ツインフィールズを散策しよう!
近藤豊
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シナリオ形態
イベント
難易度
Very Easy
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
50 SC
参加人数
5人~24人
優先抽選
50 SC
報酬
240 EXP
3,000 GOLD
6 FAVOR
相談期間
5日
抽選締切
2022/03/04 10:30
プレイング締切
2022/03/09 10:30
リプレイ完成予定
2022/03/18
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ
 青年は、気付けばそこにいた。
 何故、そこにいたのかは分からない。
 意識した時には、そこに立っていたのだ。
 思考を巡らせるが、何も思い出せない。
「……此処は、何処だ?」
 自然と足が前へと進む。
 青年の朧気な意識のように、ふらふらと足並みは不安定だ。
「……あ。俺の名前……?」
 失われていたのは、思い出だけではない。
 自らに付けられた名前すら思い出せない。
「ここは……?」
 青年の視界に現れたのは、平屋の家屋。
 何か懐かしさを感じてしまう。
「おや、見かけない人だね。建設中のジャパンシアターなら、幹線道路沿いだよ」
 ふいに老年に差し掛かった女性が話し掛けてきた。
「ジャパン、シアター……?」
「あ、さては移民の人かい? ツインフィールズへ初めて来たんだね」
 女性は何かを察したようだ。
「あ、ああ……」
「あまりこの辺を徘徊しない方がいい。カークランドファミリーがちょっかいを出して来るからね」
 お喋り好きの女性なのだろう。聞いていない事も問いかけてくる。
 こちらの身を案じているようだ。
「ありがとう」
「感謝なんていいんだよ。それで、名前は?」
「……!」
 女性に名前を聞かれた青年は、思い出す。
 自分に名前の記憶がない事を。
 何と答えればいい?
 考えあぐねた結果、青年は頭に浮かんだ名前を口にする。
「……天道……落暉」
「天道さん、ね。何か分からない事があったら言っておくれ」
 女性が天道 落暉(ma0103)の肩を馴れ馴れしく叩いた。
 この懐かしい町になら、自分の大切な何かを思い出せるかもしれない。

 

「リカルドッ! あのイタリアンにしようぜ!」
 如月 朱烙(ma0627)は、リカルド・マエストリ(mz0056)の手を強引に引いてイタリアンレストランのオープンカフェを訪れた。
 リカルドの疲れを癒す為、朱烙は事前情報を仕入れていた。
「……ああ」
 朱烙に促されて着座するリカルド。
 今回は疲れを癒す名目だ。あまり料理を待たされるのは良くない。気軽に食べられる方がいい。
 朱烙は気を使いながら、メニューに視線を落とす。
「パスタのボンゴレビアンコとオススメのピッツァ! ……リカルドは?」
「……ステーキを」
 淡々と注文するリカルド。
 朱烙はあっさりな食事内容に心配な顔色を浮かべる。
「それだけ?」
「……普段からこんなものだ」
 朱烙が思い返してみてもリカルドはそこまで食事に気を使うタイプではない。
 エンブリオのバーで酒を飲む時も、酒中心。腹が減れば、適当にホットドッグで食事を済ます。
「もう少し栄養を考えた方ががいいんじゃねぇか?」
「……そうだな」
「オルメタに来てから厄介事続きだろ。少しは休めているのか?」
「……問題無い。この町がシカゴと同じなら、気を休む暇は無い」
「え?」
「……それだけ、エキサイトする町だという事だ」
 エキサイト。
 そう表現しているが、言い換えればいつ狙われるかも分からない状況という事だ。
 それを察した朱烙は、リカルドに対して宣言する。
「よし。飯食ったらマッサージしてやるぜ」
「……は?」
「疲れてるンだろ?如月流は体も習うンだ。部屋に行くぞ」
 朱烙からリカルドの部屋へ行くと言い出される。
 顔色は変えていないが、明らかにリカルドの瞳孔は開いている。
「……お前」
「決まったからな。疲れているなら無理するな」
 一方的な宣言をする朱烙。
 リカルドからの反論は受け付けない。
 こうでもしなければ、リカルドは休まないのだろう。
 ウォルターは、このリカルドの性格を知っているようだ。
(そのウォルターっておっさん。リカルドを良く知ってそうだな)


「なに!? あの堅物が」
「リカルドさんの事で心配してると聞いて。……ここだけの話ですが」
 ウォルター・アンダーソンの屋敷を訪れた麻生 遊夜(ma02799)と鈴鳴 響(ma0317)の前で、ボスであるウォルターが驚嘆していた。
 話題は、リカルドについてである。
「……ん、少し前も……デートしてたし、多分今日も……2人でいると思う」
 遊夜と響は、こっそりとウォルターへリカルドと朱烙の関係を話していた。
 二人には内緒にしたが、悪くはないだろう。
「へぇ。あの仕事一筋だったら奴がねぇ。どんな心境変化って奴なんだ?」
「あの。リカルドさんはそこまで堅物だったんですか?」
 遊夜はウォルターへ問いかけた。
 今でこそ朱烙と共に行動する事が多いリカルドだが、咎人以前のリカルドを遊夜は詳しく知らない。
 リカルド本人が自分で話してこない以上、無理に聞き出そうとは思わなかったからだ。
「あいつがボスになる時、言ったんだ。イロの一人でも持った方が良いってな。ボスってぇのは箔も大事だ。箔が付いてたら舐められねぇ」
「確かに」
「だが、あいつは生返事だけで誰にも手を付けようとしなかった」
 どうやらリカルドはあまり女性関係に手を出してこなかった。
 ウォルターによれば、ファミリーを引き継いだばかりでファミリーの基盤を作るのに必死だったと見られていたらしい。
「……ん、真面目なのは、認める」
「結局、ファミリーがバラバラになっちまったけど……マフィアは良くも悪くも自分を縛る鎖ばかりだからな」
「鎖?」
 遊夜は聞き返した。
 ウォルターは葉巻を加えて、そっと火を灯す。
「自由なマフィアなんていないんだよ。マフィアが自由になる時は、ファミリ-から追い出される時と死ぬ時ぐらいだ」
 ウォルターは冗談混じりに言い放つ。
 マフィアは闇の稼業。命も狙われもすれば、ファミリーの掟にも縛られる。
「死んでも縛られている奴もいますよ」
「……ん? なんか言ったか?」
「いえ。それよりリカルドさんは大丈夫です、ご安心ください。負担も我らで分け合いますので」
 独り言を呟いた遊夜。
「そうか。それより観光はしたか? この町は映画が盛んだ。俺も投資しているんだ。行ってみるといい」
「……ん、これから、行く」
 そう言って響は、遊夜の腕を掴む。
 それを見ていたウォルターは、余計な一言を口にする。
「ふぅん。お前さんは、ボスとして箔が付いているようだな」


「ホットドッグか。三つ貰えるか?」
 リダ・クルツ(ma1076)は、ウエストサイドの街角で屋台のホットドッグを注文していた。
 アルフィリウム・S・ロシェ(ma1141)と芳花・ジェフロワ(ma1238)と共にツインフィールズを観光していた。
 リダが目を付けたのはカークランドファミリーのシマであるウエストサイド。ツインフィールズでも比較的新しい店舗が多い地域でもある。
「ほらよ。この町は初めてかい?」
「ああ」
 リダは屋台の親父からホットドッグを受け取るとロシェと芳花へ手渡した。
「これは何という食べ物です……? 美味しそうです……」
「ホットドッグだ。ソーセージをパンに挟んだだけだが……こっちでも、こいつが定番なんだな」
 ロシュがホットドッグを物珍しそうに眺めている横で、クルツはホットドッグにかぶり付いた。
 マスタードとケチャップが口の中に広がる。
「パンもホットドッグもお手頃な素材かな?」
「ああ、そうだ。ホットドッグってぇのは、手軽に食べられるのが魅力なんだよ」
 芳花の言葉に店の親父が答えた。
 芳花の目から見る限り、素材も味付けも定番。高い素材は使われていない。
 値段も事前に調べていたイーストサイドの屋台とそこまで変わらない。
「リダさん、もう食べてしまったのですか? それでは一口どうぞ」
「いいのか? サンキュ!」
 ロシェからホットドッグを分けて貰ったクルツ。
 喜びを露わにして、一口で頬張った。
「良い食いっぷりだ」
「ところで、この辺りで店を始めるなら幾らぐらいいる? 俺も店をやりたいんだ」
 クルツの一言。
 だが、その一言で親父の顔色が曇る。
「あ、悪い。商売敵に情報は渡せないよな」
「いや、良いんだ。もし、店を出すなら町の南側にしな」
「何故?」
 エゲリア製のカメラでロシェとクルツの様子を撮影していた芳花は、親父に聞き返した。
 親父は小さくため息をつく。
「ウエストサイドはショバ代がキツいんだよ」
「でも、イーストサイドの屋台と値段は変わらないですよね?」
「ショバ代だよ。払わなければマフィアに嫌がらせされる」
 芳花は、親父の様子で気付いた。
 ウエストサイドの方がショバ代が高い。だが、値段を上げれば客はイーストサイドへ行ってしまう。
 だから、ウエストサイドの店は利益からショバ代を捻出している。下手に味を落とせば客が離れる。
「あの、それならイーストサイドに店を出せば良いのではないでしょうか?」
 ロシェの言葉に親父は頭を左右に振る。
「あっちは昔ながらの店が多い。ショバ代は安いが、今から参入は難しい。だから、映画関係の会社が多い南側の方が売れるんだ」
 町の南側は映画撮影所や劇場も多い。
 特に撮影所周りはスタッフの出入りも多い上、飲食店も多い。双方のマフィアも町の南は手を出せていないらしい。新店舗には持ってこいだ。
「だが、この場所もチャンスがある。そこを見てみな」
「知らない看板がいっぱい……なんて書いてあるのかな」
 親父に促されて見上げるロシェ。
 そこには工事中のビルがあった。養生の幕から見える看板にはアルファベットが並んでいる。
「ジャパンシアター? 新しい劇場ですか?」
「そうだ。町の有力者や議員が立ち上げる町一番の劇場だ。まだ建設中だが、これができれば……」
 そう言い掛けた瞬間、親父の顔色が再び変わる。
「ヤバい、カークランドの連中だ。早く行け」
 半ば強引に追い払われる三人であった。
 

「……此処が……ツインフィールズ教会。……祈祷師の、本拠……ですか」
 氷鏡 六花(ma0360)が訪れたのは、ツインフィールズの中央にあるツインフィールズ教会だった。
 町で一番古い施設であるが、手入れが行き届いている為に小汚さはない。
「ようこそいらっしゃいました。今日のミサは終わってしまいましたが」
「見学できたら……後学のため、参考になるかと、思いましたが……まあ、今日は……ご迷惑にならない程度に、見学して……帰ります……かね」
 六花は生前、シスターの友人がいた。
 また恩人の一人は神父だった影響もあるのか、六花自身も信心深い。
「大丈夫です。神は誰にでも門戸を開いております。こちらへ」
 シスターへ案内され、六花は像の前に傅いた。
 教会にあるのは、六花も良く知るマリア像のようであった。
「……神よ。そして……精霊達よ。……闇掟界の人々に……どうか、御加護を」
「熱心な祈りですね」
「……シスター。……教えて、欲しい」
 六花はシスターへ教会の教義にについて質問してみた。
 自分の知る宗教と異なるのか。
 その結果、六花も知っているカトリック系である事が判明する。オルメタ独特の宗教ではなさそうだ。
「……普通の教会」
「はい。そうですが、何か?」
「……表向きは。できれば……裏の顔も」
 六花がそう口にした瞬間、シスターは何かを察したようだ。
「こちらへ」
 シスターへ促されるまま案内される。
 そこには数名の子供と共にいる老年のシスターと天魔(ma0247)と川澄 静(ma0164)の姿があった。
「先にも言ったが我々はこの街に来たばかりでな。シスターアンジェラ、色々教えて欲しい」
 天魔がシスターアンジェラへ問いかけている最中であった。
 このツインフィールズに出没するクリーチャーなる存在を、天魔は簒奪者や特異点が原因と考えていた。そこで同じくクリーチャーと戦っているツインフィールズ教会と共闘を申し出ていたのだ。
「おそらくクリーチャーは簒奪者か特異点が原因だ。目的は同じだ。協力しよう」
「私には、簒奪者や特異点というのが何か分かりませんが、ご助力いただきたいですわね」
 シスターアンジェラは咎人への協力にやぶさかでないようだ。
 ただ、簒奪者や特異点という言葉は知らないようだ。
 ふと、アンジェラは後方にいる六花に気付く。
「あら、そちらの方は?」
「……私は……祈祷師。クリーチャーを……鎮静、させたい」
「そうでしたか。ご協力いただけるなら助かります。ですが」
 感謝を述べながら、アンジェラは釘を刺すように語気を強めた。
「ここは教会。人はすべからく平等です」
「それは理解している」
「つまり、一般人でもマフィアの方でもここでは皆すべて神の子なのです」
 ここで天魔は気付いた。
 アンジェラはこの教会にマフィアの抗争を持ち込むなと言っているのだ。
 現状、咎人達はアンダーソンファミリーを拠点に据えている。教会としてはクリーチャー対処に手を助けてくれるのはありがたいが、教会がアンダーソンファミリーへ近づき過ぎればカークランドファミリーから何かされる恐れもある。政治的に中立を貫きたいと考えているのだろう。
「最大限努力しよう」
「配慮に感謝します」
「もう一つ。クリーチャーが目撃され始めた前後に、変わった姿の者が町に来なかったか?」
「どうでしょう。移民の多い町です。俳優を目指す人も多くて、変わった姿の方も多いです」
 アンジェラは怪しい人物を目撃していないと答えた。
 映画が盛んである為に、町中でもエキストラが多く歩いている。中には変わった姿のエキストラも多くいる事から、怪しい人がいたかと聞いても分からないようだ。
「お忙しいところすまない。質問しても大丈夫だろうか?」
 六花の背後から羽鳴 雪花(ma0345)が姿を見せた。
 他のシスターに挨拶したところ、この部屋へ案内されたようだ。
「はい、何でしょう」
「まだ詳しくなくて、この教会の歴史などを聞いても良いだろうか?」
「この教会は見た目よりもずっと古いんですよ。この町ができた時に建設されたぐらいですから」
 アンジェラの話では、ツインフィールズがこの地に誕生した頃から教会が建設されていたらしい。
 開拓時代に遡る事から、歴史的に古い教会となる。
「左様でしたか。ところで、隣の孤児院は教会が運営を?」
「ええ。身寄りのない子を引き取っています」
 教会を見れば、資金面は潤沢そうだ。
 そうでなければクリーチャーと戦おうなんて思うはずもない。
「子供が好きなんだが……後日、隣の孤児院に遊びに伺っても?」
「いつでもお越しください。皆喜びます」
 雪花の言葉にアンジェラは天魔からの土産をアピールしながら頷いた。
 孤児院が身寄りのない子ばかりだからこそ、寂しく感じる者も多いだろう。
 今日すぐは迷惑がかかる為、雪花は別日で調整して孤児院を訪れるつもりだ。
 今から早速準備しなければ――。
 一方、静の方はファリフに声をかけていた。
「ファリフさま、先日は一緒に戦って頂き、ありがとうございます。この街の事、よく知らなくて……。この街の事教えてもらえませんか」
「この町? 楽しい町だよ」
 静の問いにファリフは屈託の無い笑顔で答える。
 教会の孤児院で寂しい事もあるだろうが、基本的には楽しい生活なのだろう。
「この間、クリーチャーが襲ってきたのはビックリしたけど。でも、シスターもいるから寂しくはないよ」
「町の方はどうなのでしょう?」
「どうだろ? クリーチャーが現れないと他へ行かないからなぁ」
 その時、静の足元に一匹の毛玉が現れた。
 犬のような存在だが、ぬいるぐみのように丸く可愛らしい。
「……犬?」
「あ、フローズ。ダメだよ。邪魔をしちゃ」
「フローズ? 孤児院で飼っている狼だよ。まったく狼に見えないけどね」
 そう言ってフローズを抱き上げるファリフ。
 これでも子狼らしいが、ファリフによれば煮込んだ鶏肉しか食べないグルメだそうだ。
「フローズ、少しは運動した方がいいよ。これじゃ走れないでしょ?」
「わふ」
 一声上げるフローズだが、その声からやる気は感じられない。
 見かねた静は申し出た。
「あの。フローズ様の散歩を一緒に行きませんか?」
「いいよ。でも、フローズはあまり動かないからこの辺を回るだけになるよ」
 ファリフによればフローズは歩くというより引き摺るに近い散歩になるらしい。
 それでもこの付近を見舞われるならばそれで良い。
 静はファリフの回答に小さく頷いた。
 

「ここは地球なのか? 世界情勢はどーなってンのかな?」
 ウガツ ヒョウヤ(ma1134)は世界情勢を調べるべく新聞を手にした。
 だが、掴まされたのは三流ゴシップ誌の『ツインフィールズトリビューン』。大まかなアメリカの時期を知りたかったのだが、紙面には町の有力企業である『ランディフーズ』に迫る、地下に白い巨大ワニをみたなど怪しい記事が満載であった。
「……んー、どうヤら世界恐慌は起こっテなさそうだが」
 そう言いながらふとヒョウヤの目に飛び込んできたのは、一台の自動車。
 それは明らかにクラシックカーと呼ばれる部類の代物であった。
「ナマで見るのは初めてだぜ」
 ヒョウヤが目撃したのはT型フォード。
 一部ではファンに根強い人気の自動車である。オルメタではこのような車が普通に走っているようだ。
 さらに近くでレコードショップを発見。早速入店するヒョウヤであるが、そこでも驚嘆する事になる。
「この音、イイなァ。エモいぜ……」
 レコード特有の音質。
 そこから奏でられるジャズの名曲。ヒョウヤも知っている楽曲だが、正直家でゆっくり楽しいたいレベルに匹敵していた。
 ふと道路の向かいに目を向ければ、バーらしき物がある。酒は出していないようだが、ジュークボックスがチラリと見える。
「お! あれは年代物のジュークボックス!」
 レコード一枚でこの品質だ。
 ジュークボックスに並ぶ楽曲が如何なる物か。それを考えるだけでヒョウヤのテンションは上がる。
「そうだ。費用は……」
 レコードを手に入れるべくよく調べてみるが、欲しいレコードをすべて購入するには厳しい予算状況だ。
 そこでヒョウヤは思い切った手に出る。
「そうだ。カジノ……あそこで資金を増やせば」
 ヒョウヤは既に情報を得ていた。
 アンダーソンファミリーが運営する闇カジノ。そこで稼げれば、欲しいレコードを好きなだけ購入できる。
「よし、そうと決まれば」
 ヒョウヤは野望に向けて動き出す。
 
 だが、あとでヒョウヤは気付く。
 アンダーソンファミリーのレートはそこまで高くない事に。
 ファミリーの資金難が続いている事から、大きく賭けられると運営に支障を来すからだ。
 

「酒場とカジノかぁ……カジノを覗いてみますか」
 不破 雫(ma0276)は、ウエストサイドの闇カジノを訪れた。
 敢えて敵対組織のシマを選んだのは敵情視察も入っているからだ。
「へぇ~、敵対組織が経営しても中の雰囲気は似た感じですね」
 雫はそう呟きながら、カジノの中を歩く。
 イーストサイドのカジノも入店には入念なチェックをされる。
 合い言葉を言わされ、怪しい者は入店お断り。雫は予め情報を手に入れてから店に訪れている。
(一番の違いは、レートかな)
 雫は早々に気付いた。
 イーストサイドのカジノと異なる点。それはレートだった。
 正直、イーストサイドのレートは低い。これはアンダーソンファミリーの資金面が原因だろう。客に大勝ちされたら支払いに困るからだ。一方、ウエストサイドはレートが高い。必然と客が集まり、大金がやり取りされている。
「んふふ、また勝った♪」
 その時、雫の耳へ声が飛び込んでくる。
 見れば、鐵夜行(ma0206)がポーカーの卓に座っていた。
 コインの枚数から相応に勝っているように見える。
(いや、あれは勝たせてもらってるみたい)
 雫は夜行とディーラーのやり取りから、サービスで勝たせて貰っていると気付く。
「今度は……これ!」
 夜行はカードをオープン。
 再びディーラーの手に勝つ事ができた。
「お客様の勝ちです」
「やった!」
 雫が見る限り、大きな勝ちではない。
 元が少額だったからこそ勝利できたようだ。
「おじさん、ありがとう!楽しかった!」
 夜行は、満足そうに席を立った。
 夜行は満足そうだが、カジノ側はカモにするつもりだ。
 最初は勝たせて、次回から大負けさせる。そうしてカジノに嵌めるつもりなのだろう。
(レートが高いから、中毒性も……)。
 雫はウエストサイドのカジノが想像以上にやり手だと気付いた。
 それに対してディーラーは笑みを崩さず夜行を送り出していた。
「またのご来店をお待ちしております」


「ツインフィールズだとジャズが主流だと思うけど、新しいポップスを受け入れてくれそうな芸能事務所ってどこなのかなー?」
 佐藤 桜歌(ma0034)は、映画撮影所がある町の南に姿を見せていた。
 ジャズ主流の状況で新しい風を吹かせようとやってきた桜歌。
 劇場も多い事から町の南には俳優をマネージメントするエージェントも多数存在するようだ。
 早速桜歌は手近の事務所に飛び込むが、ここで予想外の展開に気付く。
「楽曲は悪くないんだけどね」
「この楽曲を作品で使って貰えるかなんだよね」
「ライブから火を付けるという手もあるのか」
 実にエージェントの反応はまちまちだった。
 それはこの町のエージェントは皆、映画や舞台が主軸だという事だ。
 音楽は映画や舞台で使われるBGM。ライブで集客するとなると、俳優として名前が売れれば客が入るかもしれない。だが、楽曲先行となるとその後に映画でタイアップされるなどの展開がなければ厳しいらしい。
「うーん。今の現状から変えるとなると、歌で売れるようにしなきゃいけないのかな」
 腕を組んで悩む桜歌。
 だが、夢が絶たれた訳ではない。
「だったら、ポップスで人気を取ればいいんだよね」
 ジャズよりもポップスが好きな桜歌。
 苦難を乗り越えるのもアイドルの魅力だ。幸い小さな事務所だが検討してくれるところもあるらしい。
 この世界にアイドルはいない。
 ならば、新しいアイドルの風は桜歌が吹かせればいい。
「目指せ、歌って踊るアイドルライブ」


「浪漫と……硝煙と……男伊達の感じ……ジャスティスですの」
 エルシア・アインホルン(ma1216)は、イーストサイドのイタリア地区を歩いていた。
 オルメタで象徴的なハードボイルドな空気。
 血と硝煙。野望に渦巻く町。
 その中でもイタリア地区にエルシアは懐かしさを感じていた。
「お嬢ちゃん、カンノーロはどうだい?」
「ご飯ですか……デリシャスなものを所望致しますの」
「正確にはお菓子だな。ほら」
 カンノーロはイタリアのお菓子だ。
 小麦を筒状にして焼いた後、間にクリームを入れている。
 一口食べただけで、口の中に甘い味が広がっていく。
「あまーいですの。ジャスティスですの」
「そうだろ。イタリア地区でも名物なんだ」
 自慢げな店主。
 見回せば街並みは何処となくイタリアの雰囲気がある。聞けば、イタリアからの移民がここに多く住んでいるからだ。港湾地区で働く者も多く、決して金持ちは多くないが、エルシアは何故か懐かしさを感じてしまう。
 一方、白玉 纒(ma0300)もイタリア地区のレストランを回っていた。
「ふふーん、さすがはアメリカンピザっす」
 纏の前に置かれたのはもっちりした生地のピザ。
 パン釜の余熱を利用して焼き上げられたピザは、手軽に食べられる。
 トマトとチーズのハーモニーに舌鼓を打つ。
 既にチャイナタウンで饅頭を頬張ってきた纏。何度目かの買い食いで腹は満腹に近い。
「しっかりしたレストランとかもいいけど屋台とかもいいものっす」
 纏はイーストサイドを中心に回っている。
 比較的イーストサイドは安全だが、注意した方がいいケースもある。チャイナタウンには小さいながらも華僑の組織が存在している。聞けばウエストサイドのジャパンタウンにもその筋の方々が移民しているらしい。だが、同時に各国の食事も楽しめるらしい。
「ふう、食べた。もう食べられ……やや! あれはまさかお菓子! お菓子は別腹っすよ」
 エルシアが食べていたカンノーロを発見する纏。
 ピザを無理矢理押し込んで、カンノーロの屋台へ直走るのであった。
 

「悪くない雰囲気の店だ。この場所に集まった酒も期待できそうだ」
 闇酒場と聞いていたルナール・レルム(ma0312)は、店の雰囲気に満足していた。
 当初は板張りで汚らしいビアホールのような場所を想像していた。
 だが、現実は高級店に言っても納得できる。アンダーソンファミリーの闇酒場は高級店から庶民向けまで数多く揃えている。言い換えれば、それだけ需要がある証拠だ。簡単に入れる場所ではないが、ファミリーの協力者として便宜を図って貰えた。
「コスモスちゃんは最近……ルナに何か、悪戯したの……?」
「ご主人に悪戯かい? 最近はすぐ気づいてかわされるんだよねぇ」
 魅朱(ma0599)の問いかけにコスモス(ma0504)は、少し寂しげに答える。
 それを聞いていたルナールは、反論せずにいられない。
「俺に悪戯できるというその甘い考えを捨てろ、子猫(キティ)め。……まあいい」
 ルナールは店員へ合図を送る。
 それを受けて、店員は三人の前へそれぞれグラスを置いていく。
 コスモスの前には『キティ』。
 魅朱の前には『苺のフルブラとカシスのガラナ割り』。
 そして、ルナールの前には『カフェティーニ』。
 すべて事前にレシピを提供して依頼しておいた品々だ。
「おお、ご主人。サプライズって奴ですか?」
「そうだ。いいか、飲み過ぎるな……」
 コスモスに釘を刺そうとするルナールであったが、既に傍らにいた魅朱がグラスの大半を飲み込んでいた。
「……遅かったか」
「おさけ?」
 小首を傾げる魅朱。
 カクテルといっても相応にアルコールは入っている。
 事前に店員が頼んでいたチーズとカナッペをテーブルに置くが、魅朱の様子に触れる様子もない。
 良くある光景なのだろう。
「ルナー……私、美味しいお酒……飲みたい……。選んでくれる……?」
「魅朱嬢は身体を預けても構わんぞ」
 あまり酒が強くないのだろう。
 ルナールは気を使って自分の方へ倒すよう促した。
 この状況に早速コスモスが茶化す。
「あ~、ご主人の顔が緩んだねぇ~珍し~」
「静かにしろ……まさか、お前もか?」
「いや~。まだ大丈夫ですよぉ~。食べていれば大丈夫」
 コスモスはテーブルの上のチーズへかじり付く。
 体が小さくても食べる量は倍以上。コスモスは食べる方を優先している限り、大丈夫そうだ。
「おさけ……おいしくて……ふわふわします、ねー……?」
 半ば夢の中にいる魅朱を、ルナールは黙って支え続けていた。
 町の観光もあったのだ。それだけ楽しかったのだろうとルナールは自分に言い聞かせていた。
 

「食べ歩きは浅草の屋台ぶりでしょうか。水音さん、何を食べます?」
「何か変わった物が食べてみたいな。初めての世界だし」
 マイナ・ミンター(ma0717)に促され、山神 水音(ma0290)は食べたい物を思案する。
 オルメタは言ってみれば、古きアメリカの世界だ。水音からしても珍しい物が沢山ある。異世界であるのは承知しているが、ツインフィールズは好奇心を刺激する物ばかりだった。
「観光も良いですが、気を付けて下さいね。無茶は禁物です」
 護衛役のサヴィーノ・パルヴィス(ma0665)が二人に釘を刺した。
 忘れてはいけないのは、ツインフィールズにはマフィアが勢力を伸ばしている事。
 マイナや水音ならマフィアの下っ端ぐらい問題ないだろうが、マフィアの勢力争いを行っている最中では事後の方が面倒だ。
 可能ならば、面倒事に巻き込まれたくはない。
「分かっています。状況は把握しております」
 はっきりと断言するマイナ。
 だが、サヴィーノからすればポップコーンやプレッツェルの屋台を見つけて買い食いしている様を見せつけられれば心配にもなってくる。
「お嬢様。口元が汚れております」
 従者であるマリエル(ma0991)が、マイナを気遣った。
「いけませんね」
「失礼致します」
 マリエルは用意してあったハンカチでマイナの口元をそっと拭いた。
 あまりこのような事がないマイナであるが、それだけ四人での外出が楽しかった事の証なのだろう。
 そんな二人をよそに、水音が一つの屋台を指差した。
「あ、あれはまだ食べてないよ。あれなんかどう?」
「へぇ。タコスの屋台か」
 サヴィーノが一目で屋台で売られている物に気付いた。
 正直、イーストサイドもウエストサイドも出ているものはそう変わらない。値段も同じぐらいだ。
 だが、心なしかウエストサイドの方が市民に疲れが感じられる。
「分かりました。あれに致しましょう。マリエル」
「はい。承知致しました」
 マリナの指示を受け、マリエルはタコスを四つ購入してきた。
 一つずつ手渡ししていく。
 水音は待ちきれないとばかりにかぶり付いた。
「あ。ちょっと辛いけど、野菜たっぷりで美味しい!」
「皮はトウモロコシで、挽肉ともよく合います。マリエル。このタコスというのは、天獄界でも作れますか?」
「そうですね……多分出来ると思います」
「では、たまに作っていただけますか?」
「はい、お嬢様がご要望とあれば」
 マイナの言葉にマリエルはそっと頭を下げる。
 どうやら、このタコスは普通のタコスとそう変わらない。
 使われているソースさえ分かれば、再現は可能だ。
「食べるだけで後で料理を再現できるの、すごいですね……。俺も帰ったら作ってみたいですけど、美味しいことしかわかんないです」
「あ、食べる時は是非呼んで下さいね!」
 サヴィーノと水音もタコスを希望する。
 それに対してマリエルは静かに微笑んだ。
「はい、タコスを『四つ』。承知致しました。今日の思い出の一つとして作らせていただきます」
 まだ到着したばかりのオルメタであるが、早くも四人だけの思い出ができたようだ。
 

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