフィリアの方を見ながら(←『落ち着けた』とは)答えた累は、僅かに表情を暗くしたヘンリッキに気付いて、真剣に訊ね直した。
「……何か悩みでもありますか? 仕事のことですか?」
「……先日、お前たちのリーダーを見舞った時にも訊いたんだが……やっぱり、帰るのか?」
 京四郎も気付いた。二人の問いに、ヘンリッキは苦し気な表情で答える。
「それは……SGPの一員である以上、解放されれば原隊に復帰しないわけにはいかない」
「……なぁ、これはお前たちのリーダーにも言ったことなんだが…… 先日、『常夜』に侵入したSGPの本隊は撤退したが、非能力者に対する超能力者の優位性がある内は再度の侵攻は確実だ、と俺は見ている。……『超能力者』が『超能力者を脅威と思う非能力者』たちの為に戦うってのは、なかなかに皮肉な話だよな。……それでも、お前たちはやっぱり帰るのか?」
 ヘンリッキは答えなかった。素直に自分の想いを口にするには、彼らの置かれた立場は複雑すぎた。
「国籍や立場が違っても、互いに受け入れる意思があれば、今の此処での状況みたいに、交わり、共に在る事は出来る。……それは超能力者でも同じ事だと、俺は思うんだけどな」
 京四郎は立ち上がり……最後に苦笑しつつ、付け加えた。
「……こういう場所でこんなことを言っていると、なんだか青春をやり直しているような気分になるな」


 その後、一行は残りの物資と共に、もう一つの目的地である病院へと移動した。
 再び搬入作業が行われ……それを終えた後、咎人たちは精鋭分隊のリーダーの見舞いに向かうことにした。……分隊の面々は遠慮した。集会は「何事か企んでいるのではないか」という他者の危惧を呼ぶ。それを避ける為だろう。
「こんにちは。お加減は如何かな?」
 透夜(ma0306)が病室の扉を開けると、そこには病床のリーダーと、付き添いのボブと……リーダーの傍らで、貸し出された椅子に座り……見舞いのリンゴを不器用な手つきでうさぎさんにカットしようとしているアナルデール・ウンディーニ(ma0116)がいた。
「ちちちちちち違いますわ! 上手く剥けないのは、普段はシェフに調理を任せているからであって……!」
「……もしかして、毎日、お見舞いに?」
「まままままま毎日ですけど、それが何か?!」
 咎人たちは無言でアナの肩をポンと叩いた。そして、何事も無かったようにリーダーへの見舞いに戻った。
「隊長さんが無事で……本当によかったですー……」
「順調に回復しているようで何よりです。開腹だけに(何 ……折角、不殺の決闘という形で決着をつけたんです。最後までちゃんと無事でいてくれなければ困ります」
 心底、ホッとした様に告げる小鳥に続いて、冗談めかした口調で、累。フィリアも本当に無事でよかった、と頷いた。もし、死者が出てしまっていたら、現状のような『穏便な着地』も難しかったに違いない。
「あんな酷い状態から命を拾うとはね。まさにどんな力も使い様ってことだね」
 透夜はリーダー被弾後の素早い対応に感心を示すと、それを為したボブへと話を向けた。
「まさか元外科医とはね。ここでの手術を手伝っているんだって? すごく助かっていると聞いているよ」
「……ああ」
「でも、驚いただろう? 設備はあっても人が足りない。薬も、消耗品も、何もかも……これが『常夜』の中の実態さ。『煉獄』は民間組織だからね。援助にも限界がある」
 そう言うと、透夜は真剣な表情で自身の手をジッと見つめた。
「咎人の神威は戦闘寄りのものが多くてね。考えさせられるところがある。……君たちの超能力は色々なことに使える。災害救助や復興現場……まさにこの『常夜』に必要とされている能力だ」
「……」
 一方、そんな二人を余所に、小鳥はお見舞いに持って来た果物寄せ集めをリーダーの前にでーんと置いた。……マグロの刺身を持ち込むことはフィリアと累に止められたけど……まあ、病院食は栄養価とか色々あるだろうから仕方ない(←そういうことではない
「……そう言えば、怪我が治ったらどうするのー?」
 果物をナイフで剥き剥きしつつ、小鳥が何気ない感じで訊ねる。その小鳥の技術を盗まんとアナがリンゴで実践するも、なぜか全てウサギではなくジャガイモみたいになってしまう。
「そうだなぁ……僕個人の話で言えば、やはり、隊長として部下たちを無事に帰還させないと」
 リーダーも茶飲み話につき合うような感じで答えた。それを聞いたボブがチラと隊長の方へ視線を向けた事に透夜は気付いたが、そのまま素知らぬふりをする。
「……なんていうか、あれですね。隊長さんは、分隊の母ポジションなんですね」
 累が感想を口にすると、言い得て妙、とリーダーは笑った。
「でも、どちらかと言えば、父親の立場の方が近いかな? 隊の母ポジションは、むしろボブさ」
「それは……光栄であります」
 中々に複雑な表情で苦笑を返すボブ。一方、帰るという答えを聞いた京四郎は「やはりか」と呟いて。その決断を翻意させる、或いはそのきっかけになるであろう話題を切り出した。
「でも、お前さんの部下たちは、色々と悩んでいる様子だったぞ?」
 どういうことだ、と訊ねるリーダーに、累、フィリア、小鳥の三人は顔を見合わせ……学校で見たチャーリーやイーヴォ、ヘンリッキの様子を話して聞かせた。
「……そうか。このままSGPを抜けるべきか──まさかそこまで悩んでいたのか」
「この『常夜』の中にいる人たちは、超能力があろうがなかろうが、懸命に、理不尽に屈せず生きている人たちだ。彼らと交流する内に、君の部下たちも軍人とは違う何かを感じてくれたのかもしれない」
 透夜の言葉に、リーダーはなるほど、と頷いた。ボブも、もう隠す意味はない、と、己が画策していた事をあっさりと白状した。
「申し訳ありません。体調が回復するまでは、とお伝えしませんでした」
「いや、僕の方こそすまない。色々と心労を掛けてしまったな」
 部下たちに話を聞かなければな──そう告げたリーダーに、リンゴをジャガイモに変える作業()の手を止めたアナが手を挙げた。
「それならば、その為の機会を設けましょう。皆様の身の振り方の相談くらいは乗りますわ」


 かくして、リーダーの体調の回復を待って、病院の一室を借り受け、話し合いが行われることになった。
 集められた隊員たちは動揺した。この日は、ボブに「その日までに考えを纏めておいてくれ」と言われた『その日』の前日であり、しかも、リーダーとチャック、咎人たちもその場にいたからだ。
(どういうことです?!)
 隊員たちは視線でボブに問うた。
「すまん。バレた」
「!!!???」
 その衝撃が収まらぬ内に、リーダーが皆に席に着くよう命じ、話し合いが始まった。
 冒頭。京四郎が、先日、リーダーやヘンリッキに語った内容を改めて皆に語り、「それでも帰るのか?」と問い掛けた。
「どういう決断をするにしろ……その意思は尊重しますよー。こちらに害をなさない限りは、ですけど! ……ただ、こちらに残るのなら、きっと子供たちは喜ぶだろうなー、なんて(チラ」
 小鳥の発言に続いて、リーダーが各人の意思を訊ねる。
 最初に発言を求めたのは、エフモントとガエルだった。彼らは国への帰還を望んだ。国に家族がいる故に。
「ぼ、いえ、私は……命令に従います。個人的に思うところはありますが、SGPの一員ですから」
 誠実で生真面目であるが故に、自身の内心を押し殺してそう表明するイーヴォ。一方、ドナトは周囲の顔色を窺い、己の意思を決めようとする。
「他人に流されるのはお勧めしませんわよ。自身の身の振り方はよくよく考えることですわ」
「……!」
 アナに指摘されたドナトは、驚きに目を見開いた。しかし、彼はそれでも自分の考えを言わず、「……保留で」と呟くだけだった。
「前も言った通り、私はSGPを抜けて、このままここに残ってもいいと思っている」
 ヘンリッキは残留を希望した。ここなら改めて教師として生きていくことができる。超能力者だと石を投げる同僚も生徒もいない。
「……そうだな。それは魅力的だ。とても……」
 元医師のボブもその点に関しては首肯した。しかし、同時に、自分たちはSGPの一員であり、同じ超能力者の仲間たちを裏切るわけにはいかないこと。そして、帰還する為には何らかの戦果が必要と告げた。
「俺もここに残る。国に帰ったって碌なもんじゃねぇしな」
 この『常夜』で自分の居場所を見つけたチャックはヘンリッキに同調した。
「帰りたいやつは帰ればいい。ただし、その『戦果』として佳南を連れて行くっていうなら反対だ。なんていうか……そいつはクソダセェだろ」
 全員の意見を聞き終えたリーダーも、そのチャックの意見に賛成だと意思を述べた。
「帰る時には、俺が隊長として皆を国に連れ帰る。『戦果』が無い点に関しては、俺が全ての責任を負う」
「それは……!」
 椅子を蹴立てて立ち上がるボブ。と、そのタイミングで累がひょいと手を挙げて、質問がある、と呼びかけた。
「戦った感じ、皆さん、優秀な部隊のようでしたし、これまで多くの戦果を挙げてこられたのでしょう? 今回一回くらい失敗したってバチは当たらないのでは?」
「私も軍とか軍人さんの立場とかはさっぱり分からないのですが、戦果なしでの帰還はそんなに問題になるのですか? 人材を消費せず、『常夜』の情報を入手したのですから、多少は大丈夫な気もしますが……」
 累と、それに続いたフィリアの質問に、リーダーは自嘲するように苦笑し、答えた。
「うちのボスは……まあ、出来た人だ。何を考えているのか分かり難いがね。だが、もっと上の方の……非能力者の上役たちも、そうであるとは限らない」
 リーダーは言う。彼ら精鋭分隊の失敗が、SGP自体の評価を地に落とす可能性もなくはない。引いてはそれが、母国の超能力者の地位を著しく下げることだって……
「SGPは家、隊員は家族、ですか……居場所って大事ですものね。特に特異な能力を持っておりますと」
 実感を伴い、呟くフィリア。一方、京四郎は冷静にツッコミを入れる。
「でも、この前、SGPの本隊も『失敗』したよな? なんか今更なんじゃないか?」
「……」
 隊員たちは沈黙した。……そうだ。情勢は混沌としている。いったい、これからどうなるのか……互いに目配せするが、勿論、そこに答えは無い。
「い、今は答えを保留して……情勢の変化を待ってから、決めるのも良いかも、ですね。後で後悔しないように……」
「そ、そうだね。特異点である鎖神をどうにかした場合、超能力が消えるのか残るのかもわからないからね……常夜がどう進むのか、それを見てから判断しても遅くはないさ」
 息苦しい沈黙に、昨今の状況を鑑みて判断の延期を勧める累と透夜。一方、アナは隊員全員の帰還を主張した。
「自らの失敗を糊塗する為にMIA(任務中行方不明)なんて……恥ずべき行為ですわ。私はいつだって絞首台にも断頭台にも上がる覚悟はありますわ!」
 アナは言う。今回、SGPが敗退(と敢えて言う)したからこそ、『彼ら』も聞く耳を持つかもしれない、と。SGP(を操るバックの者たち)には今回の事を教訓に、奪うのではなく、別のアプローチを取ってもらいたいのだ。その為にも、体験者たる精鋭分隊の生の声──その説得力は重要なものとなろう。
「でも……アナさんはそれでいいの? リーダーさんが帰っちゃても?」
「……」
 小鳥の問いにアナは一瞬、沈黙した。
 ……これまでの転生において、アナには好敵手がいなかった。他人と競い合って死ぬという結末はなく、概ね孤独な生を送り続けて来た。だから、部隊単位とはいえ、この世界における3度の戦いでほぼ互角という実力を示したリーダーに対して、彼女は常とは違う親近感を抱いていた。立場が違えば、それは初恋と呼べるものになっていたかもしれない。
 だが……
「何を言っておりますの、小鳥さん。好敵手だからこそ、みっともない真似はしてほしくないのです」
 そう胸を張るアナの姿は凛として──その姿に、リーダーや隊員たちはおお……と感嘆の声を上げた。
「……参ったな。アナと佳南、俺はどっちを嫁にすればいい?」
「待て。そも佳南は君の嫁ではない」
 それまでの緊張感もどこへやら。一気に下世話な話題で盛り上がり始める面々。その発端となったアナは突然の展開に驚きながら、聞く耳を持たない面々に向かって叫んだ。
「ちょ……咎人の立場で一般人に懸想する程、私は落ちぶれてはいないのですわー!」


 かくして、話し合いは終わった。結論としては現状維持。今後の状況の変化に合わせて、改めて今後の身の振り方を決定する。
 ただし、エフモントとガエルの二人については、撤退したSGP本隊へ帰還することとなった。同時に、彼らには残る隊員たちの状況を報告してもらい、あくまで脱走兵ではない旨、伝えてもらうこととした。
「一旦祖国に帰って、駄目だったらまた『常夜』に戻って来ても良いですしね。ここは皆様お優しいですし、人手は常に足りません」
「ああ、復興支援、大いに結構じゃないか。軍人は国民を守るものだろう?」
 フィリアと透夜はそう言って話し合いの締めとした。
「まぁ、何と言いますか……どのような結論であっても、きっと良い方向に向かっていきますよ。リーダーが生きて……誰も死なずに決着となった。それも吉兆の前触れだと私は信じます」

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