【BTW】ゲマトリア・セメタリウム<突破>
運営チーム
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シナリオ形態
イベント
難易度
Normal
判定方法
エキスパート
参加制限
総合800以上
オプション
  • 召喚可
  • EX
参加料金
100 SC
参加人数
1人~25人
優先抽選
50 SC
報酬
200 EXP
2,500 GOLD
5 FAVOR
相談期間
5日
抽選締切
2022/04/30 10:30
プレイング締切
2022/05/05 10:30
リプレイ完成予定
2022/05/23
関連シナリオ
  1. オープニング
  2. 相談掲示板
  3. -
  4. 結果
  5. リプレイ

「ほう……中々に気合の入ったくびれのねーちゃんやな!」
 と、シックス・ホワイトナイトを見て、FF-01の操縦席でモルディウス(ma0098)が瞳をきらりと光らせるのは、ある意味では通常運転であった。
「ツッコミ処は沢山ありますが、私はくびれより肉球が気になります」
 マイナ・ミンター(ma0717)は可愛い物好きらしく、シックスの右手に着いた熊猫肉球拳にも似た装備を見て、FF-01マジェスティのコクピットで微笑んだ。
「ひょっとして猫好きですか? 可愛いです、それ」
 よく見ると、本人の頭からは兎らしい長い耳が垂れているが、兎獣人的に猫パンチはアリなのだろうか……?
 などと装備談義をしている暇はなかった。ディードが突っ込んで来たからだ。下半身に生えたイソギンチャクの如き触手で、その辺にいる咎人やアサルトコアを片っ端から捕まえようとしている。
「厄介な触手ですが意思はないようですね。水音さん、参りましょう」
「此処は僕に任せてよ! その為にこの子を持ってきたんだからね!」
 FF-01の山神 水音(ma0290)はマイナの言葉に応じた。
「ナイトメア相手なら僕の出番だね。この子ならいけるね」
 アサルトコアは、ナイトメアのリジェクションフィールドを無視する効果がある。ナイトメアを相手にすると決めているなら、生身よりもアサルトコアで参加する方が理に適っているのは間違いない。
「ふっふっふ、新生した我が愛機の力を見よ~っす!」
 白玉 纒(ma0300)はMS-01J・アルミラージを召喚し、そのコクピットに機嫌良く納まっていた。その膝の上には、とことこ悪玉が主とは対照的な悪い顔をして乗っかっている。
「わかってはいましたが完全に敵に占領されていますね」
 SJ-01・ベアトリスに搭乗するアルティナ(ma0144)は、居並ぶナイトメアとヴォイドの数を見て眉間に皺を寄せた。予想はしていたものの、やはり目の当たりにすると、改めて厄介なことになった……と思わずにはいられない。
「やれやれ、所詮ナイトメアの命運などこんなものか。無様だな」
 足場の悪さを克服するために、黒パジャモに乗った伊吹 瑠那(ma0278)が、この惨状を見て溜息を吐いた。
「とはいえ、あのハーベスターとやらの糧になるのも虫唾が走る」
 包囲網に穴を開けるには、山ほどいるナイトメアやヴォイドを倒してしまわなくてはならない。向こうの狙いはこちらの足止め。咎人たちは突破の為に行動を開始した。
「おーほっほっほっ、御免あそばせ」
 戦いの火蓋を切ったのは、アナルデール・ウンディーニ(ma0116)が乗るSJ-01Rベアトリス・リベイクの砲撃だった。ギガントスナイパーの発射音で空気が震えた。彼女は内心で、クルハの乗る飛燕・神風をうらやんでいる。
「道を開けるために……一点集中砲撃なのですー」
 小山内・小鳥(ma0062)が、搭乗機体FF-01で装備したグランディネがフラワーシャワーのチャージを始めた。
「斬り込み隊1番! アルミラージ、いくっす!」
 自分しか隊員の存在を認知していない斬り込み隊を名乗りながら、纒はデッドペネトレーションを発動。二振りのアサルトソードを振るいナイトメアを切り裂いた。
「ドラゴン1、エンゲイジ」
 伊藤 毅(ma0538)はFF-01のコクピットで周囲の様子を確認していた。
「レーダーコンタクト、フリップ……数えるのも嫌になる数だ」
「突っ切るよ! 足止めをお願い!」
 クルハから各機に通信が入る。
「了解、敵の足を止める、作戦各機はそのまま前進」
 応じて、B02アサルトライフルを構える。纒が斬った個体に狙いを付けて引き金を引いた。黒色の銃身が反動で僅かに跳ねるが、着弾を確認する。
「律儀に付き合う必要はない。追撃できないようにするだけで十分だ」
 FF-01のコクピットで、カワウソの手足で器用に操縦桿を操る透夜(ma0306)は、アサルトコアの巨体を活かし、比較的小型のマンティスやヴォイドたちをディードの方に移動と同時に突き飛ばした。体格が互角で、それが難しそうな対象は足を撃つことで移動の妨害を試みる。
「敵が多いならそれを利用する。この程度何度も潜ってきたはずだよ。奴の周囲に誘導しておけば、勝手に処理してくれるね」
 彼は、ディードの攻撃手番を、足元の敵に消費してくれることを狙った。
 小鳥のフラワーシャワーが飛んだ。派手な花火が炸裂し、敵の防御を崩す。今回の敵は大型が多いが、アサルトコアもかなり大型の部類に入るので、サイズ差による変調の強度低下が起こりにくい。
 そこへ、瑠那のパジャモがゲイルダイバーで突っ込んで来た。鬼神族の姫君を乗せるに相応しい、迫力ある疾駆を見せる。翼が敵ごと空を切り裂くような勢いで飛ぶ。その背に乗った瑠那は、渇望の大骨刀を振るってヴォイドを片っ端から切り裂いた。
 この戦域はアサルトコアが多く、それらは基本的にリジェクションフィールドを「無視」して攻撃する。つまり、リジェクションフィールドは健在のままだ。
 だから、フィールド解除能力を持たない瑠那が「ヴォイドを狙う」としているのは理に適っている。ナイトメアに対応する場合も、フィールドを失った個体を狙うつもりでおり、敵の特性に対して有用な動きが取れていた。足場が悪い上にアサルトコアだらけの空間で飛行できているのも、効率の良い立ち回りだ。
「腐った雑種共は一匹残さず灰燼に帰すまで。例外はない」
 敵の反撃は、サイズ差を活かして器用に回避する。大型の敵が多い中、パジャモに乗って生身できたのがここでも功を奏した。回避型の瑠那は、巨体から捉えにくいのだ。パジャモもスイスイと飛び回って回避し、ダメージを減衰している。
 アサルトコアたちも攻撃されるが、元々頑丈なのでそこまで困ったことにはならない。
「流石アサルトコアっすね! 簡単に壊れないから安心っす!」
 纒は各種計器を確認しながら、機体の頼もしさに笑顔を見せた。


「送り届けるのは任せておいて欲しいの」
 その間に、ラクス・カエルム(ma1196)はザルバとクラインに声を掛けた。
「ナビゲーションはあたしの本分なの、しっかり掴まってて、ね」
 乗っているマーナガルムと一緒に淡い光を帯びるラクス。その手綱を、ザルバとクラインもしっかり持ったのを見ると、彼女は出発した。同じく中枢に向かう突破組や、クルハ機やアルティナ機など、護衛担当がそれに追随した。
「アサルトコアでの実戦は久しぶりですね」
 アルティナは呟きながら、フラワーシャワーを発射した。
 ラクスは鳳・美夕(ma0726)から咲き乱れる蒼月を受けており、サプライズボムのイデア集中を省略できた。この魔法は敵と味方の区別を付けて攻撃することが可能である。今しがた、アルティナがフラワーシャワーを打ち込んで防御を下げた敵集団に向かって、サプライズを敢行する。
「ドカーンと一発、やっちゃうの!」
 接近してくる敵は、クルハ機が対応した。元々、纒たちが敵の排除に専念しているので、こちらまで近づく敵はそう多くない。とは言え、シックスが作り出したゲートからわんさかおかわりが来ているので、こちらもぼんやりとはしていられないのだ。
「シックス・ホワイトナイト……グロウスと同類なのでしょうか」
 更級 暁斗(ma0383)はハーベスターを見て呟いた。テルミナスへ、
「テルミナス、助太刀にきたぞ。ザルバとクラインを突破させよう」
「ありがとうございます! あ! 危ない!」
 暁斗の近くに迫っていたマンティスを、テルミナスのレイピアがぶった切った。……レイピアとは刺すものだったと思うが……?
 彼はプラズマシューターのリジェクションフィールド無効に乗ってマンティスに追撃を加えながら、スポットワープをカウントしていた。
「おっと、ザルっちやクライン嬢にそうそう手は出させんで?」
 ハーベスターが、ラクスが先導するザルバやクラインの方へ駆け出そうとするのを、モルディウス機が止めた。シックスは目を細める。
「新式思念装甲展開!」
 オーラの思念装甲を展開し、守りを固めた。水音と連絡は取っており、範囲を被らないように調整している。
「陣形を整えましょう。火線の集中こそ私達の強み、最大の攻撃です。マリエル。付いてこられますか?」
「しっかり捕まっていますからこちらはお気になさらずに」
 ワンダースレッドをマイナのFF-01Mに引っ掛けているマリエル(ma0991)が肯いた。ワンダースレッドも三度までしか効果を発揮しないので、使うタイミングには注意がいる。
「ディードか……また懐かしい。これじゃあ悪夢と言うより亡霊だな」
 高柳 京四郎(ma0078)は、どうやらディードに覚えがあるらしく、その理性を失ったような有様を見て、呟いた。召喚したFF-01のコクピットで操縦桿を握っている。
「マイナさん、マリエルさん、ラクスさん、合わせて撃破していこう。山神さん、ディードは生前通りなら強力なナイトメア……気を付けて」
 仲間たちに呼びかけつつ、彼もディードを警戒しながら近くのナイトメアを斬り伏せていた。彼は、敵の排除を行ないつつも、シックスに絡むモルディウスを見て、
「モルディウスさんは格好もやる事も相変わらずぶれないな……」
 彼らしい、と苦笑した。京四郎は、ゲートから飛び出す敵を見て、
「これは、まず雑魚をどうにかしないと合流もままならないかね……?」
 と、彼は美夕が斬ったヴォイドに追撃する形でアサルトソードを振るった。
 ディードの元には、透夜が放り出したマンティスたちが転がってきているが、彼はそれらを、下半身の触手で弾き飛ばしたり、攻撃対象と見做してへし折ったりした。ごきり、と嫌な音がする。大型のマンティスやヴォイドが、呆気なく息絶えて放り出された。一部は押し出される。アサルトコアで弾き出せると言うことは、ディードの巨体でもどかせると言うことになる。暴れながら押しのける。道中にいた毅機や小鳥機が掴まっているが、追いついたマイナと水音、透夜がその触手を斬って救出した。
「未来を切り開く貴女に。運命を裂く剣の加護を。女神の祝福」
 マリエルから女神の祝福がマイナにもたらされる。本来マリエルを守るためのシールドが、光になって彼女から離れていく。マイナに仕えるのが生き甲斐と語るマリエルにとって、これくらいの代償は代償の内に入らないのだろう。マイナお嬢様なら、きっとこの祝福を活かして下さる……と言う、主人への信用も含まれているだろうか。アサルトコアへ、牽かれたワンダースレッドからイデアの光が流れ込んだ。
 マイナは機体の各種能力が強化されたことを確認して、従者との結束を嵌めた腕で操縦桿を操った。


 さて、問題はディードとシックス・ホワイトナイトをどう排除するかである。名もないヴォイドやナイトメアは、アサルトコアで小突けばどうにかなるのだが。
「マリィさんは後ろへ、伍長は僕とフロントを頼む」
 三糸 一久(ma0052)は、同行のマリィ=オネット(ma0016)、BOX-D型(ma0284)へ声を掛けた。彼らはディードに対応するべく連携している。三人ともFF-01への搭乗だ。一久にとっては生前からの愛機である。
「BOX伍長、FF-01にて出撃いたします。相変わらず狭い!」
 300センチの巨体でありながら、口調や所作にどことなく茶目っ気を感じさせる咎人、BOX-D型はどうにか身体を押し込めたコクピットでぼやきながらも、一久の指示に従ってポジションについた。アクティブシールドを張り、オーラの装甲を発動する。
「新式思念装甲を展開します。どうぞ存分にお使いください!」
「ありがとうBOX伍長。頼らせてもらおう」
 彼もまたアクティブシールドを自分に付与しながら肯いた。
「一久様、Dさん、ご無理をなさらずに」
 マリィが前衛の二人に声を掛ける。
「この地形でもやりようはあるさ。泥臭い戦いになるが、頑張ろう」
 既に、囚われたアサルトコアを救出する際にマイナたちが何本か触手を切り落としている。一久は、その脚に更なるダメージを蓄積させるべく、ライフルを発砲した。元々、ACパイロット出身であり、咎人になってからも度々AC戦闘で高い評価を得ている一久は、ここまでの評価に驕るようなことはなく、今回も器用な操縦桿捌きで正確な狙いを付けている。
 隣にいる伍長も同じく。これまで何度も一久と共に戦い、少佐と慕う彼を支えてきた。その操縦、戦闘技術が低い筈がない。彼が狙うのは、ディードが乗る足場だ。着弾箇所の様子を確認し、狙う場所を変え、あるいは保って撃ち続ける。ファルコンスナイプによる正確な射撃が連続して食い込んでいく。
 その後ろから、マリィも射撃を加えた。生身では、ロールや種族の関係でなかなかそう言うことはないが、召喚のアサルトコアなら、一久と同じ機体で戦う事ができる。
 とは言え、それで浮かれて手元がおろそかになることもない。一久の役に立つことが彼女の至上の喜び。ならば、今自分がやるべきは、彼らと一緒にその足場を狙うことだ。
「なるほど、足場崩しか。手伝おう」
 それを見て、ディードの上半身にトリプルファイアを撃ち込んでいた透夜が気付いた。リジェクションフィールドを無視して撃ち込まれた三連射は、ディードの装甲を軋ませている。足場に撃ち込んでも、同様の効果が期待できるだろう。
「落としちゃおうってことっすね! やぁやぁ我こそは~、って名乗る余裕ないっすけど勝負っす!」
「また貴様と見えることになろうとはな。目障りだ、此処で散れ」
 纒、瑠那も参戦した。流石に、三人だけでは時間が掛かりすぎる。協力者が必要だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」
 アナルデールが、その周囲に寄る敵集団へフラワーシャワーを撃ち込んだ。広範囲に花火の様に散弾が飛び散る。アナルデールと言えば、普段メガロリストや妖術師で駆け回っての回避タンクだが、今回は射撃型のベアトリス・リベイクに乗っていることもあり、腰を据えての射撃戦だ。ロールや機体の特性などについては熟知しているのだろう。よっぽどヴォイドに組み付かれるとか、マンティスに乗っかられるとかでもない限り、近接戦闘をするつもりはない。
 彼女の防御半減支援を受けて、マイナのプラズマシューターがリジェクションフィールドを解除。これで瑠那や美夕の攻撃がフィールドに阻まれず通るようになる。咎人たちは、ディードが乗る足場や触手にダメージを与えていった。リジェクションフィールドもなければ、防御半減で守りも薄い。効率良くダメージを重ねる。
 移動しようとしたディードだが、足元に集中砲火を受けている上に、触手が斬られて十全な移動ができない。
 しかし、向こうもやられっぱなしではなかった。その身体が光り始める。急速なイデアの収束!
「何か来ます! 恐らく魔法攻撃に相当するものです!」
 マリィが叫んだ。各機は身構える。次の瞬間、光の砲撃が走った。アクティブシールドや思念装甲のおかげでダメージはかなり減衰できたが、やはり一筋縄でいかない相手であることは間違いない。纒機はヘルムヴィーゲ・パリングで反撃し、攻撃回数を稼いだ。
「ダメージが心配です。メディカライザーで回復いたしますね」
 マリィが特殊兵装を立ち上げる間、一久は妨害に来たマンティスが足場から飛び移ろうとするのを見て、
「今は手一杯でな。ご退場願おう」
 足元に銃撃。マンティスは足を滑らせて落下した。
「地に潤いを与えるが如く水の加護を。雨による結実」
 マリィのメディカライザーに乗じて、マリエルがその回復量を増やしたのだった。

 一方、シックス・ホワイトナイトとの戦いも拮抗していた。
 拮抗……と言うにはやや攻撃の方向性は一方的か。すばしっこく跳ね回るシックスが、アサルトコアに攻撃を加えている。
 元来、サイズが大きい物から小さい物へ攻撃すると、その攻撃は回避しやすくなる。グロウスもそうだが、ハーベスターの戦闘能力は決して低くはない。そのシックスに対して、アサルトコアの巨体から攻撃を繰り出したところでダメージは期待できなかった。
「そんなデカブツで捉えられるだなんて、さすがに舐めすぎでしょ」
 相手は呆れた様に言いながら、京四郎機に連続攻撃を叩き込んだ。京四郎はアクセルモードで回避。ただし、これもサイズ差の問題であまり有利な動きではなかった。的が大きいと当たりやすいのである。そして、大きさに物を言わせて増すのは頑丈さの方だからだ。とは言え、アサルトコアはライフ量が多いので簡単にやられたりもしない。
「くっ……! ハーベスター、やはり油断できない敵の様だな……!」
 京四郎は視界の中で走り回るシックスの動きを見て眉を寄せた。
「シックス、あなたの力、とくと拝見させてもらいます」
 その時、スポットワープで飛んできた暁斗が抜刀術で斬り掛かった。壱ノ太刀「鱗薙」だ。シックスはそれを受け流そうと試みるが、同じサイズの暁斗の攻撃は、アサルトコアに比べると避けづらい。とは言え、決定打になるかと言うとそうでもない。単純に攻撃してくるだけなら、回避してしまえば良いわけで。彼女にとっては、暁斗も脅威と呼べるようなものではなかった。無視してアサルトコアを攻撃している。驚異的な跳躍力でアサルトコアの後ろに回り込み、パンチでへこませる。反撃の攻撃は器用に回避した。
「待て!」
 追い掛けて来る暁斗の攻撃を回避し、反撃で切り裂くと、自衛能力がお世辞にも高いとは言えない暁斗はあっさりとシールドブレイクする。このまま攻撃され続ければ死亡しかねないが、シックスは暁斗に排除するほどの脅威は感じていないらしい。
「そこでぼーっと突っ立ってても、私はあんたの為に切り株に頭ぶつけてやったりしないからね」
「なっ……!」
 渾身の斬撃を繰り出しても「ぼーっと突っ立ってる」呼ばわりされて、暁斗は内心でカチンと来ていた。だが、特に戦略らしいものも、シックスの手の内を暴く策略のようなものもない暁斗はそう言われても仕方のない有様である。
 さて、どうやらシックスは障害物の影響を受けにくいらしい。だから、その気になればラスクが引っ張るザルバとクラインの所までひとっ飛び、なのだが、まずアサルトコアの巨体が、ラクスたちを見つけるのに非常に邪魔だった。特に胴体部分は遮蔽物以外の何物でもない。
 そして、彼女自身がゲートで呼び出したヴォイドやナイトメアがその辺でぷかぷか浮かんでいるのも更に邪魔だった。よって、ラクスたちを捕まえるための位置特定で引っかかっている。
「ちょっと呼びすぎたわね……」
 目を懲らして、マスクの下で独りごちる。ラクスは光を放っているので見つけやすい筈だが、それは視界が良好の場合だ。ナビゲーションの光に物体を貫通する作用はないので、壁があると当然見えない。
「はっはっはー! 汝もなかなか憎めんお茶目な所があるやん!」
 モルディウスが高らかに笑う。彼はB02アサルトライフルを構えた。
「続いてプラズマシューターや! 道を開けい! 高柳氏!」
「ああ! 合わせるよモルディウスさん!」
 プラズマシューター、そしてトリプルファイア。行く手を阻むものは、ヴォイドもナイトメアも関係ない。まとめて吹き飛ばす! プラズマシューターを受けたナイトメアはリジェクションフィールドを失い、美夕も攻撃しやすい。
「今だ鳳さん!」
「ありがとう京四郎!」
 彼女はフィールド解除に伴って生じたブレイクへ、ブレイクキルを叩き込んだ。

 その頃、ディード対応も終わりが見え始めていた。足場は外側から徐々に崩れてきており、AC並の巨体を支えるのに、力不足になりつつある。リジェクションフィールドは時折再生されていたが、アサルトコア主体のこの戦いでは雀の涙だ。
「グウオオオオオオ!!!!!」
 ディードの雄叫びが上がった。万全の長さを持つ触手はもうほとんど残っていない。マイナや水音、瑠那に切り落とされ、砲撃にも傷つけられている。女神の祝福を受けたマイナからの攻撃は強烈だった。
 瑠那がガードクラッシュで斬り込んだ。更にインペイルハイブでダメージを重ね、すぐに離脱。距離を置くことで反撃の可能性を減らす。
「威力は出せませんが、フラワーシャワーは広範囲ですよ!」
 マリィが花火をぶちかました。何らかの「思い出」がぽろぽろと零れ落ちる頻度が高くなっていく。
「その図体では重いだろう。今回の地形には向いていないよ」
 一久は呟き……アサルトライフルをリロード。立て続けに足場に向かって発砲した。
 それが決定打となった。ディードが乗っていた足場は、湿気たクッキーが崩れる様にばらばらになる。まだ健在だった触手が、別の足場に伸びてしがみついた。
「や、気持ちは分かりますが、大人しく落ちてくださいがあります」
 気楽な調子で言いながら、BOX-D型はライフルの引き金を引いた。しがみつく触手を撃ち抜く。衝撃で足場にもひびが入り、ディードはどこの足場とも接しなくなった。
 異形の者は異空間の中を落下していく。どこでもないどこかへ永遠に落下し続ける。彼はそれを、終わりなき悪夢と呼ぶだろうか。
「こちら三糸。ディードは脱落した」
 彼は強敵の離脱を仲間たちに周知するのだった。


 ディードも排除され、シックスはアサルトコアの相手で手一杯、と言う状況で、ラクスが率いる突破隊は順調に先を進んでいた。
「本当に数だけは多いですねっ!」
 アルティナのギガントスナイパーが轟音を立てて火を吹く。アサルトコアは、生身と違って、連射でその威力が衰えない。容赦なく二連射を叩き込む。砲弾は敵の装甲を穿ち、叩き割り、へこませる。最近こんな状況が多い……。物量で圧すのが得意な、あの簒奪者の顔が一瞬だけ脳裏を過ぎった。だからこそ、継戦能力は重要だ。「弾切れですか、こんな時に」なんて、冗談でも言いたくない。リロードする。
 ラクスは、クラインたちが先行できるのであれば追従移動で追いつき、足場の悪い所は飛行でナビゲーションして効率良く進行している。
 やがて、敵の切れ目が見えた。他の同行者たちが更に安全を確保するように砲撃を、斬撃を加えると、ラクスはクラインとザルバを連れて移動できるだけ移動した。
「さあ、最後の一押し、なの」
 届きうる中で、一番向こうの足場に着地する。
「それじゃあ……いってらっしゃい、なの!」
「ありがとうございます。助かりました」
「ここからが我らの正念場か。礼を言う」
 二人はラクスに挨拶して、自分たちの足でその包囲を突破した。

「ラクスさんは無事に二人を送り届けたようですね」
 通信を受けて、マイナが呟いた。
「ったく、ちょこまかとデカブツの間を飛び回ってくれたわね」
 シックスはダウナーな雰囲気の中に、僅かな苛立ちを交えながら首を横に振る。ディードも落とされた。アサルトコアと対等に渡り合える「デカブツ」だったが、それを逆手に取られたようだ。
 救出組が突破したなら、この戦域での咎人の仕事は終わりだ。後はサルヴァトーレ・ネロとの合流地点に向かい、コルニの言葉を借りるなら「トンズラ」する。
「フッ、シックス嬢か……良きくびれとの出会いやった」
 どことなくムフフな雰囲気を醸し出すFF-01……モルディウス機を、シックスの切れ長の瞳がぎろりと睨んだ。
「いい加減うるさいわね。失せなさいよ」
 モルディウス機にシックスからの猫パンチが飛んだ。連撃が叩き込まれる。
「うおっ!?」
 攻撃の手は止まず、モルディウスがどうにかいなそうとするのも無視してパンチパンチパンチ! 別に、ここでモルディウス機一機壊したところで、シックスにとっては得でも何でもない。咎人の目的は果たされてしまったからだ。要するに……。
「八つ当たりかーい!」

 どんがらがっしゃーん!

 アサルトコアが撤退した。モルディウスは不安定な足場に着地する。長期戦を見越して破壊は避けたかったのだが……!
「モルディウスさん!」
 京四郎機が駆けつけた。暁斗も滝昇を構える。シックスは溜息を吐き、
「何? あんたのも壊して欲しいわけ? 悪いけど、もう気は済んじゃったから相手してやる気はないわよ」
 気怠げに言うシックス。
「HVTの離脱を確認、各員続けて離脱」
 毅の簡潔な通信を受けて、一行は撤収を始めた。


 シックスは追ってこなかったが、ナイトメアとヴォイドは逆に咎人たちを排除するべき敵として迫ってきた。合流ポイントに到着すると、毅は振り返り、
「LZ確保、サルバトーレの接近に備える」
 サルヴァトーレ・ネロとの合流地点に到着した彼らは、それらの敵を迎撃する。
「さて、行きはよいよい帰りは怖いの防衛戦やな、きばってこか!」
 機体を失ったモルディウスは、愛なる波濤を使ってヴォイドのシールド削りを狙っていた。仲間が攻撃を重ねてブレイクしてくれるならブレイクキル。醒めた夢も併用する。生身戦も想定して神威を組んでいたこともあり、戦闘を継続できていた。
「ああ! もうキリがない!」
 クルハ機が刀を振るい、クラゲの様なヴォイドの装甲を叩き割る。美夕がそれに追撃した。
「前に出てきた敵から……蜂の巣にしちゃいますよー……!」
 小鳥機がバルカン砲を連射した。搭乗者のイメージとは程遠い、無骨な雹の如き重厚な攻撃。普段は獣人種のしなやかさを活かした立ち回りを見せる小鳥。アサルトコアは対極の動きをするものだろうが、上手く乗りこなしている。
「機動力に関しちゃこの子ちょっと自信あるんすよこれでも」
 撃ち漏らしは纒がアサルトソードで切り裂いた。一角兎は機敏な動きで足場を飛び回りマンティスの鎌を切り落とす。攻撃手段を失ったナイトメアに、水音がオーラブレードで斬り掛かる。やること自体は突破の時と同じだ。アサルトコアの方が若干サイズは大きく、その分最終的にダメージが大きくなる。普段から巨大化を得手とする水音は、このサイズ差による立ち回りには慣れていることだろう。
「幾らでも持ちこたえてみせるよ! この程度で引くつもりはないよ! 僕は虹之欠片。守るべき煌きの為に消して怯みはしないよ!」
 コクピットで決意を示す彼女の長い金髪、その毛先は、昂ぶりを示すように虹色に輝いている。虹之欠片はここにあり。これは煌めきを守るための虹。赤い瞳は太陽の如く燃えた。
 毅機はアサルトライフルから丁寧な射撃を敢行していた。仲間が弱らせた敵にとどめを刺す形で数を減らして行く。
「さあ、まだまだ敵の数は多いです。アナさん、背中は預けましたよ」
「よくってよ」
 ファルコンスナイプで高められたマイナの二連射がぶち込まれた所にアナルデールからの砲撃も飛んだ。
「アリアリアリアリアリアリーデベルチ」
 令嬢の出自を持つ二人の連携で、ナイトメアが排除されていく。
 一部の敵は、マイナの近くにいる生身のマリエルを狙ったが、
「お嬢様、神別れの歌です」
「マリエルを狙うのは教本通りですが、代償は支払って頂きましょう」
 神別れの歌で無効化された挙げ句、その分の威力がマイナに上乗せされた。ライフルからの射撃で呆気なく吹き飛ぶ。
「マリエル、無事ですか?」
「はい、お嬢様」
「機体の回復は……お任せなのですー」
「ここが正念場ですしね」
 小鳥とアルティナがメディカライザーを立ち上げた。アサルトコアは頑丈だが、ダメージと無縁という意味ではない。無理が祟って瓦解する前に回復してしまおう。回復を終えると、小鳥はダイブ・モードを起動して、接近してきた個体をアサルトソードで切り裂いた。
「射撃だけでなく……近接武器だってあるのですよー!」
 突然動き出したアサルトコアに、マンティスは意表を突かれたようにひっくり返った。

 そんな戦闘をどれくらい続けただろうか。やがて、クラインたち別働隊がこちらに戻って来るのが見えた。彼女は二挺拳銃を抜き、マンティスの頭を後ろから撃ち抜く。
「クラインさん!」
 ラクスが手を振った。
「あっ、ザルバさんっすー! ってクラインさん大丈夫っすか!?」
 纒も二人の姿に歓声を上げ、目を剥いた。どうやらかなり激しい戦いだったらしい。クラインには疲労の色が濃い。
「戻りました。ひとまず生きています」
「ニュートラリダの救出は成功した」
 あとはサルヴァトーレ・ネロの到着を待つだけだ。
「何が何でも帰らないとな」
 京四郎が気合いを入れ直したその時だった。
『お待たせ! 迎えに来たよー!』
 バニティーの明るい声が轟く。見れば、ネロの巨大な船影がゆっくりと……実際には猛スピードでこちらに向かって来るところだった。ネロはポイントに付けると、ハッチを開ける。
『ヘクター、障壁お願い!』
『言われなくてもやってる』
 ネロを狙ってくるヴォイドやナイトメアは、ヘクターの壁によって阻まれていた。ラクスがクラインとザルバの手を掴む。
「さて、それでは本日はお暇させて頂きましょう」
 アルティナが、戻って来た二人や咎人たちを促した。アサルトコアは機体用ハッチから、生身勢は乗員用から中に次々と乗り込んでいった。
 成り行きで殿になった美夕がハッチを閉めようとした時、その隙間に何か固い物が挟まった。見れば、マンティスの鎌だ。どうやら、奇跡的に守りをかいくぐって来た個体がいたらしい。このままでは出発できない。
『あれ? 一箇所閉まってない?』
 バニティーが首を傾げる様子が目に浮かぶ。美夕は、
「ごめん、すぐ閉めるね!」
 状況を説明する間も惜しい。彼女はハッチを開けると、振り下ろされた鎌を花びらの舞で回避しながら艦上に。相手の攻撃後の隙を突いて、リジェクションブレイカーをかざした。フィールドが解除され、よろけるマンティス。そこへ、ブレイクキルによる一刀を叩き込んだ。ツイン・ファンタジアが、それこそ花が舞うように振るわれ、マンティスを切り倒す。足場の悪い艦上で撃退するならそれで十分だった。落下するマンティスを横目に見ながら、素早く艦内に滑り込み、今度こそハッチを閉める。
「お待たせ! 閉まったよ!」
『オッケー、確認したよ! 置いてきぼりはいないよね! 発進するよ! マコトも拾わなきゃ』
 味方全員が搭乗したことを確認して、サルヴァトーレ・ネロは、ゲマトリア・セメタリウムを脱出した。

(執筆:三田村 薫)

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