怨嗟悪霊☆百燭ちゃん【初心】
三田村 薫
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シナリオ形態
イベント
難易度
Hard
判定方法
エキスパート
参加制限
総合600以上
オプション
参加料金
50 SC
参加人数
5人~24人
優先抽選
50 SC
報酬
240 EXP
3,000 GOLD
6 FAVOR
相談期間
4日
抽選締切
2022/04/15 10:30
プレイング締切
2022/04/19 10:30
リプレイ完成予定
2022/05/11
関連シナリオ
-
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ

「……オリーヴィアさん……五藤さん……」
 調停者が来る前、リナリア・レンギン(ma0974)はオリーヴィアと五藤に手作りの生チョコを差し出した。
「……も……もし良かったら……チョコ……受け取って頂けると嬉しいです………五藤さん……いつも仲良くして頂いて、ありがとうございます……」
「わあ、良いんですか!? ありがとうございます!」
「まあ、美味しそう」
 うっかり死ぬと食べ損ねると思ったのか、オリーヴィアはその場で開けてぱくぱくと食べた。
「美味しい……ありがとうございます」
「オリーヴィアさん……アウグスタさん……クッキー美味しかったです……」
「針に存外深入りしちゃったものだな……」
 ユーグヴェル・ミラ(ma0623)は居並ぶ氏族を見ながらそんなことを独りごちる。彼はCJの所在を気にしつつも、ロボットで登場した百燭を見て、
「とうとう愛でられないように対策を? 無駄だと思うけど」
 と、麻生 遊夜(ma0279)を見た。
「怨嗟悪霊☆百燭ちゃん……だと!? いや、これはこれでヨシ!」
 彼の反応を見るに、無駄らしい。
「あっ、オリーヴィア姉ちゃんいたぁ~! 座敷わらしちゃ……ん……も?」
 鐵夜行(ma0206)はオリーヴィアに手を振り、百燭にも手を振ろうとして、悪霊モードを見てしまい、
「座敷童ちゃんじゃない!!!!」
 泣き出した。
「オレが解放してやるぞ座敷童ちゃん!」
 どうやら、ロボに取り込まれてしまったものと誤解しているようだ。
「初戦でなんて相手を連れてきてるんだ……」
「オリ―ヴィアさんがでてくるのですか……」
 シアン(ma0076)とリラ(ma0970)もオリーヴィアを見て警戒の構えだ。シアンは百燭を見て、
「怨嗟悪霊。そういえば都市伝説を操ってたよね、百燭君」
『自分でも忘れそうになるけどそうなんです』
 自分で忘れてたのか……。
 さて、そんなことを言っている間に、調停者がやって来た。両者配置につく。思ったより距離があった。
 名乗りを上げ、ユーグヴェルがオリーヴィアの「お前」呼びに癒やされながら試合が始まった。先制ノ書でこちらがイニシアチブを握る。まずリナリアが神降ろしの舞から琥珀石の守護、追憶の光で味方へ強化を施す。それからユーグヴェルが遊夜にきらきらパーティクルを掛け、二人してオリーヴィアに接近した。パーティクルの範囲内にオリーヴィアを納める。
「動きを止めれないならそっちから来て貰えば良い……だろ?」
 遊夜が口角を上げる。
「あっ……」
 百燭が絶句した。オリーヴィアも、自分がパーティクルに抗えないことは嫌と言うほど知っている。タンスの角に小指をぶつけた顔をした。夜行、リラ、アウグスタ、五藤も追いついた。
「あっちゃん、五藤さんも気をつけていこうね!」
「うん! リラちゃんも!」
 支援で手番を使い、移動できないリナリアと、彼女が移動できないことを見越して正射必中で射程を伸ばしたシアンはその場に残っていた。雷鳴律令、マルチショットでオリーヴィアを中心に狙い、ブレイクに持ち込み、更にブレイクポイントで追い討ちを掛ける。
「さぁ、どうしたどうした! 俺はここにいるぞ! 掛かって来いやぁ!」
「蒐集衆を活かすも殺すもきみ次第だぞ! 頑張って!」
 遊夜がオリーヴィアを挑発し、ユーグヴェルも百燭にプレッシャーを掛ける。
(どうしよう)
 オリーヴィアがパーティクルに入っちゃった。これは変調じゃないからゼハイルくらいの精神力がないと無視できない……あるいは感情が抜け落ちまくったCJならなんとかならないか……。いくら身動きが取れなくなった時点で回避が上がるって言っても、この数にボコられたらどうしようもない。誤差みたいなもん……このままじゃボロ負けしちゃう……ダサすぎる……。
「……あ!」
 そこで百燭は閃いた。窮すれば通ずと言う奴である。
「オリーヴィア! 歯ぁ食いしばれぇ!」
「えっ」
 百燭はオリーヴィアの方へ全力疾走した。その鉄騎の巨体で、オリーヴィアの方をパーティクル範囲から押し出す。
「キャーッ!」
 まさか身内に体当たりされると思っていなかったオリーヴィアが悲鳴を上げた。
『えっ、あっ、だ、大丈夫!? 馬!?』
「だ、大丈夫です! 行きます! わたくしは死の淵を駆ける者!」
 騎手がリナリアとシアンの元に突っ込んで来る。彼女はまず、先ほどのお返しとばかりにシアンを狙った。龍鱗Ⅱで防御。オリーヴィアは、あんまり長居すると遊夜たちに追いつかれると思ったのか、その場を離れるように移動。
 二人は遊夜たちと合流した。百燭は怒気のオーラを纏って鉄騎の砲門をこちらに向けている。
『今まで散々ボコってくれたお返ししてやろうかオイ』
 すごく恨みがましいこと言ってる……。五藤がドン引きしながら、
「百燭さん落ち着いてください! 話せばわかります!」
『ここは話し合いの場じゃねぇんじゃコラァ!』
 駄目だ、テンションが変な方向に振り切れている。実際話し合いの場ではないのは確かだが。
 そこに蹄の音が届いた。オリーヴィアが戻って来たのだ。彼女は咎人たちがパーティクル範囲内で一塊になっているのを見て、嫌そうな顔になる。一旦素通りした。
 百燭が、今度は遊夜に向かって突進した。
『オリーヴィア! 私を遮蔽物にしな!』
「は、はいっ!」
 百燭はそのまま遊夜を反対側に押し出した。ユーグヴェルと貼り付いているから、百燭がエンゲージで足止めするとかはできないが、射線や視線を遮るのには十分だ。そして、いくら二人一組で身構えていたとしても、流石にこの大型ロボと正面からぶつかり合って押しとどめられるかというと流石に無理。靴底が砂の上を滑り、後退する。その後ろにシアンと五藤が入って押しとどめようと試みるが、やはり重量と大きさのある鉄騎の体当たりには力負けする。
『ねえおじさんさぁ、私の事足止めしていつも良い様にしてくれたよねェ。おんなじことされる覚悟できてんのかコラァ!』
「何! 百燭ちゃんも同じ気持ちだったと言うのか!?」
『違わい!』
「これが愛の重さ!」
『コラッ!』
 とは言え、対象が変わるだけで作戦を変える必要はない。オリーヴィアの連撃や範囲攻撃が厄介なだけで、パーティクルを嫌がってこちらに寄ってこないのであれば、百燭から攻撃してしまえば良い。
「及ばずともがんばります!」
 横に回り込んだリラが、フェイントで攻撃を仕掛けた。サイレントナイトアンブレラで魔法と見せ掛け、天使剣「ハルヴァヤー」で斬る。
「相方の分も殴られて貰うという事でね……寝てろ馬鹿とお伝え下さい」
 ユーグヴェルが二重詠唱の幻影弾を叩き込んだ。これだけの攻撃を受ければ、いくら簒奪者がインしている鉄騎でもブレイクは免れない。
 エルフはやや怒りの見える表情で、
「あいつ、そんな悪いのに神獣に喧嘩売ったの? 知性戻ってないの???」
『お兄さんが寝かせないんでしょ……』
 百燭はそれをどうにか凌ごうと四苦八苦しながらぼやく。シアンのブレイクポイントが表面をへこませた。
(いやマジで、CJこれからどんどん無茶するに決まってるんだけどな~。そんなの簒奪者と咎人だったら避けられない当然の帰結であって……いや、でもそう言う心配が友情で尊いのかな……いくら敵だからってじゃあ死んでくださいって言うのもちょっとアレだしね……俺は人間関係へたっぴだからわかんないけどさ~……)
 などと物思いに耽っていると、マスタリーアーツで能力を揃えたリナリアのクロスオーバーが炸裂した。これは痛い。
『ンギエー!』
(そうだよぉ! こっちの美少女もなんとかしないといけないんだよぉぉぉぉぉお!!!!)
『ウワアアアアアアアア!!!!』
 弾丸を乱射する。が、リナリアはテラスの光でそれを回避した。めちゃくちゃ機敏な動きだ。
 鉄騎もだいぶ頑丈に作ってもらったが、やはり数が違いすぎる。C-100はあっという間にボロボロになって行った。ユーグヴェルの幻影弾やリナリアのクロスオーバーもそうだが、夜行の霊斬風、瞬撃、大蛇神楽のコンボもかなり痛い。霊斬風はサイズが大きいと威力と命中の低下が起こらない。安定した威力を発揮していた。また、先手を取ると、夜行の霊斬風に加えてリナリアとユーグヴェルのマジックドレインも飛んできて、ブレイクしてしまう……。
「座敷童ちゃん大丈夫か!?」
『あんたのそれで大丈夫じゃないんだよ!!!!』
 回避は追憶の光でぐんと上がっているので、百燭が狙うのは防御型のシアンか五藤、リラと言うことになる。遊夜は論外だ。挑発されようが何されようが、この壁役を殴ったら無駄に時間を浪費するだけ、と言うことを、百燭は学習している。
 撃っている間に、より自衛能力が低いのが五藤と言うことに気付き、彼女をピンポイントで攻撃した。遊夜のフォローガードが割り込むこともあるし、五藤も龍鱗でお返ししたり、琥珀石の守護、世界改変があったりするので死ぬことはないが、何と言うか心理的圧迫がすごい。
「やめて、やめてよぅ。純ちゃんばっかり狙わないでよぅ」
 アウグスタが半泣きになりながら御封刃を浴びせた。
『うーるせーーーーーー!!!!! そっちだってオリーヴィアからたこ殴りにするつもりだったんだろうがよーーーーーー!!!!!』
 女児VS女児の争いも勃発!
「二人とも! あたしのために喧嘩しないでください!!!!」
 ボコボコにされる五藤もそろそろ混乱してきたようだ。
「あ゛ー!」
 大鎌投擲スキルの尽きたオリーヴィアが頭を抱えている。カオスの一言に尽きた。


「はい! そこまで! はい、そこ! もう撃たない! 撃たないよー!」
 やがて、調停者が声を張り上げた。調停というか審判と言うかなんかずっとプールの監視員みたいなことを言っていた気がする。百燭ロボは表面がベッコベコでかつ砲身が取れ掛かっていた。
「鉄騎側は大丈夫かな。気に掛けてる余裕が無かった……」
 シアンがはっと気付いた様に向こうを見る。暗い雰囲気はないが、勝敗は……?
「うーん、混沌としていましたが、とりあえず総合的に針の氏族の方が優位でしたので、初戦は針の氏族側勝利とします」
 湧く氏族とチーム【初心】。シアンたちはほっと息を吐くのだった。実際、こちらも想定通りの効果ではなかったが、対結界擲弾でも解除できないきらきらパーティクルは向こうを苦戦させるには十分だったのだろう。攻撃された時の対策は元々揃っていたので脱落もない。
「やれやれ、何とかなったか……百燭ちゃん、カッコ良かったぞー!」
 遊夜が手を振っている。
「なぁなぁアッちゃん、あの子がアッちゃんのカレシなんか?」
 その歓声の中、夜行が喜んでいるウォルターを指してアウグスタにそっと囁く。
「えっ、あっちゃんそうなの?」
 隣にいて聞きつけたリラも目を丸くした。
「もう、夜行ちゃんたら。ウォルターは後輩さんよ。二人も私の後輩さんだからね」
 アウグスタは胸を張った。
「見た目は夜行ちゃんとかリラちゃんの方がお姉さんだけど、咎人では私の方がお姉さんだもんね」
 次の試合については追って連絡する、と言うことで、解散になる。そこで、調停者が思い出したように、
「あ、そうだ。ところで針の氏族」
「はい」
 チアキが振り返った。
「前族長は亡くなったそうで、お悔やみを。となるとこの戦は新族長披露の場も兼ねると思いますが、その方はどちらに」
「族長執務についての整理などがありますので」
「一度は出場していただくようお伝えください」
「──かしこまりました」
 チアキは丁寧に頭を下げる。流石の彼女も、調停者に歯向かうつもりはないようだ。

 こうして、初戦は無事勝利で幕を下ろしたのであった。

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