●
「懐かしい空気だね。あぁ、混沌と混ざりあった馴染み深い空気だ」
「なるほど。ある意味とても馴染む場所ではありますが困りましたね。人の命がだいぶ軽くて人によっては居心地が悪いかもしれませんね」
七掛 双儀(ma0038)と七掛 二夜(ma0071)の二人は、生前も荒事に従事していたようで、オルメタの空気には馴染むものがあるらしい。二夜は双儀を見て、
(ふむ、無頼漢には居心地のいい世界なんでしょうか?)
首を傾げた。
(おっ、新種のグスター属だ。ぐっさん+ぐっ様÷2って感じかな)
別世界のグスターヴァスを知るユーグヴェル・ミラ(ma0623)は、司祭を見て内心でそんな予想を立てていた。常識的だが厳格でもなさそうだ。
「その心意気に感服しました。グスターヴァスさまをお守ります!」
川澄 静(ma0164)は、司祭の言葉に感銘を受けたらしく、協力を申し出た。
(この世界のグスターヴァスさまは聖樹界の彼に近いです?)
同じく、常識的で信心深い、と言う面から彼女もこっそりそんなことを考えている。
「……グスターヴァスさんは、何処の世界でも、グスターヴァスさん……なのですね」
祈祷師のビギナーとして参戦している氷鏡 六花(ma0360)も、やはり自分の知るグスターヴァスの面影を見ているようだ。きょとんとする彼には、
「……いえ、戯言と、聞き流してくださって……結構です。今は……目の前の敵に、全力を……尽くしましょう」
(グスターヴァスさん……この世界でも司祭さん、なのですね……聖樹界さんの司祭さんより、まだお若い……のかな……?)
リナリア・レンギン(ma0974)もひっそりと司祭の様子を見ていた。
「こ、こんにちは……司祭さん…宜しければ、お手伝いさせて下さい……」
「皆さんお優しい……神の戦士とはかくあるべきですね。私もその気遣いに学ばなくては」
司祭の方はやたらと協力的な咎人たちに感激しているようだった。
「……キメラさん……おっきい……。最近、大きい敵さんが多いかも………頑張って、援護、します……」
リナリアは神杖を握り締めた。
「じゃも……じゃも……」
唯塚 あまぎ(ma0059)のパジャモ幼体は、興味津々で見つめていたキメラに睨まれて、震え上がった。主人の足にぴったりくっついている。
「……いつもの元気はどこへ」
「私は、ルナの前で力を尽くすね……。後ろは、お願い……」
「魅朱嬢、気遣い感謝する。貴女の足を引っ張らぬようにせねばな。グスターヴァス殿、貴台には確りと加護を受けてもらおうか」
ルナール・レルム(ma0312)が先制ノ書を開いた。機先は咎人が制し、魅朱(ma0599)はキメラが吼えるよりも先に強撃薬を飲む。
「頭がライオン、尻尾が蛇、胴が山羊ってバケモンいるんだ……」
鐘田 将太郎(ma1159)は囮役をするという咎人にシールドアップⅡを施した。あまぎはウィンドエフェクトでパジャモに風を送らせる。
「シールド強化はできませんが、防御支援はできますので。カウント中は行動できませんので、その間のガードは任せます」
更級 暁斗(ma0383)は護法陣を敷こうとしていた。
星空の幻(ma1259)はロックオンを掛けていた。サイズ差で強度は落ちるものの、元から強度の高いそれは上手く敵に効いたようだ。
「今日はメンターお姉さんのリコリコが、司祭様を守ってみせるのだ。ちっこくてもそれくらいはできるのだ!! 見ててほしいのだ……!」
リコリコ(ma0309)はそう宣言するや、司祭の傍にくっついた。本当に守護霊の様である。グスターヴァスは、ぬいぐるみみたいなサイズの咎人に驚いていたが、拒否はしなかった。直後に咆哮が轟いた。周囲にいた咎人の威力が僅かに衰える。
神降ろしの舞をしていたリナリアが、琥珀石の守護を周囲へ分け与える。誇大する幻想の静には、今は効果がないが、幻想が解除されればその恩恵が受けられるだろう。
「戦いで大事なのは気迫とタイミング、行こう! 切り裂け風よ!」
地を駆けるものとなった風花雪乃(ma0597)は、トルマリンショックⅡを叩き込む。ダメージは入ったが、動きを制限する電撃の力は、敵のサイズが大きいこともあって減衰されており、抵抗されてしまった。
「足が速いか。だがそれがどうした? 基本を知れば何のことはない。やるべきことはただ一つ、『寄らば斬る』のみだ」
続いて、伊吹 瑠那(ma0278)が星華凍幻を試みるが、こちらも同じだった。トルマリンショックⅡよりは強度は高いものの、やはりサイズ差が響いている。
立て続けに回避半減が失敗したのを受けて、魅朱が駆け出した。
「この顔ぶれなら、微々たる威力かもしれないけれど……防げるものは防いでおいて……損はないよね……」
蒐姫は鞘に納めたまま。封印の小太刀を素早く抜き、キメラの胴体に突き刺した。元より攻撃力の高いメガロリストのこと。十分な威力が入る。だが、それは本命ではない、強化された封印の力が、キメラの咆哮を封じた。驚愕と苦痛の雄叫びが上がる。
「蛇の尾も首の勘定に入れれば、首が二つか。どちらも確実に落とす。正体はわからんが……市民に被害が出る前に討つ! 私に来い! 仲間に手だしはさせん!」
強撃薬でより気迫を増した羽鳴 雪花(ma0345)が挑発を行なう。キメラはまんまとそれに乗った。獅子の顔も、尾の蛇も彼女を睨む。
「前衛的にはビギナーもいいトコなのだよね……ゾクゾクしちゃうなぁ」
同じく、丸薬によって魔法の強度を高めたユーグヴェルが、ファントムハンドでその巨体を引き寄せた。獣のかぶり物とライオンが鼻面を付き合わせている。幻影の手がキメラを殴ると、敵はその体勢を崩した。瑠那の刹那の一陣が叩き込まれる。
「さっさとくたばってくれねぇ?」
降神飛行で飛んでいたアストレイト・ヴォルフ(ma0258)が、カスタマイズした愛銃から狙撃した。命中を確認してクイックショット。
「貴様の機動力も、この健脚故だろう? 傷つくのはさぞ嫌だろうな?」
ルナールが踏み込み、その足を狙って慈悲ナキ眠からダイヤモンドアタックを叩き込んだ。漆黒の斧が輝くオーラを纏い、足を穿つ。キメラは彼を睨み、黄金の瞳から威圧を受けた。
「見事に怪物のようだが、この世界はこれが普通でよかったのだよね」
快宝薬を飲んだ双儀が、どこか機嫌良く、二振りのグラディウスを振るう。そこへ、二夜のスタンシュートが飛んだ。こちらも強撃薬で強化されており、敵の動きを封じた。既に、キメラの行動はかなり制限されている。
「ふぅ。強襲への備えだけはしっかりとしておきましょうか」
「流石、二夜ちゃん。良い精度だ。可能なら畳み掛けたいものだけど」
「……闇掟界の精霊達よ……同じく精霊たる我が身に……しばし力を貸してください」
地を駆けるもの、そして、キメラの咆哮を受けて吼え狂うものと化した六花。纏う瘴気が一段と濃くなったように見える。征伐者の指輪を嵌めた細い指先。そこから氷の槍が作り出され、強烈な一撃となってキメラに突き刺さった。
「そこ……狙い時なの……!」
星空の幻はアドバンスファイアを構えた。ロックオンの射程を考慮して位置取ると、上手いこと咆哮から外れ、かつ仲間の支援がギリギリ届くような所を確保できていた。ロックオンは一対一で輝く能力。それが効いている内に。狙撃で狙いを付け、引き金を引いた。大きな敵には狙いが付けやすい。ルナールと睨み合っている獅子の顔面を狙った。上がりに上がった命中が敵の回避を穿ち、ダメージを与える。上昇させるステータスをピンポイントで選んでおり、手段の限られているビギナーとして大きな成果を上げている。
あまぎはその間に、ウィンドエフェクトの効果で空に上がっていた。
「流石に上にはキメラも来られないだろう。ほら、はじめるぞ」
「じゃも!」
キメラから距離を取って、パジャモ幼体は元気を取り戻したようだ。
「……切り替え早すぎじゃないか?」
「あ……パジャモちゃん……がんばれー……」
魅朱が地上から手を振った。
「じゃもっ!」
快癒の陣を準備しながら、将太郎は鱗薙で斬り掛かった。開いた鉄扇が炎の光を帯びていく。
「前衛でガンガン攻め込んでみるか。たまにはこういうのもいい。俺、いままでこんなに攻め込んだことなかったなあ……」
キメラは移動ができない原因がユーグヴェルにあること自体は察したらしい。彼に向かって噛み付いてくる。雪花が割り込もうとしたが、
「おっと、大丈夫そうだよ」
斧で受け流す。
「避け損ねたら助けて」
「承知した」
ユーグヴェルに攻撃が通らないとなると、向こうが八つ当たり敵に狙ってくるのは、挑発を掛けている雪花になる。尾の蛇が彼女に噛み付いた。
「毒や咆哮で止まる防人だと思うなよ! 首を置いていけ!」
「よしよし、では先手を取らせてもらおうかな」
双儀が先制ノ書を開き、目配せする。暁斗の護法陣が発動した。強撃薬を飲んだリナリアが、咆哮もままならないキメラにすかさずフリーズⅡを撃ち込んで、その回避能力減衰を図った。強度の高い回避半減が入っているのを見て、雪乃はクロスオーバーのカウントを始める。
逆に、強度の上書きを逆手に取ったのがユーグヴェルだった。強撃薬が効いている間に、時間経過で強度の下がった足止め効果をもう一度使い直し、最初の強度で上書きする。ついでに幻影の腕で攻撃も行なった。
「これが修羅に生きる者の戦いというものだ。跪け雑種が」
ブレイクには瑠那が追撃した。暁斗のルビーバレットも赤く光りながらキメラに命中する。
魅朱が挑発を掛けた。雪花に気を取られていたキメラは彼女の方を向く。その隙を突いて、雪花は究極練武による痛烈な一撃を浴びせた。魅朱も、金剛力で自己強化を行ない、無限練武Ⅱで今度は蒐姫を抜く。
アストレイトは降神飛行を使い直していた。もう一度狙撃し、クイックショットを繋げる。
「ナイトブラッド式次元連結戦法、たっぷり味わえ!」
そこへ、冥皇(ma1126)のFレインが降り注いだ。カウントしていたらしい。敵が一体しかいないため、カウントしても特に恩恵はない。
「通常攻撃も打撃を重ねていけば大きなダメージになります!」
速攻で肉体を強化した静が迫り、連続で攻撃を叩き込む。
「あいつを狙えるか?」
強撃薬を飲んだあまぎがパジャモに声を掛ける。パジャモはやる気の顔だ。更にユーズドプラスでパジャモに魔法を掛ける。パジャモは張り切って上空から強襲を掛け、尾っぽの蛇に嘴を突き刺した。蛇が痛みにのたうっている間に、パジャモはあまぎの傍に戻って来る。
「何度か繰り返せば大丈夫そうだな。暫くは初心か」
続々と、咎人たちがキメラを攻撃している。グスターヴァスもメイスをフルスイングしてクリーチャーをぶん殴る。回避半減がよく効いており、ダメージが大きいことが見て取れる。
「……がんばろーおー」
ゆるく己を鼓舞しながら、星空の幻はもう一度ロックオンを付与したキメラに改めて狙撃した。ジャケットの襟では、七宝のブローチが光っている。
「もしかして……リコリコよりみんなの方が沢山活躍してるのだ……?」
リコリコは愕然とした。囮役が多く、ボディガードを発揮するチャンスがない。
「キメラー! リコリコを目立たせるためにこっち来るのだー!!」
彼女は両手を振り上げた。フィニッシャーグローブから魔法弾を撃ち出す。尾の蛇が彼女を睨んだ。
がぶー!
「ぎゃん!! 絶対回避してもダメージ入るのおかしいのだ~~!!」
ハイドアンドシークで素早く避けたものの、全くの無傷というわけにも行かなかった。
その間に、獅子の方は魅朱に向かって前足の斬撃を繰り出した。得物で鋭く受け流す。魅朱が与えた封印はまだ効いている。咆哮が使えない。リナリアが先制ノ書で先手を取り、咎人たちは一斉に行動に移る。
「やっぱ炎に包まれる僕が一番美しいのだよな……」
強撃薬が切れたユーグヴェルが、きらきらパーティクルを自分に掛けた。その身体が炎を纏う。ファントムハンドの強度を上げられなくなったため、この後振りほどかれても良いようにしている。
リナリアがマジックアローⅡとフリーズⅡを立て続けに放ち、シールドを破壊。瑠那が刹那の一陣で追い討ちを掛ける。キメラが虫の息なのは誰の目から見ても明らかだ。
「い、今です……」
リナリアの合図で、雪乃のブルーエッジが魔力を纏った。一途に重い攻撃を。クロスオーバーによる強烈な一撃が叩き込まれ、バランスを崩したクリーチャーが倒れる。立ち上がる気配はない。キメラの撃破が叶ったようだった。
●
「リコリコさん、しっかり!」
グスターヴァスは自分を庇った(?)リコリコを抱えて激励していた。
「リコリコもう大丈夫なのだ……」
ダメージはそうでもないし、毒もすぐに解除されている。
「安心しました」
そこへ、静や暁斗が歩み寄った。
「グスターヴァスさん、大丈夫ですか?」
暁斗も、グスターヴァスに既視感はあるらしい。
「ええ、大丈夫です。お世話になりました」
「ご無事で何よりですよ。私たちはこの地に不慣れなのでお話しを伺いたいのですけれど」
静の言葉には、
「それは構いませんが、今日はこの後予定がありますので、また日を改めて頂けると幸いです」
「お疲れさま、ルナ……。怪我はしていない……?」
魅朱がルナールを気遣った。まだ、その愛称で呼ばれ慣れていないルナールは、少し返答に詰まりつつ、
「ああ、俺に怪我はない……俺に力があればな。貴殿らには頼りきりで申し訳なく思う」
「とんでもない……ルナのおかげで助かりました……」
魅朱はゆるゆると首を横に振る。ルナールはブラックチョコレートケーキを取り出した。
「幸い、ここにケーキがある。チョコレートが口に合うと良いが、な」
「ふふ、楽しみ……」
戦いは終わった。ひとときの平和を楽しもう。
「懐かしい空気だね。あぁ、混沌と混ざりあった馴染み深い空気だ」
「なるほど。ある意味とても馴染む場所ではありますが困りましたね。人の命がだいぶ軽くて人によっては居心地が悪いかもしれませんね」
七掛 双儀(ma0038)と七掛 二夜(ma0071)の二人は、生前も荒事に従事していたようで、オルメタの空気には馴染むものがあるらしい。二夜は双儀を見て、
(ふむ、無頼漢には居心地のいい世界なんでしょうか?)
首を傾げた。
(おっ、新種のグスター属だ。ぐっさん+ぐっ様÷2って感じかな)
別世界のグスターヴァスを知るユーグヴェル・ミラ(ma0623)は、司祭を見て内心でそんな予想を立てていた。常識的だが厳格でもなさそうだ。
「その心意気に感服しました。グスターヴァスさまをお守ります!」
川澄 静(ma0164)は、司祭の言葉に感銘を受けたらしく、協力を申し出た。
(この世界のグスターヴァスさまは聖樹界の彼に近いです?)
同じく、常識的で信心深い、と言う面から彼女もこっそりそんなことを考えている。
「……グスターヴァスさんは、何処の世界でも、グスターヴァスさん……なのですね」
祈祷師のビギナーとして参戦している氷鏡 六花(ma0360)も、やはり自分の知るグスターヴァスの面影を見ているようだ。きょとんとする彼には、
「……いえ、戯言と、聞き流してくださって……結構です。今は……目の前の敵に、全力を……尽くしましょう」
(グスターヴァスさん……この世界でも司祭さん、なのですね……聖樹界さんの司祭さんより、まだお若い……のかな……?)
リナリア・レンギン(ma0974)もひっそりと司祭の様子を見ていた。
「こ、こんにちは……司祭さん…宜しければ、お手伝いさせて下さい……」
「皆さんお優しい……神の戦士とはかくあるべきですね。私もその気遣いに学ばなくては」
司祭の方はやたらと協力的な咎人たちに感激しているようだった。
「……キメラさん……おっきい……。最近、大きい敵さんが多いかも………頑張って、援護、します……」
リナリアは神杖を握り締めた。
「じゃも……じゃも……」
唯塚 あまぎ(ma0059)のパジャモ幼体は、興味津々で見つめていたキメラに睨まれて、震え上がった。主人の足にぴったりくっついている。
「……いつもの元気はどこへ」
「私は、ルナの前で力を尽くすね……。後ろは、お願い……」
「魅朱嬢、気遣い感謝する。貴女の足を引っ張らぬようにせねばな。グスターヴァス殿、貴台には確りと加護を受けてもらおうか」
ルナール・レルム(ma0312)が先制ノ書を開いた。機先は咎人が制し、魅朱(ma0599)はキメラが吼えるよりも先に強撃薬を飲む。
「頭がライオン、尻尾が蛇、胴が山羊ってバケモンいるんだ……」
鐘田 将太郎(ma1159)は囮役をするという咎人にシールドアップⅡを施した。あまぎはウィンドエフェクトでパジャモに風を送らせる。
「シールド強化はできませんが、防御支援はできますので。カウント中は行動できませんので、その間のガードは任せます」
更級 暁斗(ma0383)は護法陣を敷こうとしていた。
星空の幻(ma1259)はロックオンを掛けていた。サイズ差で強度は落ちるものの、元から強度の高いそれは上手く敵に効いたようだ。
「今日はメンターお姉さんのリコリコが、司祭様を守ってみせるのだ。ちっこくてもそれくらいはできるのだ!! 見ててほしいのだ……!」
リコリコ(ma0309)はそう宣言するや、司祭の傍にくっついた。本当に守護霊の様である。グスターヴァスは、ぬいぐるみみたいなサイズの咎人に驚いていたが、拒否はしなかった。直後に咆哮が轟いた。周囲にいた咎人の威力が僅かに衰える。
神降ろしの舞をしていたリナリアが、琥珀石の守護を周囲へ分け与える。誇大する幻想の静には、今は効果がないが、幻想が解除されればその恩恵が受けられるだろう。
「戦いで大事なのは気迫とタイミング、行こう! 切り裂け風よ!」
地を駆けるものとなった風花雪乃(ma0597)は、トルマリンショックⅡを叩き込む。ダメージは入ったが、動きを制限する電撃の力は、敵のサイズが大きいこともあって減衰されており、抵抗されてしまった。
「足が速いか。だがそれがどうした? 基本を知れば何のことはない。やるべきことはただ一つ、『寄らば斬る』のみだ」
続いて、伊吹 瑠那(ma0278)が星華凍幻を試みるが、こちらも同じだった。トルマリンショックⅡよりは強度は高いものの、やはりサイズ差が響いている。
立て続けに回避半減が失敗したのを受けて、魅朱が駆け出した。
「この顔ぶれなら、微々たる威力かもしれないけれど……防げるものは防いでおいて……損はないよね……」
蒐姫は鞘に納めたまま。封印の小太刀を素早く抜き、キメラの胴体に突き刺した。元より攻撃力の高いメガロリストのこと。十分な威力が入る。だが、それは本命ではない、強化された封印の力が、キメラの咆哮を封じた。驚愕と苦痛の雄叫びが上がる。
「蛇の尾も首の勘定に入れれば、首が二つか。どちらも確実に落とす。正体はわからんが……市民に被害が出る前に討つ! 私に来い! 仲間に手だしはさせん!」
強撃薬でより気迫を増した羽鳴 雪花(ma0345)が挑発を行なう。キメラはまんまとそれに乗った。獅子の顔も、尾の蛇も彼女を睨む。
「前衛的にはビギナーもいいトコなのだよね……ゾクゾクしちゃうなぁ」
同じく、丸薬によって魔法の強度を高めたユーグヴェルが、ファントムハンドでその巨体を引き寄せた。獣のかぶり物とライオンが鼻面を付き合わせている。幻影の手がキメラを殴ると、敵はその体勢を崩した。瑠那の刹那の一陣が叩き込まれる。
「さっさとくたばってくれねぇ?」
降神飛行で飛んでいたアストレイト・ヴォルフ(ma0258)が、カスタマイズした愛銃から狙撃した。命中を確認してクイックショット。
「貴様の機動力も、この健脚故だろう? 傷つくのはさぞ嫌だろうな?」
ルナールが踏み込み、その足を狙って慈悲ナキ眠からダイヤモンドアタックを叩き込んだ。漆黒の斧が輝くオーラを纏い、足を穿つ。キメラは彼を睨み、黄金の瞳から威圧を受けた。
「見事に怪物のようだが、この世界はこれが普通でよかったのだよね」
快宝薬を飲んだ双儀が、どこか機嫌良く、二振りのグラディウスを振るう。そこへ、二夜のスタンシュートが飛んだ。こちらも強撃薬で強化されており、敵の動きを封じた。既に、キメラの行動はかなり制限されている。
「ふぅ。強襲への備えだけはしっかりとしておきましょうか」
「流石、二夜ちゃん。良い精度だ。可能なら畳み掛けたいものだけど」
「……闇掟界の精霊達よ……同じく精霊たる我が身に……しばし力を貸してください」
地を駆けるもの、そして、キメラの咆哮を受けて吼え狂うものと化した六花。纏う瘴気が一段と濃くなったように見える。征伐者の指輪を嵌めた細い指先。そこから氷の槍が作り出され、強烈な一撃となってキメラに突き刺さった。
「そこ……狙い時なの……!」
星空の幻はアドバンスファイアを構えた。ロックオンの射程を考慮して位置取ると、上手いこと咆哮から外れ、かつ仲間の支援がギリギリ届くような所を確保できていた。ロックオンは一対一で輝く能力。それが効いている内に。狙撃で狙いを付け、引き金を引いた。大きな敵には狙いが付けやすい。ルナールと睨み合っている獅子の顔面を狙った。上がりに上がった命中が敵の回避を穿ち、ダメージを与える。上昇させるステータスをピンポイントで選んでおり、手段の限られているビギナーとして大きな成果を上げている。
あまぎはその間に、ウィンドエフェクトの効果で空に上がっていた。
「流石に上にはキメラも来られないだろう。ほら、はじめるぞ」
「じゃも!」
キメラから距離を取って、パジャモ幼体は元気を取り戻したようだ。
「……切り替え早すぎじゃないか?」
「あ……パジャモちゃん……がんばれー……」
魅朱が地上から手を振った。
「じゃもっ!」
快癒の陣を準備しながら、将太郎は鱗薙で斬り掛かった。開いた鉄扇が炎の光を帯びていく。
「前衛でガンガン攻め込んでみるか。たまにはこういうのもいい。俺、いままでこんなに攻め込んだことなかったなあ……」
キメラは移動ができない原因がユーグヴェルにあること自体は察したらしい。彼に向かって噛み付いてくる。雪花が割り込もうとしたが、
「おっと、大丈夫そうだよ」
斧で受け流す。
「避け損ねたら助けて」
「承知した」
ユーグヴェルに攻撃が通らないとなると、向こうが八つ当たり敵に狙ってくるのは、挑発を掛けている雪花になる。尾の蛇が彼女に噛み付いた。
「毒や咆哮で止まる防人だと思うなよ! 首を置いていけ!」
「よしよし、では先手を取らせてもらおうかな」
双儀が先制ノ書を開き、目配せする。暁斗の護法陣が発動した。強撃薬を飲んだリナリアが、咆哮もままならないキメラにすかさずフリーズⅡを撃ち込んで、その回避能力減衰を図った。強度の高い回避半減が入っているのを見て、雪乃はクロスオーバーのカウントを始める。
逆に、強度の上書きを逆手に取ったのがユーグヴェルだった。強撃薬が効いている間に、時間経過で強度の下がった足止め効果をもう一度使い直し、最初の強度で上書きする。ついでに幻影の腕で攻撃も行なった。
「これが修羅に生きる者の戦いというものだ。跪け雑種が」
ブレイクには瑠那が追撃した。暁斗のルビーバレットも赤く光りながらキメラに命中する。
魅朱が挑発を掛けた。雪花に気を取られていたキメラは彼女の方を向く。その隙を突いて、雪花は究極練武による痛烈な一撃を浴びせた。魅朱も、金剛力で自己強化を行ない、無限練武Ⅱで今度は蒐姫を抜く。
アストレイトは降神飛行を使い直していた。もう一度狙撃し、クイックショットを繋げる。
「ナイトブラッド式次元連結戦法、たっぷり味わえ!」
そこへ、冥皇(ma1126)のFレインが降り注いだ。カウントしていたらしい。敵が一体しかいないため、カウントしても特に恩恵はない。
「通常攻撃も打撃を重ねていけば大きなダメージになります!」
速攻で肉体を強化した静が迫り、連続で攻撃を叩き込む。
「あいつを狙えるか?」
強撃薬を飲んだあまぎがパジャモに声を掛ける。パジャモはやる気の顔だ。更にユーズドプラスでパジャモに魔法を掛ける。パジャモは張り切って上空から強襲を掛け、尾っぽの蛇に嘴を突き刺した。蛇が痛みにのたうっている間に、パジャモはあまぎの傍に戻って来る。
「何度か繰り返せば大丈夫そうだな。暫くは初心か」
続々と、咎人たちがキメラを攻撃している。グスターヴァスもメイスをフルスイングしてクリーチャーをぶん殴る。回避半減がよく効いており、ダメージが大きいことが見て取れる。
「……がんばろーおー」
ゆるく己を鼓舞しながら、星空の幻はもう一度ロックオンを付与したキメラに改めて狙撃した。ジャケットの襟では、七宝のブローチが光っている。
「もしかして……リコリコよりみんなの方が沢山活躍してるのだ……?」
リコリコは愕然とした。囮役が多く、ボディガードを発揮するチャンスがない。
「キメラー! リコリコを目立たせるためにこっち来るのだー!!」
彼女は両手を振り上げた。フィニッシャーグローブから魔法弾を撃ち出す。尾の蛇が彼女を睨んだ。
がぶー!
「ぎゃん!! 絶対回避してもダメージ入るのおかしいのだ~~!!」
ハイドアンドシークで素早く避けたものの、全くの無傷というわけにも行かなかった。
その間に、獅子の方は魅朱に向かって前足の斬撃を繰り出した。得物で鋭く受け流す。魅朱が与えた封印はまだ効いている。咆哮が使えない。リナリアが先制ノ書で先手を取り、咎人たちは一斉に行動に移る。
「やっぱ炎に包まれる僕が一番美しいのだよな……」
強撃薬が切れたユーグヴェルが、きらきらパーティクルを自分に掛けた。その身体が炎を纏う。ファントムハンドの強度を上げられなくなったため、この後振りほどかれても良いようにしている。
リナリアがマジックアローⅡとフリーズⅡを立て続けに放ち、シールドを破壊。瑠那が刹那の一陣で追い討ちを掛ける。キメラが虫の息なのは誰の目から見ても明らかだ。
「い、今です……」
リナリアの合図で、雪乃のブルーエッジが魔力を纏った。一途に重い攻撃を。クロスオーバーによる強烈な一撃が叩き込まれ、バランスを崩したクリーチャーが倒れる。立ち上がる気配はない。キメラの撃破が叶ったようだった。
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「リコリコさん、しっかり!」
グスターヴァスは自分を庇った(?)リコリコを抱えて激励していた。
「リコリコもう大丈夫なのだ……」
ダメージはそうでもないし、毒もすぐに解除されている。
「安心しました」
そこへ、静や暁斗が歩み寄った。
「グスターヴァスさん、大丈夫ですか?」
暁斗も、グスターヴァスに既視感はあるらしい。
「ええ、大丈夫です。お世話になりました」
「ご無事で何よりですよ。私たちはこの地に不慣れなのでお話しを伺いたいのですけれど」
静の言葉には、
「それは構いませんが、今日はこの後予定がありますので、また日を改めて頂けると幸いです」
「お疲れさま、ルナ……。怪我はしていない……?」
魅朱がルナールを気遣った。まだ、その愛称で呼ばれ慣れていないルナールは、少し返答に詰まりつつ、
「ああ、俺に怪我はない……俺に力があればな。貴殿らには頼りきりで申し訳なく思う」
「とんでもない……ルナのおかげで助かりました……」
魅朱はゆるゆると首を横に振る。ルナールはブラックチョコレートケーキを取り出した。
「幸い、ここにケーキがある。チョコレートが口に合うと良いが、な」
「ふふ、楽しみ……」
戦いは終わった。ひとときの平和を楽しもう。





